ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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欧州行き(12年6月)①―ラトル指揮ウィーンフィル「シューマン&ブラームス他」
6月13日午後11時すぎ、羽田空港国際線ターミナルへ。この週は、ターミナル内のレストランが試験的に深夜まで時間を延長して営業をしている。出発前のひと時を、おでんの名店、おぐ羅で過ごす。芋焼酎とおでんだしで、いい感じに出来上がる。

6月14日午前1時、NH203便にてフランクフルトへ。今回もエコノミークラス。4人がけの通路側で、隣が空席であったため、多少は余裕もあったが、やはり体勢はつらい。フランクフルトには定刻に到着。ここで約3時間の乗継時間があったため、空港内で仕事をするつもりだったのだが、レンタルWifiの接続が悪く、結局棒に振ってしまう。乗継便のLH1234便は、約20分遅れでの搭乗となり、ウィーンに着いたのは午前10時半頃となった。ウィーン国際空港は、3週間前に乗継で利用していたが、降り立ったターミナルは、全く見覚えの無い建物。どうやら、6月5日から新しいターミナルの運用が開始されたらしい。ドイツ人が好みそうなスタイリッシュかつ機能的なターミナルだが、個人的には旧ターミナルのコンパクトな感じの方が好みだった。

午前11時半頃、アルマ・ブティック・ホテルにチェックイン。お洒落な感じのブティックホテルだが、設備は値段相応という感じか。期待していなければ、これで十分ともいえる。ようやくWifiがつながったので、急ぎで片付けなければならない仕事を数件こなし、シャワーを浴びて、いつものレストラン、Zu den 3 Hackenへ。今回は、ウィーンを代表する料理であるシュニッツェルをあえて選んでみた。やはりこのレストランは、安定感があって、どれを頼んでも満足できる。久しぶりにウィーンに戻ってきた嬉しさのあまり、ついついワインを飲みすぎてしまう。いい気分になってホテルに戻る。

午後7時すぎ、ウィーン楽友協会大ホールへ。サイモン・ラトル指揮ウィーンフィルによる第6回ソワレ。ブラームスの交響曲第3番、ヴェーベルンの「管弦楽のための6つの小品」、シューマンの交響曲第3番「ライン」が採り上げられた。

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この日の演奏会は、特に人気が高かったようで、チケット入手は困難を極めた。代理店経由で筆者の確保できた座席は、Orchestra Rechtsの1列目。舞台上の席で、目の前にホルンセクションが並ぶ。ホルンのベルから発せられる音が直撃するため、音楽鑑賞には全く向かないが、ウィーンフィルの楽員らの呼吸を間近に観察できるという意味で、筆者にとっては大変勉強になる機会となった。

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プログラム前半は、ブラームスの交響曲第3番。第一楽章提示部を過ぎたあたりから、舞台上の座席という特殊空間に耳が慣れ、いろいろなことが見えるようになった。

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ウィーンフィルの場合、オーケストラ全体が一つの生命体のように感じられるのが特徴的だが、これが非常に活き活きと感じられるのは、オーケストラ全体、各セクション、個々のプレーヤーというそれぞれのレベルで、呼吸のタイミングが完全に整合しているからだということに気付かされた。なお、ここでいう整合とは、誰かの指図により人為的に創り出されたものではなく、個々のプレーヤーの自由な営みの積み上げという偶然の結果として生じているものだが、その結果自体は、音楽に対する共通認識を前提とした必然の産物である。首席奏者らから視覚的なアインザッツが出されることは皆無なので、一見すると各自が勝手にやっているようにも映るが、舞台上で観察していると、個々の奏者から絶えずオーラが滲み出ていて、お互いにそれを察しながら音楽を組み上げていくプロセスが手に取るように分かった。室内楽の拡大版とは、こういうことをいうのであろう。今回は目の前にホルンセクションが並んでいたため、筆者の意識も自ずとホルンセクションに向かったが、裏打ちや和音の入れ方一つをみても、舌を巻く妙技の連続であった。

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なお、ラトルの指揮に関しては、根底に流れるのは、オペラ振りとしてのセンスだろうか。タクトの隅々まで音楽が詰まっているし、フレーズの運び方もうまい。盛り上げるポイントをよく心得ており、特に、ブラームスの両端楽章では、終盤で絶妙にギアーをチェンジし、ウィーンフィルのスイッチをオンにした。こういうときの反応とセンスの良さは、国立歌劇場での活動をベースとするウィーンフィルならではといえる。個々の奏者の技術的なキャパシティが大きいので、スイッチが入っても、音が荒れることは一切ない。響きの中に熱気が凝縮しているという感じだろうか。ともあれ、ラトルは、他の巨匠らと比べると、あまり存在感のあるタイプではないが、ウィーンフィルの音楽を邪魔しないという意味で、彼らにとっては、むしろ好都合な仲間の一人と認識されているのかもしれない。あれこれと動き回るラトルを醒めた目で見つつ、あくまでも彼らの音楽を堅持しようとするウィーンフィルの存在感が妙に印象的であった。

もっとも、ラトルの解釈やテンポ設定には一貫性を欠くように感じられる部分もあり、構成面で違和感を覚える箇所もあった。例えば、第一楽章の展開部に入ったあたりで、急にテンポを加速させたが、流れが唐突であったため、内声部が置いてきぼり。また、第一楽章の再現部前の移行部をゆっくりなテンポにするため、その直前で無理やりテンポを引き延ばした数小節があったが、そこでもホルンセクションは困惑の表情を示していた。裏拍まで緻密に書き込まれているブラームスの作品では、テンポ変化にも周到なアウフタクトが求められる。問題が生じた箇所では、ラトルからホルンセクションや中低弦に対して視線が投げかけられることがなかったため、オーケストラ側からも疑問符が投げかけられていたように感じられた。

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プログラム後半の一曲目は、ヴェーベルンの「管弦楽のための6つの小品」。こういった現代作品になると、ラトルのセンスが光る。キレの良さと響きの鮮明さは、舞台上でも存分に堪能できた。第四曲において、金管セクションが魅せた、究極のピアニシモから壮絶のフォルティシモへの変容ぶりは、この日の白眉の一つといえる。金管セクションの並々ならぬ気迫を肌で感じられただけでも、筆者としては大満足であった。

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続いて二曲目は、シューマンの交響曲第3番「ライン」。充実した演奏であったと思われる。断片的フレーズの集積といった側面の強いシューマンの場合、ラトルとウィーンフィルのコンビは、非常に相性がよい。ブラームスにおいて見受けられたような齟齬は、シューマンでは一度も感じられなかった。

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ところで、この作品は、普通に演奏すると、シューマンのオーケストレーションの問題が次々と露呈してしまい、出来そこないの油絵のようになってしまう。そのため、音量のバランスを恣意的に調整したり、リズムを際立たせたりと、試行錯誤が色々と試みられているが、ウィーンフィルによる生演奏を体験してしまうと、そういった試行錯誤が陳腐なものに思えてならなくなる。楽曲の構成を十分に理解し、それに関する共通認識が確立されていれば、変な細工をしなくても、色彩感にあふれるシューマンサウンドが生まれる。ウィーンフィルの独壇場である。

全五楽章のうち、第三楽章では、筆者の目の前に陣取る3番4番ホルンが全休であったため、ようやく本来の音楽鑑賞をすることができた。弦楽器と木管楽器のコラボレーションが美しすぎて、筆者の心は瞬殺であった。また、第四楽章の弦楽器のピアニシモで、コンサートマスターのライナー・ホーネックが本気モードを一瞬窺わせたのを受け、オーケストラ全体の緊張感が一気に高まり、舞台上の響きが純度の高いものへと昇華した様子は、今でも脳裏に焼き付いている。

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終演後は、ケルントナー通りをプラプラ歩き、途中でシュプリッツァーを立ち飲みしつつ、ホテルに戻る。翌朝も早いので、この日はそのまま就寝。

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(公演情報)

Wiener Philharmoniker
Donnerstag, 14. Juni 2012 19:30

Interpreten:
Wiener Philharmoniker
Simon Rattle, Dirigent

Programm:
Johannes Brahms
Symphonie Nr. 3 F - Dur, op. 90
Anton Webern
Sechs Orchesterstücke, op. 6; Fassung 1928
Robert Schumann
Symphonie Nr. 3 Es - Dur, op. 97 ("Rheinische")
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[2012/06/21 21:43] | 海外視聴記(ウィーン) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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