ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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カンブルラン指揮読響―第九
12月26日午後7時前、オペラシティへ。シルヴァン・カンブルラン指揮読売日本交響楽団による「第九」特別演奏会。読響の千秋楽であり、筆者にとっても今年の演奏会の聴き納めである。

筆者に割り当てられた座席は、2階R1列10番台前半。ステージの真横で、眼下にはヴィオラが1列に並ぶ。臨場感と音の分離が素晴らしい。事前の噂によると、今回は弦楽器主体の組立てで、木管楽器は控え目な音量バランスとのことであったが、今回の座席では、木管楽器も程よい抜けのよさでクリアに聴こえてきた。

今回のカンブルラン指揮の読響による演奏は、筆者が耳にした数々の第九の中でも、五本の指に入る素晴らしさであった。

この日は、第一楽章から音楽に筋が通っていた。音色に勢いがあり、響きが克明に立ち上がる。テンポは速いが、ベートーヴェンらしい和声の重厚さも感じられるし、旋律における音楽的なブレスの余裕も十分に保たれているので、音楽の進行は実に自然だ。慣習的なmeno mossoで停滞感を一切感じさせないあたりが匠の技といえようか。レガートのフレージングはやや独特だが、軽やかさや気品を醸し出すカンブルランらしい解釈でもあり、特にフレーズ末尾の処理がデリケートで心憎い。このような誤魔化しのないストレートな演奏は、音楽の兼ね備えた潜在的なパワーを存分に開花させる。再現部の緊迫感は鳥肌が立ちそうなくらいであった。

第二楽章は、スケルツォのリズム感と響きの弾け具合が印象的であった。和声の拡がり方が立体的で、かなりエッジが効いているのに、音色が縦に伸びるのが不思議だ。第一主題のフーガ風な構造に対する目配りも十分になされており、旋律の遷移が明確に浮かび上がる。中間部は、演奏者には酷な快速テンポであったが、管楽器セクションはうまくまとめ上げていた。これは拍手に値する。全ての繰り返しを行ったため、若干弛緩気味になった箇所もあったが、この時期にしばしば目にするルーティンワークの演奏とは雲泥の差があった。

第三楽章では、打って変わって、清らかな響きが舞台上を静かに満たしてゆく。天国的な美しさの旋律が、やや控えめな口調により語られると、場の空気にスイッチが入った。変奏曲形式であることを主軸に置いた理知的な演奏スタイルで、快速テンポであるにもかかわらず、溢れんばかりの情感がじわじわと伝わってくる。この一年を振り返るかのような楽員らの姿に、聴き手も惹き込まれ、そして同様にこの一年を追想する。過去を整理し、新たな年へと気持ちを向けるのに相応しい時間であった。

そして迎えた第四楽章は、オペラに精通したカンブルランの独壇場であった。低弦による冒頭のレチタティーヴォから決然とした力強い主張が漲る。「この調べではない!」という言葉がそのまま聴こえてくるようだ。そして、低弦に導かれて始まった「歓喜の歌」の動機が、器楽的にではなく、人が歌っているように感じられたのも、今回が初体験。カンブルランのアウフタクトと拍運びの絶妙さには、感服させられた。加えて、今回は、合唱の充実ぶりも目を見張るものがあった。オーケストラと合唱が同じ息遣いで協演すると、第九の音楽にこれほどのパワーが生まれるのかと思わずにはいられなかった。異様なまでの一体感。ベートーヴェンが最後の交響曲において歌の力を融合させようとした意図をようやく垣間見られたように思う。シラーの詩が腹の底から鳴り響く圧倒的な第四楽章であった。これで独唱陣の歌唱にもう少し余裕があれば万全であったのだが。

カーテンコールの盛り上がりも相当のものであった。一年の締めくくりを非常に良い形で迎えることができた。こういう体験を出来てしまうから、読響の定期会員がやめられないのだ。


(公演情報)

カンブルランの「第九」特別演奏会

2012年12月26日(水) 19:00開演
会場:東京オペラシティコンサートホール

指揮=シルヴァン・カンブルラン
ソプラノ=木下美穂子  メゾ・ソプラノ=林美智子
テノール=与儀巧    バリトン=与那城敬
合唱=新国立劇場合唱団

ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」
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[2012/12/29 22:09] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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