ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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大野指揮都響―第753回定期演奏会「戦争レクイエム」
6月18日午後7時前、東京文化会館へ。大野和士指揮東京都交響楽団による第753回定期演奏会Aシリーズ。ブリテンの戦争レクイエムが採り上げられた。会場内は、マエストロ大野の次期音楽監督就任決定のニュースを受け、直前にチケットの売れ行きが伸び、完売御礼の盛況ぶりであった。

筆者が発売直後に確保した座席は、1階席L2列。段々畑の麓ゆえ、平台に上らない管楽器陣の音色が隠れてしまうが、この作品のように、弦楽器を主体とした室内楽的なオーケストレーションがなされている作品では、舞台から至近距離で鑑賞した方が作品の面白さが分かってよい。平土間と比べて一段高いため、見晴らしも良好であった。何よりもマエストロのタクトを横からじっくりと鑑賞できるのが良い。

この日の演奏は、楽譜通りに正確に演奏するだけでも至極困難なこの作品をバランスよく処理できたというだけでも、一応は評価されてしかるべきであろう。終演後の会場内の盛り上がりは、尋常ではなかった。しかし、マエストロのタクトを横から眺めた限りでは、もっと上が目指せたはずである。筆者の印象としては、マエストロの頭にあった内容の半分も実現できておらず、マエストロ自身も思い描いた内容を出し切れていなかったように見受けられた。

マエストロが起用した三人の歌手は、いずれもオペラチックな美声と節回しで、自由自在に作品を語った。合唱を担当した晋友会合唱団と東京少年少女合唱隊は、アマチュアゆえに仕上がりにムラが見られたものの、マエストロのタクトの下、実に伸びやかに言葉を語っていた。それゆえ、歌に関しては、パーフェクトとはいえないものの、良い部分も多く見出せた。

しかし、オーケストラについては、都響のポテンシャルに照らすと、少なくともこの作品に関しては、まだまだ課題が多いように見受けられた。

確かに、表面的にみれば、綺麗な音色でそれなりにうまくまとめていたといえる。ただ、細部におけるストイックさは十分ではなく、楽譜を小気味よくなぞっていただけのようにも見える。作品の内容を踏まえれば、そしてマエストロのタクトと真っ向勝負を挑めば、もっと厳しい世界観が広がったのではなかろうか。オーケストラとして作品に対する勉強と準備の時間が足りていなかったのではないかとも勘ぐりたくなる。アンサンブルにおいても、破綻はないが、リズムの鋭さや響きの鮮烈さがビビッドに浮かび上がるような集中力は感じられなかった。耳を澄ますと、意外と危なっかしい部分が多かった。作品への共感の度合いもそれほど高くはなかったのではなかろうか。

また、都響自身がオペラ的な演奏方法に馴染んでいなかったこともこの日の仕上がりに影響したと思われる。すなわち、歌手や合唱とのアンサンブルに違和感を覚える瞬間が少なからず見受けられたのである。都響の場合、歌の節回しや語り口からすると、もうひと呼吸欲しいところであっても、オーケストラは自分たちのリズム感とテンポ感でサクサクと前に進んでしまう。マエストロが歌手の呼吸に合わせるべく溜めを作ろうとした際も、楽譜に夢中なオーケストラは、わずかな間を待つことができない。歌手の呼吸に寄り添ったり、歌手の背中を後押しするような音響面での演出効果を目指したりという意識も感じられない。あくまでも純粋な管弦楽作品として彼らの中で完結してしまっていたような印象であった。その結果、衝撃的な内容を口にする肉声の臨場感にもかかわらず、演奏全体としては、十分にエネルギーが充填されないままに頂点を通り過ぎてしまい、ブリテンが創造した演奏効果が発揮されないままにで進んでしまう場面が多かったように思われる。これが欧州の名門歌劇場オーケストラであったならば、歌手らとのコラボレーションで凄まじいパワーが生まれたであろう、役者の揃った状態でウィーンフィルが演奏したら、さぞかしすごい演奏になったであろうなどと、勝手に思いながら、若干醒めた目線で舞台を眺めてしまった。

カーテンコールでは、マエストロに盛大な拍手が送られ、一般参賀にも至ったが、音楽監督就任決定に対する聴衆の期待感の現れとも受け止められた。マエストロの真の実力からすれば、この程度の演奏に甘んじてはいけないのではなかろうか。ともあれ、先日行われた記者会見によれば、マエストロは革新的な選曲と企画で東京の楽壇に一石を投じる意向のようであり、もっと欧州の歌劇場の第一線で活躍して欲しかったと思う反面、東京に住む音楽ファンとしては、マエストロの披露するであろう新しい風に素直に期待を寄せたい。


(公演情報)

第753回 定期演奏会Aシリーズ

2013年6月18日19:00開演
会場:東京文化会館

指揮:大野和士
ソプラノ:リー・シューイン
テノール:オリヴァー・クック
バリトン:福島明也
合唱:晋友会合唱団
児童合唱:東京少年少女合唱隊

ブリテン:戦争レクイエム
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[2013/06/18 23:01] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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