ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 |
ヴァンスカ指揮読響―第512回定期演奏会「ブラームス1番」
2月21日午後7時前、サントリーホールへ。オスモ・ヴァンスカ指揮読売日本交響楽団による第512回定期演奏会。アホのミネア、R.シュトラウスの歌劇「ばらの騎士」組曲、ブラームスの交響曲第1番が採り上げられた。

座席は、いつもの指定席である1階席通路より少し前のセンター。先週座った1階20列と比べると、臨場感も響きの豊かさも格段に違う。

前半一曲目は、アホのミネア(日本初演)。管弦楽のための協奏的音楽という副題が付いている。アホの解説によれば、この作品は、近代西洋音楽の因習を乗り越えて、音楽語法を広げるべく取り組んだ作品のひとつで、西洋以外の音階と、調性音楽との新たな融合を見出したとのこと。アフリカやアラビアやインドのリズムを基調に全体が構成されていた。

演奏の方は、巨大なスケールを感じさせるものではあったが、いかんせん、サントリーホールの音場では、ステージ上で響きが飽和気味になり、各パーツが浮き立たない。特に前半では、輪郭が滲んでしまったため、アホが描いたであろうスリリングさを体感することはできなかった。また、この作品では、中間部以降、4人の打楽器奏者が奏でるリズミカルな民族打楽器が全体を支配するが、この日聴いた限りでは、民族打楽器の響きに奥行きが足りず、リズムに芯がなく感じられたため、終わりに向けて巨大なアッチェレランドとクレッシェンドを形成するという演奏効果は、十分には得られていなかったように思われた。18分間という演奏時間を長く感じてしまったことは否定できない。

前半二曲目は、R.シュトラウスの歌劇「ばらの騎士」組曲。こちらは、音色の魔術師、ヴァンスカの技が光る演奏であった。

注目すべきは、響きの色分けの明快さ、そして、その帰結としての色彩感の鮮やかさである。スコア上の様々なポーションが、然るべき響きで、次から次へと浮かび上がるのは、ヴァンスカによる明晰かつ緻密な分析の成果であろう。室内楽的な響きから、巨大な管弦楽のうねりまで、その引き出しの多さには、感心させられた。読響も善戦していて、ふわっと立ち上がる弦楽器のデリケートな響きからは、ウィーンらしい香りが醸し出されていたし、金管楽器による歯切れのよいエッジも効果的に決まり、良い部分はたくさんあった。

ただ、全体の流れの点では、いま一歩の出来であったようにも感じた。R.シュトラウスの作品では、音の立ち上がりから瞬時に夢の世界へと惹き込むような効果が多用されるが、この日の演奏では、そうしたオーラを感じ取ることは、残念ながら、ほとんど出来なかった。要は、響きが落ち着くまでに時間がかかりすぎなのである。また、致命的なミスはないものの、細かい技術的な綻びが終始介在したため、音楽の流れがぶつ切りになっていたようにも思われた。オーケストラのキャパシティに照らすと、限界なのかもしれない。

さて、前半が割と熱演であったため、後半までスタミナが持つか、心配になったが、後半に演奏されたブラームスの交響曲第1番は、そのような不安を吹き飛ばす格調の高い名演であった。

ヴァンスカは、横の線を重視したスタンスで、様々な楽器に登場する短いフレーズの数々を面白いようにつないでいく。音楽の流れに全く隙がない。響きの重さやバランスの計り方も絶妙で、力みのない実に自然体なサウンドを引き出していた。スコアに描かれた各要素が見事なまでに有機的に組み合わされており、ヴァンスカの解釈の秀逸さが光っていた。

とりわけ印象的であったのは、第一楽章の提示部反復後の流れの自然さ、再現部直前の湧き上がるような高揚感、第二楽章の冒頭の心に染み入るような美しさ、第四楽章の第一主題における抑制の効いた祈りなど。無論、これら以外も、出色の仕上がりであった。

伝統のあるヨーロッパの楽団を聴いているような錯覚に陥ったというのは、決して褒めすぎではない。

ブラームスの交響曲第1番に関しては、これまで幾度も耳にし、また、実際に演奏もしたが、その都度、筆者の中では、もやもやした違和感を払拭することが出来ずにいた。しかし、この日の演奏に接し、これまで感じていた違和感は、短視眼的な気合いや力みが錯綜したことによる凸凹と鈍重さに原因があったことが分かった。ヴァンスカがこの日に魅せたように、フレーズを丁寧に紐付け、これを引き立てるという観点から、和声進行に方向性を持たせつつ、厳格なリズムとの共存を図るというアプローチは、この作品の真価を明らかにする一つの道筋なのであろう。巷に氾濫する爆演系や厚塗りされた油絵のような演奏も悪くはないが、そのような演奏スタイルは、演奏それ自体が圧倒的な水準に達していない限り、表面的な感動は呼んでも、それ以上の充実感をもたらすことは難しいのではないかと感じた。

カーテンコールは、いつにもまして、温かい拍手に包まれた。会場内は、よい音楽を聴いたという充実感に満ち溢れていたように感じられた。


(公演情報)

第512回定期演奏会

2012年2月21日(火) 19:00開演
会場:サントリーホール

指揮:オスモ・ヴァンスカ

アホ/ミネア(日本初演)
R.シュトラウス/歌劇〈ばらの騎士〉組曲
ブラームス/交響曲 第1番 ハ短調 作品68
スポンサーサイト
[2012/02/21 22:57] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
次のページ
プロフィール

mashi1978

Author:mashi1978
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。