ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 |
トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン2012
4月4日午後7時前、サントリーホールへ。アークヒルズ横のスペイン坂では、桜が咲き始めており、春の訪れが感じられる。向かったのは、トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーンによるウィーン・プレミアム・コンサート。トヨタは、2000年より毎年、ウィーン・フィル及びウィーン国立歌劇場のメンバーを中心に30名で特別編成されたオーケストラを招聘し、日本各地で演奏会が開催している。チケットの料金も格安であり、クラシックファンにとっては嬉しい限りである。昨年の公演が東日本大震災の影響により全て中止となったため、今年は2年ぶりの開催となった。ホール内は、もちろん満席である。

筆者の座席は、2階席Cブロック8列目中央寄り。ステージからやや遠いが、全体を把握するには悪くないポジションである。周辺から小さな物音がする場面も何度かあったが、許容範囲ではあった。

最初に演奏されたのは、トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーンのための前奏曲「イントラーダ」。モーツァルトの交響曲第39番第三楽章の動機を用いた導入曲である。ふわーっと広がるフレーズと、揺らぎを伴った三拍子のリズムが実に心地よい。筆者の心は、都会の喧騒を離れ、ウィーンの街並みへと連れて行かれた。振り返れば、帰国して3ヶ月。筆者の生活リズムは、もうすっかり東京の慌しさに逆戻りしてしまったのだろうか。

さて、プログラム冒頭は、J.シュトラウスII世の作品。「春の声」、そして、喜歌劇「こうもり」から序曲、アデーレのワルツとアリアが採り上げられた。独唱は、天羽明惠。

「春の声」では、オーケストラによる序奏が栄えた。春風が吹きぬけるような颯爽としたフレーズ感と拍子感が実に素敵である。このアクセルの吹かせ具合は、誰にも真似はできない。他方の天羽は、優等生的に手堅くキチンと歌えてはいたものの、オーケストラの軸足がウィーンにあるだけに、リズム感に違和感が残る。音符の処理が硬めで、フォルクハルト・シュトイデの率いる弦セクションの柔らかな響きと十分に溶け合えてはいなかったように感じられた。柔らかさと輝きを持ったまま、オーケストラの響きの層の上にスッと乗れると良かったのだが、ちょっと残念。

ともあれ、会場の空気が温まってきたところで、「こうもり」へ。

一曲目の序曲は、ウィーン国立歌劇場の通常公演とあまり変わらないくらいの「悪くない」仕上がり。後半に進むにつれて、徐々に熱を帯び、メンバー間の駆け引きも垣間見られるなど、スリリングさは十分に愉しめたが、やはり細かいところで粗が出てしまっていた。編成の小ささに加え、臨時編成ゆえに一部メンバーが不揃いであったことも考え合わせると、やむを得ないといえようか。ちなみに、オーボエ首席は、チューリッヒ歌劇場管のベルンハルト・ハインリヒスだったが、上手いけど何かちょっと違うような気もした。個人的には、セカンド・ヴァイオリン首席に座ったベテラン、ペーター・ヴェヒターがやりたい放題やっていたのがツボであった。

二曲目は、第二幕の夜会を彩るワルツ「公爵様、あなたのようなお方は」。天羽が独唱を務める。「春の声」と同様、手堅い処理なのだが、やはりワルツのリズム感に乗り切れない。途中に挿入されるコロラトゥーラのパッセージや甲高い笑い声が田舎娘の女中というベースラインに沿いすぎていたようにも感じられた。

三曲目は、第三幕のクライマックスの一つともいえるアリア「田舎娘の姿で」。天羽のドイツ語の発音が硬く、旋律の流れがいまひとつであったのが残念だった。特に後半は、スタミナ切れのようにも見受けられ、緊張感が薄らいでしまったようにも感じられた。指揮者がいれば、様々な助け舟が出るので、もう少し歌いやすかっただろう。しかし、今回は指揮者がいないため、そういったサポートも受けられない。かなり酷な状況であったのだろう。やはり、この長丁場を一人で演じ切る歌い切るのは、至難の業といえようか。

J.シュトラウスII世の後には、シューベルトの作品が二つ演奏された。

一曲目は、「イタリア風序曲」。曲自体は、それほど面白くはないが、その構成のシンプルさゆえ、彼らのアンサンブルの秘訣を探るにはちょうど良い。オーケストラ全体として、不変の時間軸が流れており、各セクションが然るべきタイミングで然るべき仕事をするということの意味を再確認することができたのは、この日の収穫の一つであった。旋律がリードするわけでもなく、リズムが縦の線を主張するわけでもなく、滞りなく流れる時間軸の隙間をじわじわと響きで埋めていくかのような彼らのアンサンブル力は、さすがである。

二曲目は、オッフェルトリウム「心に悲しみを抱きて」。天羽の独唱、ペーター・シュミードルのクラリネット独奏により演奏された。この曲は、正直ちょっと厳しかった。シュミードルは衰えを隠しきれず、天羽の歌唱もやや平板で華が開かず。結局のところ、あまり印象に残っていない。

以上がプログラム前半だが、この後にアンコールとして、ケルビーニの「アヴェ・マリア」が演奏された。こちらでは、シュミードルが実に渋い音色で聴衆に語りかけ、存在感を示せていた。あの深い響きが聴けただけで満足することにする。

プログラム後半一曲目は、ベートーヴェンのロマンス第2番。シュトイデが独奏を務めた。弦楽器主体のオーケストラの響きがシュトイデの独奏とよく溶け合い、余韻の冥利を味わうことができた。なお、この曲で感心させられたのは、随所で垣間見られたオーケストラの驚異的な調整力。シュトイデの独奏は、スマートで、ややストイックともいえ、フレーズの後半を切り詰めて先に進もうとする場面も多く、忙しなさも感じさせたが、オーケストラは、ゆったりとした全体のテンポ感を損なうことなく、しかし切り詰められた部分の帳尻を合わせて、何事もなかったかのように淡々と進んでゆく。どこで辻褄を合わせていたのだろうか。他のオーケストラであれば、どこかに歪みが露呈してしまうだろう。

プログラム後半二曲目は、モーツァルトの交響曲第40番。この日のメインである。

繰り返しは全て省略。速めのテンポでスマートにまとめた演奏だったが、指揮者の悪い趣味が混ざらないので、音楽的にはむしろ充実していた。この曲でも、ヴェヒター率いるセカンド・ヴァイオリンの存在感が際立っていたが、それを超えて凄かったのは、ホルンセクションのヴォルフガング・トムベックとセバスチャン・マイヤーの二人組。地味に上手すぎである。また、舞台の中央からオーケストラ全体の響きを包み込むシュミードルの存在感も大きかった。例えば、第二楽章の展開部で、シュトイデがどんどん前へ進もうとしていた際に、フレーズに若干の遊びを持たせてテンポに余裕をもたらしたり、逆に、第四楽章のソロでは、堰を切るように進んで全体を煽ってみたりと、その縦横無尽な操り術には、心底驚かされた。なお、オーケストラ全体としては、第四楽章で熱がこもり、音色が暴れ気味になってしまったが、ライブの醍醐味ということで、これはこれでよいアクセントであった。

満場の拍手を受け、演奏されたアンコールは、J.シュトラウスII世の「騎士パズマンのチャールダッシュ」と「トリッチ・トラッチ・ポルカ」。ここへ来て、モーツァルトにおける理知的な演奏スタイルがガラッと変わる。「チャールダッシュ」におけるこれでもかとばかりのポルタメントでエンジンがかかると、メンバー全員でやりたい放題。「トリッチ・トラッチ・ポルカ」も、モーツァルトまでは非常におとなしかった低弦が突如として煽りまくり、凄まじい勢いに。こんな演奏は、滅多に聴くことができない。この場にいられたことが幸せだと感じた瞬間であった。

終演は午後9時前。ぜひ来年も聴きに来ようと誓いつつ、会場を後にした。


(公演情報)

2012年4月4日(水)19:00開演
会場:サントリーホール

トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン
天羽明惠(S)
ペーター・シュミードル(Cl)
フォルクハルト・シュトイデ(Vn)

J.シュトラウスⅡ:
ワルツ『春の声』 op.410
オペレッタ『こうもり』序曲
オペレッタ『こうもり』から「侯爵様、あなたのようなお方は」
オペレッタ『こうもり』から「田舎娘の姿で」

シューベルト:
イタリア風序曲 ハ長調 D591
オッフェルトリウム『心に悲しみを抱きて』 ハ長調 D136

ベートーヴェン:
ロマンス第2番 ヘ長調 op.50

モーツァルト:
交響曲第40番 ト短調 K550
スポンサーサイト
[2012/04/05 00:13] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(2) |
<<レ・ヴァン・フランセ | ホーム | 欧州行き(12年3月)⑥―ティーレマン指揮ベルリンフィル「悲愴」>>
コメント
私にとって初めてのサントリーホール、
そして初めてのトヨタ・マスターズ・プレイヤーズ・ウィーンのコンサート鑑賞でした♪
1階席の真ん中の前の方の席でした。
とっても楽しい夜でしたよ~
[2012/04/07 12:41] URL | バロン #- [ 編集 ]
コメントを頂戴し、ありがとうございました。
私自身もとても楽しい演奏会であったと思います。
この日の演奏会の場合、1階席の真ん中の前の方の席はベストポジションの一つですね。
個々のメンバーの仕草まで手に取るように分かるので、より一層楽しめたのではないでしょうか。
[2012/04/07 18:53] URL | 筆者 #- [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://mashi1978.blog97.fc2.com/tb.php/116-3cb2eafe
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

mashi1978

Author:mashi1978
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。