ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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チョン指揮フランス国立放送フィル―来日公演「ベルリオーズ&ビゼー」
9月29日午後2時前、横浜みなとみらいホールへ。チョン・ミョンフン指揮フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団による来日公演。ベルリオーズとビゼーの作品を組み合わせたプログラムである。

筆者の確保した座席は、3階C4列上手側中央。安いランクの席は埋まっていたが、全般的にチケットの売れ行きが悪く、高いランクの席はガラガラであった模様。ただ、集まった聴衆の意識は高く、日曜日の午後にもかかわらず、会場内にはピリッとした空気が流れていた。なお、この日の聴衆のマナーは総じて良好で、最弱音の醸し出す香りと緊張感を会場全体で共有できる空間であったのは喜ばしいことであった。

この日の演奏は、全体を通じ、非常に成熟した音楽であり、チョンとフランス国立放送フィルが13年にわたってじっくりと築いてきた密な関係に裏打ちされたものであった。響きの創り方からテンポ感やリズム感に至るまで、オーケストラとしての素地が理詰めで機能的に整理されているため、隅々まで明晰で、解像度の高いサウンドが生み出される。その素地の上に、フランス人らしい各人の個性が発揮されるので、自然体であり、そして明るく活き活きとした音楽が導き出されるのである。忙しい現代社会では、このような機が熟した間柄は、むしろ珍しくなってしまった。

さて、プログラム前半一曲目は、ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」。序曲冒頭に響き渡るサルタレロのメイン主題の印象が強い作品ではあるが、この日の演奏は、そうした爆演系とは一線を画し、味わい深い音楽であった。

余計な飾りや大袈裟な演技は無用。均整のとれた設計の下で、緩急が絶妙にコントロールされ、安定感のある音楽がスムーズかつバランスよく進行する。抑制の効いた絵画的な色彩感も心地よい。クライマックスの高揚感も申し分なく、この日の演奏会への期待感が高まった。

プログラム前半二曲目は、ビゼーの「カルメン」組曲。オペラ指揮者チョンの本領発揮である。

目が覚めるような鮮やかさで開始された「前奏曲」は、旋律のイントネーションにフランス語らしいアクセントが纏い、目から鱗が落ちる瞬間がたくさんあった。続いて演奏された「アラゴネーズ」、「間奏曲」、「セギディーリャ」、「アルカラの竜騎兵」、「衛兵の交代」の各曲は、管楽器のソリスティックな魅力が満載。チョンは、個々のプレイヤーから歌心を引き出すのが巧い。各人の自由かつ個性的な演奏スタイルと節回しを存分に堪能できた。そして締めくくりは、「ジプシーの踊り」。フランス人のノリの良さが前面に表れてくる。破綻寸前まで煽りながらも、格調の高さと音色の美観が均質に保たれていたのには、驚かされた。

プログラム後半は、ベルリオーズの幻想交響曲。余計な飾りはなく、作品に真摯な演奏。しかし、ベルリオーズの天才的な管弦楽法の素晴らしさと、スコアに埋め込まれた仕掛けの数々に気付かされる。この日の演奏を通じて、「ひとりの芸術家の生涯のエピソード」という原題が初めて理解できたように思う。

第一楽章「夢、情熱」は、恋の悩みが病的に発現する楽章であるが、感情の爆発を外面的効果で表現しようとすると、全体のバランスが崩れてしまう。この日の演奏では、各場面(火山のような愛情、胸を締めつけるような熱狂、発作的な嫉妬、優しい愛の回帰、厳かな慰み)の一連の流れが「音楽的な映像」として客観的に描かれていた点が特筆される。響きの座りが非常によかったことに加え、各旋律にこめられたカンタービレが極めてフランス的で、美しく彩られていたのも魅力的であった。

第二楽章「舞踏会」と第三楽章「野の風景」も、「音楽的な映像」の一環であった。第二楽章では、変に暑苦しくならず、また、第三楽章では、素朴さに満ち溢れていた。

第四楽章「断頭台への行進」に入ると、弦楽器や金管楽器の響きに重量感が増してきた。随所に差し込まれる異様な響きが恐怖感を醸し出す。多少の大見得を切っても、格調の高さと音色の美観を決して失わないバランス感覚には、感嘆させられる。

第五楽章「魔女の夜宴の夢」は、サバト(魔女の饗宴)そのもの。後半の高揚感も十分に感じられ、音楽的な充実度の高いフィナーレであった。

アンコールに演奏されたのは、ストラヴィンスキーの組曲「火の鳥」(1919年版)から「子守歌」と「終曲」。フランス的な色彩感に包まれた堂々とした演奏に大満足である。

この日は来場者数に恵まれなかったが、集まった聴衆の拍手の密度は高く、会場内は相当の熱気に包まれた。演奏のクオリティは極めて高く、本拠地サル・プレイエルにおける演奏を凌ぐ仕上がりであったといえる。背伸びをせず、自然体でありながら、少しだけお洒落な雰囲気が伴う、そんなパリの日常を垣間見るような様子も微笑ましかった。なお、オーケストラが舞台を去った後も熱狂的な拍手は止まず、一般参賀かと思いきや、何とチョンは、オーケストラ全員とともに再び舞台上に登場し、皆と共に喝采を共有。その嫌みのない立ち振る舞いに、マエストロの人間的な懐の深さを改めて感じた。「このオーケストラの中に培われている深い深い人間同士の理解、そして今なお強まっている良き絆、それが、他に類を見ない音となって、表現されることになるでしょう。」というチョンの言葉どおりの素晴らしい演奏会であった。


(公演情報)

2013年9月29日(日)14:00開演
会場:横浜みなとみらいホール

指揮:チョン・ミョンフン
管弦楽:フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」 Op.9
ビゼー:カルメン組曲(前奏曲/アラゴネーズ/間奏曲/セギディーリャ/アルカラの竜騎兵/衛兵の交代/ジプシーの踊り)
ベルリオーズ:幻想交響曲 Op.14
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[2013/09/29 22:47] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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