ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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欧州行き(12年11月)⑤―アリヴァベーニ指揮リエージュ・ワロニー王立劇場「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」
11月25日早朝、チューリッヒ中央駅を発ち、ICE78とICE16の乗継ぎによりフランクフルト経由でリエージュへ向かう。スイスからドイツ国内を走る間は順調であったが、ベルギーに近づいたところで、列車のダイヤは、突如としてカオスに巻き込まれ、ついには途中駅で列車の乗換えを余儀なくされる。結局30分以上遅れた。しかし、リエージュ・ギーメン駅からリエージュ・パレ駅への接続列車も遅れていたため、乗継自体はなぜか支障がなく、何だかなあという感じである。宿泊先は、Crowne plaza Liege。5つ星ホテルだが、サービスのクオリティは、ワロン地区スタンダード。午後2時に到着したのに、チェックインは午後3時からだと突っぱねられ、部屋に入れず、ロビーで荷物の整理を強いられる。これらのガッカリ感は、昨年のブリュッセル滞在中に日々感じていた感覚であり、どこか懐かしさを覚える。ベルギーに来たことを肌で感じる到着であった。

荷物を整理した後、午後2時半頃、オペラ座へ。パオロ・アリヴァベーニ指揮、ホセ・クーラ主演&演出、リエージュ・ワロニー王立劇場による「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師(パリアッチ)」。

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チケットの売れ行きはよく、筆者がインターネットでチェックしたときは、ガレリア席やボックス席の後列しか残っていなかった。筆者が確保した座席は、4EME BALCONの4列目中央。洞窟の中から舞台を眺めるような位置である。もっとも、中央であったため、視覚的には、舞台が見切れることがなく、また、音響的には、遠さはあるが音自体は素直に届いて来た。

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この歌劇場では、なぜか昔からイタリアオペラが盛んである。筆者にとっては、昨年のブリュッセル滞在中はリエージュ訪問の機会がなかったため、今回が初めてとなる。ワロンのセンスでヴェリズモ・オペラの代表作を採り上げると、いったいどんな雰囲気になるのか、怖いもの見たさで旅程に組み入れてみた。

さて上演の方だが、良くも悪くもワロンらしさが全開な舞台。芸術としてというよりも、街で日常的に繰り広げられる芝居として観るべきものであったと思われる。

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第一に、とにかく客席が騒々しい。しゃべるは、鼻はかむは、咳はするは、飴玉の包みでバリバリと騒音を立てるは、もう何でもアリ。映画館でももう少し静かなのではないだろうか。およそ音楽が楽しめる環境ではない。

こうした状況は、昨年のブリュッセルでの経験上、筆者にとっては予想された結果といえるが、今回こうして改めて直面すると閉口せざるを得ない。ワロンの中心都市で繰り広げられる自由な立ち振る舞いは、この土地に深く根差したスタンダードなのであろう。ブリュッセルのモネ劇場やパレ・デ・ボザールの方がまだマシだと思う。

第二に、オーケストラの響きは、ワロンの血が色濃く反映されたものであった。美しい旋律を表面的になぞるような箇所では、軽くて明るいカンタービレがスッと伸びるし、「カヴァレリア・ルスティカーナ」であれば、教会の場面のボリューム感や間奏曲後の躍動感は、やや野性的な香りを伴う盛り上がりで、一体感が生まれる。「道化師」では、フランス的な色彩感に富んでおり、お祭り的かつカオス的な場面では、水を得た魚のように熱狂する。これはこれで面白い。

しかし、やはりイタリア風からは程遠いというか、全く別物である。根本的に異なるのは、リズム感。例えて言うならば、歯切れのよいイタリア語と、鼻に抜けるフランス語の違いといってもよいだろう。彼らの演奏からは、アレグロやレッジェーロのニュアンスは全く感じられないが、そもそも期待する方が間違いというものであろう。同様に、カンツォーネ風の小回りの利いた旋律の処理も不器用で、身のこなしが異様に硬い。なるほどと思わざるを得なかった。さらに、毎度のことだが、音の切り方が雑であることに加え、フォルテが爆音系で汚い。この点はワロン文化圏に共通する特徴で、モネ劇場のオーケストラも、ベルギー国立管も、筆者が実際に参加したブリュッセル・フィルハーモニック・オーケストラも、全て同じ傾向にあった。実に不思議だ。

ワロンのオーケストラは、個々の奏者にスポットを当てると、とてもよい音色であり、また、バラバラな人々が一期一会的に集まり、エイっとやっつけて、形にしてしまうことに関しては、天性とも呼ぶべきセンスを持っているのだが、オーケストラとしての堅実なアンサンブルという発想がなく、純度の高い和声感や様式美が生まれることはほぼ皆無である。だから、完成度もそれなりにしかならない。お国柄だろうか。

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ところで、ホセ・クーラの演出は、雑然としており、凡庸であった。特に「カヴァレリア・ルスティカーナ」の演出には、失望させられた。

「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、シチリアの山間部を舞台として、若者の心情のダイレクトな衝突を描く作品である。それゆえ、若書きで粗削りな部分も含め、演出にあたっては、心理描写に集中してほしい。しかし、ホセ・クーラの演出は、むしろそうした心理描写から目を背けていたのではなかろうか。演技的にも物理的にも「ノイズ」が多すぎて、雑然としていたし、観ている側が作品の中に没頭しようとすると、必ずといってよいほど、茶々を入れるような余計な邪魔が入り、集中がそらされる。また、心の衝突の場面は、お互いが怒鳴り合っているようにしか見えず、やかましい。加えて、間奏曲において、舞台上に配役されたアコーディオン奏者が無造作に旋律を重ね、また舞台上でノイズを伴う演技が繰り広げられたのには、怒りすら覚えた。

「道化師」に関しては、作品自体に多くの変化が盛り込まれているため、それを追いかければ形になるが、背後に秘められた悪魔的なエッセンスは、全く浮かび上がってこなかった。全体を通じ、ゴチャゴチャしていて、何が言いたいのかよくわからなかった。

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ホセ・クーラという人は、クライマックスを作るのは上手だと思う。異様に盛り上がるから、観ている方は瞬間的に沸騰し、興奮と絶賛の渦に巻き込まれる。しかし、途中過程をみると、演出的にも音楽的にも、ピンポイントでワーっと叫んで盛り上げたり、小手先でネタを仕込んだりすることはあっても、じっくりと積み上げて何かを表現するという創りにはなっておらず、技量云々というよりも、センス自体に筆者と相入れないものがあるように感じられた。もっとも、こういうのはワロン地区では受けが良いのかもしれない。

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終演後は、オペラ座前の交差点の角にあるLe Point De Vueというブラッセリ-へ。日曜日なので、そもそも開いているレストランが少ない。ごく普通のブラッセリ-で、可もなく不可もなく。ベルギービールを飲みすぎて、ややフラフラになった。


(公演情報)

Cavalleria Rusticana & Pagliacci

Sun, 25/11/2012, 15:00 pm

Musical direction : Paolo ARRIVABENI
Direction & Set : José CURA

Turriddu : José CURA
Santuzza : Marie KALININE
Alfio : Elia FABBIAN
Lola : Alexise YERNA
Mamma Lucia : Mady URBAIN
Canio / Pagliaccio : José CURA
Nedda / Colombina : Sofia SOLOVIY
Tonio / Taddeo : Marco DANIELI
Prologue : Philippe ROUILLON
Beppe / Arlecchino : Enrico CASARI
Silvio : Gabriele NANI
Primo Contadino : Alexei GORBATCHEV
Secondo Contadino : Carmelo DE GIOSA
Choir school : Opéra Royal de Wallonie
Orchestra and Chorus : Opéra Royal de Wallonie
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[2012/11/27 02:12] | 海外視聴記(リエージュ) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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