ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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欧州行き(12年6月)⑤―バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリン「モーツァルト&ブルックナー」
6月17日午前10時すぎ、ホテルをチェックアウトし、ウィーン楽友協会大ホールへ。ダニエル・バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリンによる連続演奏会の最終日。モーツァルトのピアノ協奏曲第23番とブルックナーの交響曲第9番が採り上げられた。彼らは、この一週間、ウィーン楽友協会大ホールにおいて、ブルックナーの交響曲を第1番から第9番までを全て演奏するという偉業に挑んでいた。

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筆者が代理店経由で確保した座席は、1.Balkon-Loge Rechtsの1列目。目の前には、輝かしいオルガンがそびえる。実はこの場所は、ウィーン楽友協会大ホールの場合、最高の座席の一つといえるかもしれない。舞台上の音がオルガン伝いに天井に昇ってゆくところをダイレクトに捕えることができるため、適度にブレンドされた輝かしい音色をそのまま全身で浴びることができる。舞台もよく見渡せるし、申し分ないポジションであった。

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プログラム前半は、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番。前座と思って甘く見ていたら、バレンボイム先生にいきなり引っ叩かれたといった感じだ。弾き振りをするバレンボイムは、まるでモーツァルトのようであった。

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第一楽章は、ドイツ風のかっちりとした造りだが、この一週間で、ウィーン楽友協会大ホールの響きに慣れ親しんだためか、ウィーン風の柔らかさやしなやかさ、さらには明るいフレーズの流れも感じられる。弾き振りをするバレンボイムと、これに呼応しつつも自主的なアンサンブルで独奏とコラボレーションするオーケストラの関係は、この作品の理想的な演奏形態の一つといえる。舞台上で繰り広げられる駆け引きや協調が見物であった。

第二楽章は、晩年のモーツァルトの想いや悟りを語るような哲学的世界。純度の高いピアニシモの響きは、もはや神の領域である。息を呑む瞬間の連続であった。

そして、アタッカで入った第三楽章は、雰囲気をガラッと変え、水が勢いよく噴き出すような、そんなとても刺激的なアレグロ・アッサイ。スリリングすぎて、開いた口が塞がらない。

モーツァルトのピアノ協奏曲を、これだけ完璧に、かつアグレッシブに演奏できるコンビは、今日では、他に探すことはできないのではなかろうか。バレンボイムの独奏は、衰えるどころか、ますます進化しているようにも感じられる。鍵盤楽器であるにもかかわらず、音符と音符の間が響きで充填され、次のフレーズへとつながっていくのは、いったいどういう仕掛けになっているのだろうかと思わずにはいられない。シュターツカペレ・ベルリンも、緻密な響きで時間軸を埋めるとともに、室内楽の延長としてのオーケストラをキチンと実践。細部までよく目が行き届いており、音色も磨かれている。オーケストラとしての基礎力の高さと音楽的な豊かさを垣間見た気がした。

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爆発的な拍手によりプログラム前半が終了し、いよいよプログラムは、ブルックナーの交響曲第9番へ。

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この一週間の集大成が聴けたようだ。凄まじい演奏であった。

芝居がかったバレンボイムの解釈に関しては、賛否両論あり得るだろうが、一人の聴衆の立場からは、この作品を素材とし、ウィーン楽友協会大ホールという最高の舞台で、オーケストラの醍醐味をこれだけ存分に愉しませてもらえれば、その解釈の正当性がどうであれ、大満足である。

第一楽章は、大きく構える部分と、畳み掛けるように運ぶ部分とを色分けし、緩急をつけたメリハリ付けを行うが、この日聴いた限りでは、作為性を感じることはなく、違和感は覚えなかった。後半では、ワーグナーの影がどーんと落ちてくる場面もあり、ブルックナーの有する多面性を窺うことができた。

第二楽章は、スケルツォという言葉の原点に立ち返った演奏スタイルで、フォルテの衝撃的な迫力は期待通りだが、加えて、軽妙なフレーズの数々において、モーツァルトが顔を覗かせたようにも感じられた点が興味深かった。

第三楽章は、スケールの大きな荘重な音楽で、精神性や神秘性というよりも、現代人が心の内側に抱える様々なものを代弁するかのような力強さが感じられた。何よりも、一つひとつの和音に対する楽員全員の想いのこもり方が半端ではなかった。

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客観的にみても、非常に高水準な演奏だったといえる。シュターツカペレ・ベルリンは、フォルテの響きが超重量級。バレンボイムが振ると、その威力は何倍にもなる。ホールが壊れるのではないかと思うほどの振動だったが、音が荒れたり、外面的にならないところが素晴らしい。また、中低音域の押出しの強靭さも、魅力の一つ。男女問わず、全身で弾き込む弦楽器セクションは、背後から眺めていても圧巻であった。

もちろん、迫力のみではない。息の長いフレージングには隙がないし、音色に関しても、華がそれほどあるわけではないが、細かいところまで丁寧に磨かれていて、キメの細かいフレージングが地味に光る。

彼らの絶好調を引き出したウィーン楽友協会大ホールに感謝である。

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プログラム前半もそうだったが、この日は、最初から最後まで、演奏に釘付けにさせられた。ライブの高揚感に心底浸ることができた。

カーテンコールでは、嵐のような拍手とブラボーの大合唱が舞台上に送られた。バレンボイムは、今回も舞台上の一人ひとりと握手しながら、楽員全員を称える。こういう姿に関しては、斜に構えて苦言を呈するのではなく、素直に共感すべきと感じた。

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終演後は、シュプリッツァーを片手にカルパッチョをつまみ、Wein & Coの立ち飲みカウンターで赤ワインを一杯。Zu den 3 Hackenで飲んで気に入ったSt. Laurenの赤ワインのボトルを一本購入し、ホテルで荷物をピックアップして空港へ。

LH2331便にてミュンヘンへ飛び、最後の一仕事を済ませた上で、NH208便にて帰国。幸いにもプレミアム・エコノミーにアップグレードしてもらえた。わずかな差ではあるが、エコノミーと比べると居住空間は広く、疲労度は少なかった。成田には翌日午後3時に到着。いったん帰宅し、夕方職場へ向かい、残務を処理する。結局のところ、空き時間は常に仕事をせざるを得なかったが、そのような中でも、無理やりウィーンに飛んでよかったと感じる今回の旅程であった。

(公演情報)

Staatskapelle Berlin
Sonntag, 17. Juni 2012 11:00

Interpreten:
Staatskapelle Berlin
Daniel Barenboim, Dirigent und Klavier

Programm:
Wolfgang Amadeus Mozart
Konzert für Klavier und Orchester A - Dur, KV 488
Anton Bruckner
Symphonie Nr. 9 d - Moll, WAB 109
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[2012/06/21 23:20] | 海外視聴記(ウィーン) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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