ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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欧州行き(12年5月)④―バティストーニ指揮サン・カルロ劇場「ラ・ボエーム」
5月26日午前9時、ローマ・テルミニ駅を発ち、Euro Star Italia AV9501にて、ナポリ中央駅へ。最高時速300キロの超特急の乗り心地は上々だ。バスで街の中心部へ向かい、宿泊先であるメルキュール・ナポリ・アンジョイーノ・チェントロへ。4つ星のこのホテルは、立地と設備の点で、ナポリ市内のホテルの中では、相当上位にランクインすると思われる。新しくて快適だが、シャワールームの排水がいまいちで、バスルームの床が水浸しになってしまったのが難点だった。

午前11時すぎ、ホテルを出て、王宮とヌオーヴォ城をササっと見学。午後0時半頃、ピッツァ・マルゲリータ発祥の店として有名な1780年創業のピッツェリア、ブレンディへ。カプレーゼとマルゲリータを食す。マルゲリータは、チーズがクリーミーであることに衝撃を受ける。ガイドブック等の写真と比べると、ソースもバジルも貧相なくらいだが、素朴な味わいで、悪くはない。

いったんホテルに戻り、しばし休憩。午後6時前に再びホテルを出て、徒歩15分ほどでドゥオーモへ。夕方のミサの様子を少しだけ見て、もう一つの有名ピッツェリア、ダ・ミケーレへ。店の前には行列が出来、観光客と地元の人々が忙しなくピッツァを頬張っている。ここでもマルゲリータを注文したが、悪くはないものの、こちらもソースとバジルが少なく、焼き方も雑で、焦げている箇所が多いなど、感銘を受けるほどではなかった。

午後8時すぎ、サン・カルロ劇場へ。アンドレア・バティストーニ指揮によるプッチーニ「ラ・ボエーム」。この言わずと知れた超名作を、イタリアの若き俊英がナポリの地でどのように仕切るかが筆者の関心事であった。劇場内は8割程度の入りで、観光客の姿が多く見受けられた。

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筆者の座席は、Palco Ord.II n.18の1列目。5層ある馬蹄の下から2番目の中央ゆえ、音響的には物足りないが、チケットを購入した時点では、これが最善の選択であった。もう少し上層の座席が確保できていれば、魔法のようなプッチーニ・サウンドに身を委ねることができたかもしれない。

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この日の上演は、田舎の歌劇場のルーティン公演の域を超えるものではなかった。安定感はあるが、作品全体として見た場合のワクワク感はない。第一幕はブツ切りだし、第二幕も予定調和的で、観ているこちらのテンションは下降一直線であった。第四幕になってようやくオペラらしいムードが生まれてきたのが唯一の救いといえようか。

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原因は色々考えられるが、結局のところ、キャスト陣と指揮者の力量不足に尽きるのだろう。

主要キャスト陣のうち、ロドルフォ役のヴァルター・ボリンが大外れ。薄っぺらで力みのある歌唱と表現が観客の気分を萎えさせる。ミミ役のマリア・ホセ・シーリの健闘は、ロドルフォ役ボリンの情けない立ち振る舞いにより、全てが台無しになった。思えば、どの幕でも、肝心のところでロドルフォが絡み、音楽とドラマを盛り上げる。それゆえ、ロドルフォが転ぶと、それまでの積み重ねが水の泡になる。プッチーニの怖さを目の当たりにした。

なお、ムゼッタ役のエレオナーラ・ブラットは、第二幕ではキレの良さで人目を惹いたが、肝心の第四幕ではオーラがなく、プッチーニがムゼッタに与えた女性像には遠く及ばなかった。マルチェロ役のアンジェロ・ヴァッキアも要所では張りのある歌唱と演技を示したが、ポイントのみで、全体としては雑駁な印象。その他の各キャストは、二流以下で、取るに足らず。

キャスト陣全体としては、イタリア語の発音に安心感があった以外には、見るべき点はなかった。

全幕暗譜で指揮台に立ったバティストーニの指揮は、混迷を極めることの多いこの作品において、スコアの構造を明晰に浮かび上がらせていた点は、高く評価できるものの、合わせることが主目的になってしまっていて、流れやフレーズがブツ切りになる箇所があまりに多かった。分解されたパーツがそのまま地面に散らかってしまった印象。細部を磨くという意味では、マゼール御大にも通ずるアプローチだが、個々のパーツに引力を宿らせることを期待するには、指揮者の年齢が若すぎたようだ。

細かく打点を示して物理的に合わせるよりも、心の中で強く念じつつ、忍耐強く構えてオーケストラに委ねた方が、結果的には、上手く事が運ぶだろう。もっとも、期間中は毎日演奏することを強いられるオーケストラに自発性を期待することは難しいとも思われ、長い伝統に支えられたナポリの地で、すっきりとした新鮮なサウンドを引き出しただけでも、まずは成功というべきだろうか。ちなみに、第二幕中盤と第三幕前半の処理に関しては、感心させられる箇所も多かった。

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オーケストラは、基本的には、仕事モードの醒めた感じで、淡々と楽譜を処理しているが、各幕の見せ場、例えば、第一幕であれば、ミミの登場のシーンやミミとロドルフォの二重唱、第二幕であれば、ムゼッタのワルツ、第三幕であれば、開幕の情景やミミが別れを告げる場面など、ここぞという箇所の前奏が始まると、突如として艶やかな響きの帯を立ち上がてくる。細かいパッセージでも、美味しいところは、軽いタッチで、気持ちよさげに決めてくる。この人たちが本気を出したら凄い演奏になるに違いない。

なお、ローレンツ・アマートの演出は、台本に即した古典的な舞台で、観ていて安心感があった。

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終演後はホテルに直帰。

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翌朝午前4時前に起床し、午前4時半にホテルを出て、タクシーでナポリ・カポディキーノ空港へ。LH337便でフランクフルトへ飛び、NH204便にて帰国の途へ。5月28日午前6時半、羽田空港に到着。自宅に荷物を置き、着替えて職場へ。

今回は、イタリアづくしの4泊6日。鑑賞したオペラ4本はもとより、ローマとナポリの活気にあふれた男性的な空気に触れたことは、今回の旅程における一つの収穫であった。イタリアの新たな一面を発見し、またイタリアオペラの数々を多角的に体感し、イタリアが分かったような分からなくなったような、そんなモヤモヤした感覚のまま、帰路についた。


(公演情報)

LA BOHE'ME
di Giacomo Puccini

Teatro di San Carlo
Sabato 26 maggio 2012, ore 20.30

direttore: Andrea Battistoni
regia: Lorenzo Amato

Mimi`: Mari'a Jose' Siri
Rodolfo: Valter Borin
Musetta: Eleonora Buratto
Marcello: Angelo Veccia
Schaunard: Pier Luigi Dilengite
Colline: Alessandro Spina
Alcindoro: Alessandro Calamai
Benoit: Matteo Peirone
Parpignol: Stefano Pisani

Orchestra, Coro e Coro di Voci Bianche del Teatro di San Carlo
Nuovo allestimento del Teatro di San Carlo
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[2012/05/28 16:01] | 海外視聴記(ナポリ) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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