ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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欧州行き(12年3月)①―メータ指揮チューリッヒ歌劇場「ドン・カルロ」
3月8日午前1時すぎ、羽田空港国際線ターミナルからNH203便にてフランクフルトへ。そして、LH1182便に乗り継ぎチューリッヒへ。初めて搭乗したB787は、エコノミー席ゆえ限界はあるが、言われているように、通常と比べると、機内空間や座席ピッチが広めで、機内の湿度や気圧も調整されており、熟睡はできないものの、乗り心地は悪くはなかった。何よりも、フランクフルトに早朝に到着するため、乗り継ぎをしても欧州域内の各都市に朝のうちに到着できるメリットは大きい。

午前8時すぎに、チューリッヒの定宿であるホテル・アドラーへ。20分ほどでチェックインさせてくれたので、お昼過ぎまで部屋で熟睡。目抜き通りでショッピングを愉しみ、ホテル併設のレストランで早めの夕食を摂る。勝手がわかっているので、とても快適だ。

午後6時半、チューリッヒ歌劇場へ。この日の演目は、ズービン・メータ指揮によるヴェルディ「ドン・カルロ」。今シーズンのプレミエで、この日は二日目の上演にあたる。リコルディ五幕版が採用されたようだ。

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筆者の確保した座席は、Parkett-Loge 5 rechtsの1列目。舞台もオーケストラピットも目の前で、筆者にとっては最良のポジションである。

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さて、上演についてだが、一言でいうと、非常に内向的な「ドン・カルロ」だった。ひたむきに、そして切々と語りかけるような展開。とりわけ、休憩後の第四幕と第五幕は、各登場人物の悩みの深さがひしひしと伝わってくるようであった。

職人メータのタクトも冴えていた。音楽の流れに逆らわず、現場をよく見ている。各フレーズに対するアウフタクトは、必要最小限度にとどめられているが、音楽を運ぶためのエッセンスは濃縮されており、簡にして要を得た絶妙なものだった。全体を通じ、弦楽器を主体にしたソフトなサウンドだが、要所でリズムを引き締めるので、音楽が弛緩しないのもさすがである。場面が変わる直前で、テンポを先取りして、スムーズに運ぶ流れは、匠の技といえよう。アクセントの前で、オーケストラに若干ディミニエンドをかけさせて準備させるあたりは、恐れ入ったといわざるを得ない。心の動揺を示唆する動機の数々を旋律の背後で浮かび上がらせていたのも秀逸だった。
バランスの図り方も素晴らしく、どんなときでも、歌手らの歌声が浮かび上がるギリギリのポイントに狙いを定め、オーケストラの音量を綿密にコントロールしていた。なお、このスタンスの下では、パワー不足の歌手らが歌う箇所において、オーケストラが通常以上に抑制されてしまい、音楽的にやや不完全燃焼となることもあるが、このあたりは考え方の違いだろう。後述のとおり、この日は、一部の歌手らが役不足であったため、抑えすぎと思える箇所もあったが、それは歌手のコンディションの問題である。カーテンコールがやや盛り上がりに欠けてしまったのは、気の毒なことであった(そうはいっても、いざというときに、あえてグッとアクセルを踏み込むマエストロ・サンティの例もあり、按排が難しいところだ。)。
響きとしては、イタリア的というよりも、むしろシンフォニックな方向性。しかしながら、外面的効果に拘泥することはなく、密度の濃い音楽として仕上がっていた。いつも感じるが、チューリッヒ歌劇場管は、一音一音に対して真剣に取り組む。それゆえ、メータの音楽性が実に素直に音色に反映されていた。メータ自身も、機動性の高いチューリッヒ歌劇場の特徴をよくつかんでいたようだ。

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キャスト陣の中では、予想通り、エーボリ公女役のヴェッセリーナ・カサロヴァとロドリーゴ役のマッシモ・カヴァレッティが抜きんでていた。カサロヴァの貫録は、他の追随を許さない。第四幕のアリアの末尾で若干声が硬くなった点を除けば、歌唱も演技も圧倒的であった。カヴァレッティも、ロドリーゴという役柄の持つ気高い姿勢と熱い友情を見事に表現し、この日の上演を牽引していた。特に、この二人が正面からぶつかり合う第三幕第一場は、手に汗を握る展開であった。
これに対し、フィリッポ二世役のマッティ・サルミネンは、第四幕のアリアでは、聴き応えのある歌唱を披露したが、それ以外は声も演技も張りがなく、この作品のテーマの一つであるフィリッポの陰鬱な心情を表現するには、あまりに役不足であった。また、ドン・カルロ役は、ファビオ・サルトーリが降板し、ジュゼッペ・ジパーリが代役で出演。手堅くまとめていたが、カサロヴァとカヴァレッティの相方としては、線の細さを感じざるを得ない。エリザベッタ役のアニヤ・ハルテロスは、悩める王妃を表現すべく、孤軍奮闘していたが、フィリッポ二世とドン・カルロがこの状況では、彼女の努力は報われようがない。
「ドン・カルロ」という作品で、キャストを揃えることの難しさを痛感させられた。

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スヴェン=エリク・ベヒトルフによる演出は、黒を基調としたシンプルな舞台。各場面を象徴する置物が中央に据えられてはいるが、それ以外のセットはなく、両袖から迫る黒い壁を伸縮させて場を仕切るくらいしか変化はなかった。立ち位置や演技に特別な工夫があるわけでもなく、演奏会形式と変わらないのではないかといった批判が出てもおかしくないようなものであった。この演出プランの下では、ただでさえ長いリコルディ五幕版がより冗長に感じられてしまう。終演時間が午後11時をまわるということもあり、途中で退席する観客が多く見られたのが残念だ。

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終演後は、まっすぐホテルに戻る。時差ボケもあり、すぐに就寝した。

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(公演情報)

Don Carlo Verdi
Thursday, 08.03.2012, 19:00-23:00

Conductor Zubin Mehta
Producer/production Sven-Eric Bechtolf
Orchestra Zurich Opera House Orchestra

Anja Harteros (Elisabetta di Valois)
Vesselina Kasarova (La Principessa d'Eboli)
Bettina Schneebeli (Tebaldo, Paggio di Elisabetta)
Sen Guo (Una voce dal cielo)
Matti Salminen (Fillippo II)
Giuseppe Gipali (Don Carlos)
Massimo Cavalletti (Rodrigo, marchese di Posa)
Alfred Muff (Il Grande Inquisitore)
Pavel Daniluk (Un frate)
Benjamin Bernheim (Il conte di Lerma/ un araldo reale)
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[2012/03/13 21:36] | 海外視聴記(チューリッヒ) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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