ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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イオン・マリン指揮都響―第735回定期演奏会「ワーグナー、シューマン、フランク」
5月21日午後7時前、東京文化会館へ。イオン・マリン指揮東京都交響楽団第735回定期演奏会。ワーグナーの歌劇「リエンツィ」序曲、シューマンのチェロ協奏曲、フランクの交響曲が採り上げられた。バランスの取れた良いプログラムである。

筆者の座席は、5階席R1列中央付近。辻井ファンが押し掛けた前回と異なり、会場内は8割程度の入りで、良くも悪くも日常的な風景だったが、最初から最後まで終始鳴りっぱなしの補聴器と、曲終了付近で毎度のように聞こえる携帯ストラップの鈴の音には、閉口させられた。

プログラム前半一曲目は、ワーグナーの歌劇「リエンツィ」序曲。いわゆる「習作」の最後に位置する作品である。

イオン・マリンは、円熟期のワーグナーを彷彿とさせるような雄弁なサウンドを引き出した。とりわけ、懐の深い弦セクションの響きは、朗々としていながら、筋肉質でもあり、ドイツの歌劇場と遜色がない。むしろ緻密さの点では、都響に軍配が上がるかもしれない。全体を通じ、音量、テンポ設定ともに、バランスよくコントロールされており、今にも幕が開きそうな期待感が会場内に醸成された点は、オペラ指揮者イオン・マリンの手腕の確かさを感じさせるものであった。

ただ、技術面では、やはり万全とはいえない。ピッコロの音程が目立って外れていたのは、この楽器の難易度を踏まえても、許容範囲を超えていた。金管セクションに関しても、健闘してはいたものの、響きが薄く、傷が散見された。聴き手の気持ちを萎えさせてしまう瞬間が垣間見られるあたりが都響の弱さかもしれない。

プログラム前半二曲目は、シューマンのチェロ協奏曲。アントニオ・メネセスが独奏を務めた。

メネセスは、静かな軽いタッチで、シューマンを語った。線は細めだが、響きはクリアで、伸びがある。力技で勝負することが皆無なので、聞き苦しい摩擦音が混じることもない。名門ボザール・トリオで10年間活躍したキャリアに相応しく、明るく開放的な室内楽の世界で聴衆を魅了していた。筆者の個人的な印象としては、晩年のシューマンに特徴的な「病的な」感情の高まりの場面で、やや物足りなさを感じることもあったが、このあたりは趣味の違いといえようか。

弦セクションを最大6プルトに縮小したオーケストラも、メネセスの独奏に呼応して、響きの重心を高めに設定し、軽やかで柔らかい響きでサポートしていた。とりわけイオン・マリンのタクトが絶妙で、フレーズの起点から終点までを見越したアウフタクトにより、拍子感とフレーズ感を見事にマッチさせていた。それは単にタイミングが合っているという域を超えている。万人に通ずる力学を巧みに操りつつ、音楽の自然な流れを導き出す彼のアウフタクト技術の確かさには、完全に脱帽させられた。なお、蛇足だが、木管楽器の和音が濁る場面が多かった点と、ヴィオラパートにまとまりがなかった点は、何が原因だったのだろうか。

プログラム後半は、フランクの交響曲。筆者は、ちょうど一か月前にカンブルラン指揮読響による怪演に接しており、両者の聴き比べという観点からも、楽しみにしていたプログラムの一つであった。

イオン・マリンの解釈は、ワーグナーの世界観に近似した方向性を見出したものと思われ、オペラ的な劇性に富んだものであった。
第一楽章は、緩急の変動が大きく、ドラマチックな設計。しかし、オーケストラの響きをやや軽めに創り込んだため、鈍重になることはなく、むしろ旋律の波がスムーズに連なる。歌にあふれた第一楽章であった。
興味深かったのは、第二楽章。イングリッシュホルンのメロディばかりが耳に残ることが多いが、イオン・マリンは、この楽章の持つ多彩な顔を明快に描き分けた。スケルツォやトリオをこれだけ面白く聴かせる演奏は、そうそう出会えるものではない気がする。
第三楽章は、第一楽章と同様のアプローチで、人間賛歌のような大団円となった。金管セクションの荒々しいファンファーレを一つの歌として構成し直したあたりが実に秀逸であった。
全体を通じ、オペラに手馴れていないオーケストラには、若干の戸惑いもあったように見受けられたが、都響定期に初登壇のマエストロによる一夜限りの演奏会としては、十分に成功といえる仕上がりだったと思われる。

終演は午後9時前。この日はオフィスに戻ることもなく、平穏に帰宅することができた。


(公演情報)

第735回 定期演奏会Aシリーズ

2012年5月21日(月)19:00開演
会場:東京文化会館

指揮:イオン・マリン
チェロ:アントニオ・メネセス

曲目
ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲
シューマン:チェロ協奏曲 イ短調
フランク:交響曲 ニ短調
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[2012/05/22 00:09] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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