ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ヴァンスカ指揮読響―第546回名曲シリーズ「シベリウス2番」ほか
2月15日午後7時前、サントリーホールへ。オスモ・ヴァンスカ指揮読売日本交響楽団による第546回サントリーホール名曲シリーズ。1月の定期演奏会からの振替分である。

この日は、グリーグの「ペール・ギュント」(抜粋)、アホのクラリネット協奏曲、シベリウスの交響曲第2番という北欧一色のプログラム。フィンランドの巨匠ヴァンスカの登場ゆえ、期待が高まる。

座席は1階20列左側中央。2階席の屋根が被るかどうかという微妙なポジションで、舞台中央に位置する木管楽器や中低弦が埋没気味だったが、顕著な雨宿り効果は見られず、予想よりはまともな音響であった。

前半一曲目は、グリーグの「ペール・ギュント」(抜粋)。「朝の気分」「オーゼの死」「イングリッドの嘆き」「アニトラの踊り」「アラビアの踊り」「ソルヴェイグの歌」「ペール・ギュントの帰郷」「山の魔王の宮殿にて」の各曲が採り上げられた。

最も有名な「朝の気分」は、透明感がある割には、拍子感や響きが寝ぼけた感じで、冴えなかったものの、「オーゼの死」の後半からは、徐々に落ち着きが生まれ、音楽にまとまりが感じられるようになった。「アニトラの踊り」や「アラビアの踊り」の小気味よく軽快なステップは、ヴァンスカらしいフレーズの処理である。全体を通じ、弦楽器セクションからは、北欧らしい空気の片鱗も窺われ、悪くない仕上がりであったが、座った場所のせいか、弦楽器の内声部が薄く、美しい旋律の背後にうごめく何かを感じるまでには至らなかった。また、金管楽器が丸裸になる場面で、不安定さや軽さが気になった。各セクションの音色にもう少し懐の深い響きが伴うと、淡さの中にも多彩な色合いが織り込まれ、北欧の雰囲気を醸し出せたのではなかろうか。

前半二曲目は、アホのクラリネット協奏曲(日本初演)。1970年スウェーデン生まれのマルティン・フロストが独奏を努めた。

こちらは、前評判に違わず、フロストの独壇場であった。丸みがありながらも中身のギュッと詰まった音色は、非常に滑らかで、全くブレない。高音から低音まで完璧にコントロールされている。1階席の壁伝いに回ってきた余韻とともに、これぞクラリネットという深い響きを愉しむことができた。
また、随所に散りばめられた超絶技巧の数々も、超絶技巧と感じさせないほどに自然で、耳障りな音が一瞬たりとも混じらなかった。驚異的である。クラリネットという楽器の可能性をとことん追求し、完成させたアホの作曲技法、そしてその世界を見事に表現し切ったフロストの演奏技術と表現力の高さに、感銘を受けた。

他方、オーケストラは、難曲を相手によく善戦していたが、細かい音符が団子状になったり、リズムの切れが甘かったり、和声進行の行間が感じられなかったりするなど、よく聴くと、粗さが垣間見れてしまう。楽譜と打点をおそるおそる追いかけているような箇所も散見され、オーケストラ全体として作品に対する勉強が十分ではなかったような印象を持った。このあたりがビシッと決まると、スリリングな音楽に化け、アホの魅力がより一層引き立ったであろう。

満場の拍手に応えて演奏されたのは、マルティン・フロストの弟であるヨーラン・フロスト編曲による伝承曲「クレズマー舞曲」。ノリと切れのよい舞曲で、会場は一気に盛り上がった。

後半は、シベリウスの交響曲第2番。ヴァンスカ&ラハティ響のシベリウス全集は予習済みだが、ヴァンスカのシベリウスの実演に接するのは、今回が初めてである。

第一楽章は、録音と同様、一般的なテンポ設定よりはだいぶ速い。しかし、スコアを思い浮かべながら聴いていると、実に納得のいく解釈である。展開部、再現部と進むにつれ、なるほどと思わせる処理の数々を眼前で確認できたのは、筆者個人にとっては収穫であった。
もっとも、これらの解釈は、機動性が抜群のラハティ響であれば、スタイリッシュに決まったと思われるが、重心が重めな読響の場合、響きが落ち着く前に次に進んでしまうため、空回り気味に聴こえる場面が散見された。サントリーホールという箱の大きさに起因していたのかもしれない。ともあれ、可もなく不可もなくといった印象のまま、第一楽章はあっさりと終了した。

しかし、第二楽章が始まると、途端に空気が変わった。一つひとつの音に思いをこめながら、楷書体で丁寧に綴っていくヴァンスカの音楽には、他の指揮者には決して真似ができない奥行きがある。高揚すると押し出しが強くなる読響の響きを絶妙にコントロールし、重量感と軽やかさの狭間で、叙情的でかつ格調の高いカンタービレを導き出していた。後半部分においてジーンと来る瞬間があったのは否定できない。

第三楽章は、冒頭が若干弛緩気味だった以外は、流れもよく、好演。中間部のオーボエの旋律に、レガートとスタッカートでメリハリを付けさせたのが秀逸だった。

そのままアタッカで突入した第四楽章は、音楽的には文句なしの名演。フィンランド語に由来すると思われるアクセントの語法や、対旋律の浮かび上がらせ方、そして心から湧き上がるカンタービレは、ヴァンスカの独壇場であった。

終わってみれば、ヴァンスカの世界観と読響の個性がうまく融合した好演であった。金管楽器に関しては、トランペットが妙に硬く直線的で、また、ホルン、トランペット、トロンボーンの各セクションにもやや不安定な箇所が散見されたが、いつも以上の頑張りも感じられ、総じてヴァンスカの要求にはよく応えていたと思われる。

なお、この日の演奏会では、特に後半において、日本人の強さを改めて実感した。読響の定期演奏会の聴衆のレベルの高さは、周知のとおりだが、ステージ上で繰り広げられる渾身の演奏に、ひたむきに耳を傾け、そして、クライマックスに向け、気持ちが一つになってゆく雰囲気は、海外の演奏会では感じることのなかった感覚である。演奏会に足を運ぶことの意義を再確認した一夜であった。


(公演情報)

第546回サントリーホール名曲シリーズ

2012年2月15日(水) 19:00開演
サントリーホール

指揮:オスモ・ヴァンスカ
クラリネット:マルティン・フロスト

グリーグ/付随音楽〈ペール・ギュント〉から抜粋
アホ/クラリネット協奏曲(日本初演)
シベリウス/交響曲 第2番 ニ長調 作品43
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[2012/02/15 23:25] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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