ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 |
欧州行き(12年6月)②―ノセダ指揮ミラノスカラ座「ルイザ・ミラー」
6月15日午前6時前にホテルをチェックアウトし、空港へ。OS511便にてミラノ・マルペンサ空港へ。到着後は、マルペンサ・エクスプレスにてミラノ中央駅へ向かう。午前10時すぎに、宿泊先であるクオリティ・ホテル・アトランティック・ミラノにチェックイン。このホテルは、昨年のミラノ訪問時にも滞在したが、利便性と使い勝手とコストパフォーマンスの良さから、一人で過ごすには十分なレベルにある。

しばし仮眠の後、お昼過ぎに、ポルタ・ヴェネツィア駅近くのレストラン、カラルーナへ。前菜を数点取り分けてもらい、サルディーニャ料理の定番であるウニのリングイネと手長エビのグリルをいただく。海の香りがソースと絡み合うウニのリングイネの美味しさに感激。一緒に出されたフォッカッチャがこれまた美味で、ついつい手が出る逸品。小奇麗な大衆食堂といった雰囲気で、サービスもよく、愉しくランチを愉しむことができた。

午後6時すぎ、ミラノで一番美味しいといわれるピッツェリア、スポンティーニへ。分厚いフカフカのマルゲリータのみを供するピッツェリアで、地元客にも観光客にも大人気のお店である。開店早々であったため、待たずに入ることができ、数分後に注文した普通盛りサイズのマルゲリータが出てきた。第一印象は、とにかく大きい。トマトソースとモッツァレラとアンチョビのコンビネーションは最高で、最初の数口は美味しかったが、ランチを食べ過ぎたこともあり、途中でギブアップ。隣で痩せ型のご婦人がお皿からはみ出るほどの大盛りサイズをニコニコしながら食べていたのを見て、戦意喪失しつつ、店を後にした。

そして、午後7時半すぎ、スカラ座へ。ジャナンドレア・ノセダ指揮によるヴェルディ「ルイザ・ミラー」。6月6日に初日を迎えた今シーズンのプレミエである。この日は、Aキャストによる上演で、豪華キャストがラインナップしていたが、ロドルフォ役が予定されていたマルセロ・アルバレスが降板し、Bキャストでこの役を務めるピエーロ・プレッティが代役を演じた。

20120615-01

20120615-02

筆者の座席は、Palco n. 10 ORD.IIIの1列目。中央上手側だが、舞台が見切れることはなく、視覚的には適度であった。馬蹄の3層目ゆえ、音響的にも悪くはない。

20120615-03

上演の方だが、この日は、ミラー役のレオ・ヌッチの輝かしい歌唱と存在感、これが全てであった。第一幕のアリアからパワー全開。立ち姿のみで全てを語る演技力にに脱帽である。第三幕のルイザとの二重唱は、この日の上演のクライマックスであった。特に、ルイザの手紙を発見した際にミラーが見せる父親の絶望感は、重かった。ヴェルディの思い描いた父親像をこれほどまでに完璧に体現できる歌手は、他にいないだろう。幕切れの直前でやや失速気味になったが、70歳を迎えた巨匠の体当たり的な歌唱と演技に、劇場内からは熱い賛辞が送られた。

20120615-05

もう一人、気を吐いていたのは、ロドルフォ役の代役を務めたプレッティ。開演前にアルバレス降板がアナウンスされた際、劇場内は深いため息に包まれたが、そんな懸念を吹き飛ばす素晴らしい出来。後半は尻上がりに調子を上げ、幕切れはプレッティの独壇場であった。

ヴルム役のユン・クヮンチュル、ヴァルター役のヴィタリ・コワリョフ、フェデリカ役のダニエラ・バルチェッローナも、安定した歌唱と演技で十分に満足できる水準にあったが、ヌッチ様を前にすると、存在感が霞んでしまう。ちょっと可哀そうな気もした。

他方、ルイザ役のエレーナ・モシュクは、ルイザの内面の葛藤を多彩な表情で描き分けていた点は高く評価できるが、歌唱面、特に高音部の不安定さが気になった。調子が万全ではなかったのかもしれない。

というわけで、キャスト陣に関しては、スカラ座の名に恥じない立派な仕上がりであった。

20120615-08

問題は、ノセダの指揮である。

ノセダの指揮に関しては、2010年7月のトリノ王立歌劇場の日本公演「椿姫」で経験済みであり、暑苦しい指揮姿と執拗に煽りまくるテンポ感が良くも悪くも特徴の一つであることは、事前に認識はしていた。しかし、今回のような指揮振りだと、文句の一つや二つは言いたくなる。

20120615-04

第一の問題は、アレグロのテンポ感の欠如。ノセダは、アレグロになると、船を漕ぐようなアクションで執拗にテンポを煽る。そのため、時間軸の中に「遊び」がなくなり、ただ単に突進しているように聴こえてしまう。無論、歌手にブレスをする暇はなく、基本的に置いてきぼりになる。全幕を通じて、ノセダ風の煽りがプラスに働いたのは、第三幕終盤のルイザとロドルフォの二重唱におけるアレグロ・アジタートの箇所くらい。その他の箇所では、音楽が上滑りしてしまい、ヴェルディの意図した本来の効果は、およそ生まれてこなかった。初期から中期のヴェルディでは、エネルギーの爆発が随所に登場するが、だからといって、テンポを煽りまくればよいというものではないだろう。フォルテも音が荒れて汚いし、4拍子が全て2拍子に聴こえてしまっていたのも、大いに問題。

第二の問題は、刻みにおけるリズム感の欠如。レガートなフレーズに大きな起伏を持たせるアプローチは、アイデアとしては面白いし、それ自体は何ら有害ではない。にもかかわらず、チグハグに聴こえる箇所が多かったのは、レガートなフレーズとその旋律の背後で堅実に刻み続ける中低弦やホルンセクションとの関係が整理できていなかったからと推察される。刻みが書き込まれている箇所では、フレーズに歌心を注ぎ込むにしても、テンポ感が弛緩しないように注意する必要がある。一定の厳格な時間軸の中にフレーズを流し込むという意識が薄かったようだ。また、場面によって、音が長かったり短かったり、響きが丸かったり荒かったりと、刻みのパートにおける奏法上の一貫性の無さも、全体の構成の弱さを助長していた。

さらに問題なのは、音楽の組立てがシンフォニックな方向に傾きすぎていたこと。そもそもヴェルディの作品では、台詞調の箇所も多く、歌詞の内容や舞台上の演技の都合により、ちょっとした揺らぎが入ることが予定されている。それゆえ、オーケストラだけで一つの管弦楽作品のように演奏されてしまうと、歌手は手足を縛られた状態での歌唱を余儀なくされ、ぎこちなさが倍増してしまう。また、オーケストラ側としても、歌手に合わせるためには、いったん創り込まれた流れを断ち切って、再度の調整が必要になるため、瞬時の反応が難しくなる。ベートーヴェンやチャイコフスキーなら、ノセダのような表情付けでもよいかもしれないが、ヴェルディに関しては、逆効果と感じた。ノセダのベースに流れるのは、オペラ指揮者としての柔軟性よりも、シンフォニー指揮者としての統率力なのだろう。全体を通じ、オーケストラの方ばかりを向いて指揮する時間が非常に長かったが、歌手に対してあまり関心がないのではなかろうか。

20120615-07


演奏自体を客観的にみれば、個々のポーションに関しては、音色の創り込みの点で関心させられる部分も多かったし、ヴェールのようなきめ細かい響きや、腰の据わった弦楽器の音圧など、さすがスカラ座といえる箇所も見られたが、全体としては、あまりに行き当たりばったりで、方向性がバラバラなため、スカラ座の備えているであろう本来の力は、完全に空振りであった。

20120615-06

マルトーネの演出は、舞台の前方にベッド等の小物を置き、舞台の後方に森をイメージさせる木々を配するものだが、セットありきの演出プランで、可もなく不可もなくという印象。ハッとさせられるような瞬間はなかった。また、音楽的に舞台上で静寂を保って欲しいところで、合唱が無造作に足音を立てて移動する場面が何度かあり、それにより舞台全体の緊張感が殺がれていたのも問題であった。

この日は、申し分ないキャスト陣を配したスカラ座によるヴェルディ上演にもかかわらず、空席が多かった。加えて、昨年7月の訪問時と比べると、さらに観光客の割合が高かったように感じた。上演中も私語やフラッシュ撮影が止まず、緊張感が削がれる。イタリア国内の歌劇場に関しては、どこも経営難に陥っているが、この日の風景は、近時のスカラ座の運営面での迷走ぶりを露呈するものであったように感じた。

20120615-09

201206015-10

終演後は、ホテルに戻り、仕事のメールをチェックするなどして就寝。

20120615-11

20120615-12


(公演情報)

Luisa Miller
Giuseppe Verdi
New Teatro alla Scala Production

15 June 2012

Direction
Conductor / Gianandrea Noseda
Staging / Mario Martone

Cast
Il conte di Walter / Vitalij Kowaljow
Rodolfo / Marcelo Álvarez
Federica / Daniela Barcellona
Wurm / Kwangchul Youn
Miller / Leo Nucci
Luisa / Elena Mosuc
Laura / Valeria Tornatore
Un contadino / Jihan Shin
スポンサーサイト
[2012/06/21 22:10] | 海外視聴記(ミラノ) | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<欧州行き(12年6月)③―フリューベック・デ・ブルゴス指揮ウィーン交響楽団「皇帝&ローマの噴水・松」 | ホーム | 欧州行き(12年6月)①―ラトル指揮ウィーンフィル「シューマン&ブラームス他」>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://mashi1978.blog97.fc2.com/tb.php/127-4305d750
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

mashi1978

Author:mashi1978
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。