ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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欧州行き(12年3月)②―大野指揮リヨン国立歌劇場「パルジファル」
3月9日午前7時すぎ、ホテルをチェックアウトし、チューリッヒ空港へ。LX530便にてリヨンへ。リヨンは日差しが暖かく、春の兆しが感じられる。午前11時ころ、宿泊先であるイビス・リヨン・パール・デューレ・アールにチェックイン。ちなみに、スイスから移動してくると、フランス人の自由さが際立って面白い。

正午すぎ、有名店であるRestaurant La Tessaへ。ロブスタースープのパイ包みと鳩のローストのフォガグラソース添えをいただく。悪くはないが、値段相応な感じであった。

いったんホテルに戻り、しばし仮眠。午後5時すぎに、リヨン国立歌劇場へ。この日は、大野和士指揮によるワーグナー「パルジファル」。今シーズンのプレミエである。3月6日が初日の予定であったが、技術的な問題により初日の公演がキャンセルされたため、この日が実質的な初日となった。なお、今回のプロダクションは、メトロポリタン歌劇場とカナディアン・オペラ・カンパニーとの共同制作である。

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筆者の座席は、Parterre4列目の下手側。オーケストラの音色にはまとまりがあり、また、舞台も間近なため、歌手の表情の一つひとつまで鑑賞することができた。本当はオーケストラピットの中も観察したかったのだが、リヨン国立歌劇場のシステム上、座席を選ぶことができないので、やむを得ない。オーケストラピットが深かったため、マエストロの指揮姿もかすかに確認できるにとどまった。

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音楽的には、ドイツ的な重厚さよりも、横のラインを重視した草食系のアプローチ。リヨン国立歌劇場管らしい色彩感と艶のあるサウンドとともに、流暢な旋律美が展開した。複数の動機が重なり合う箇所で、両者の香りが淡く混じり合い、そしてスムーズに遷移したのも秀逸。マエストロらしい様式感と構成美が隅々まで徹底されていた。

第一幕では、断片的な動機において、オーケストラが探り合ってしまい、響きの座りの悪い箇所も見られたが、この点は、回数を重ねれば改善されてゆくだろう。第一幕の聴きどころである場面転換の音楽や聖杯の儀式では、管弦楽の遠近法が如何なく発揮され、特に見事であった。繊細かつ軽やかに結晶化した響きは、このコンビの真骨頂といえるだろう。

第二幕に入ると、ワーグナーらしい激情的な表現が随所に噴出するようになった。響きに重厚さが伴い、手に汗を握る展開。しかし、音楽自体は理知的であり、断片的な動機の数々がよく噛み合い、並々ならぬ緊迫感を表現されていた。

第三幕では、すべてが高みにおいて結実した感があった。とりわけ、洗礼と聖金曜日の情景からフィナーレにかけては、豊麗な旋律の数々が次から次へと溢れ出し、音楽による救済が達成された大団円であった。

全体を通じ、緊張感が削がれる瞬間が全く無かったのは、驚異的である。各動機の処理が終始一貫していたため、素直に聴いていれば、その作品構造が自然と頭に入ってくる。マエストロのタクトも、普段以上に余裕があり、周到かつ綿密な準備に裏付けられた自信に満ち溢れていた。合唱団の充実ぶりと安定感も特筆に値する。

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キャスト陣の中では、グルネマンツ役のゲオルク・ツェッペンフェルトが、歌唱と演技の両面で、実によい働きをしていた。クンドリ役のエレナ・ジドコヴァも、とても魅力的。複雑な役柄をチャーミングに描き分けていた。これら二名の好演により舞台全体が非常に引き締まったのがこの日の成功の要因の一つともいえる。パルジファル役のニコライ・シェコアは、表現が若かったことに加え、見せ場における迫力もいま一つな感じで、やや物足りなさも感じたが、演出のコンセプトにはむしろ適合していたようにも思われた。

フランソワ・ジラールによる演出は、非常に見応えがあった。舞台装置に賭ける意気込みがすごい。第一幕と第三幕は、舞台奥に向けて盛り土をし、中央を小川が流れるという意欲的なもの。上手側と下手側で男女を分離するという象徴的な設定から開始し、最後に両者が融合するという組立ては、非常に説得力があった。これに対し、第二幕は、高い崖に左右を挟まれた舞台一面に赤い水が張られていた。体当たり的な演技の数々は、観客の心をつかむ。花の乙女の誘惑からクンドリによる求愛の拒絶へと場面が進行するのに合わせて、女性たちの純白な衣装が赤く染まってゆく情景は、圧巻であった。舞台背後には、巨大なスクリーンが置かれ、宇宙的な広がりが映し出されていたのも印象的。いわゆる宗教色は薄かったが、未来に語り継がれるべきパルジファル演出であったと思われる。

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カーテンコールの盛り上がりも、この日の上演の充実度を示唆していた。とはいっても、終演は午後11時40分。体力的には限界に近い。終盤では、周囲のお客さんの多くも、船を漕いでしまう状況にあり、平日の夜に観劇するには、いささか無理な演目であることを再認識させられた一夜でもあった。


(公演情報)

Parsifal
Richard Wagner
Vendredi 09 Mars 2012 à 18h

Direction musicale : Kazushi Ono
Mise en scène : François Girard

Nikolai Schukoff : Parsifal
Elena Zhidkova : Kundry
Gerd Grochowski : Amfortas
Georg Zeppenfeld : Gurnemanz
Alejandro Marco-Buhrmester : Klingsor
Kurt Gysen : Titurel
Tehmine Yeghiazaryan : Fille-fleur 1
Ivi Karnezi : Fille fleur-2
Katharina von Bülow : Le Second Ecuyer / Fille-fleur 3
Heather Newhouse : Le Premier Ecuyer / Fille-Fleur 4
Sonja Volten : Fille-fleur 5
Ulrike Helzel : Une voix / Fille-fleur 6
Daniel Kluge : Le Premier chevalier
Lukas Schmid : Le Second chevalier
Olesiy Palchykov : Le Quatrième Ecuyer
Pascal Pittie : Le Troisième Ecuyer
Orchestre, Chœurs et Maîtrise de l'Opéra de Lyon
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[2012/03/13 21:40] | 海外視聴記(リヨン) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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