ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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広上指揮読響―第517回定期演奏会「バルトーク&R.コルサコフ」
7月12日午後7時前、サントリーホールへ。広上淳一指揮読売日本交響楽団による第517回定期演奏会。武満徹「トゥイル・バイ・トワイライト」、バルトークのヴィオラ協奏曲、リムスキー=コルサコフ「シェエラザード」が採り上げられた。

座席は、いつもの指定席である1階席通路より少し前のセンター。先月分は、欧州行きと重なったため、今月のサントリーホール名曲シリーズに振り替え済みである。

プログラム前半一曲目は、武満徹「トゥイル・バイ・トワイライト」。読響の創立25周年を記念する委嘱作品として書かれたとのこと。3管ないし4管の巨大編成が舞台上を埋め尽くす。

聴きやすく、きれいにまとめられており、その点では広上のバランス感覚が光っていたといえる。ただ、グッと心が捉えられるような瞬間は訪れなかった。作曲者自身によれば、「まさに日没後の夜へ向かう瞬時の輝きを表現している」とのことだが、この日の演奏では、響きの掘り下げが不足していたように感じられた。もっとも、いま振り返ると、導入としてはなかなかよいスタートであったと思う。

プログラム前半二曲目は、ベルリン・フィルの首席奏者である清水直子を独奏に迎え、バルトークのヴィオラ協奏曲。この日の演奏会の目玉の一つである。

清水の独奏は、音色のきめが細かく、色合いも多彩。細部まで丹精に磨かれており、女性的なしなやかさや瑞々しさが引き立っていた。「時には暗く、時には温かく、画家がいろいろな色を紡ぎだすように、様々な音色をもっともっと追求していきたい」と語る彼女の姿勢そのものであった。音が天井に抜けてしまったためか、筆者の座席では、音量面でのパワー不足を感じたが、それでも、ヴィオラという楽器の持つ新たな一面を垣間見た気がした。とりわけ印象的であったのは、第二楽章。あまりの美しさに、しばし心を奪われた。神秘的な雰囲気を醸し出すオーケストラとともに、広大な黄昏の美しさが舞台上から立ち上がったように感じられた。

オーケストラの集中度も高かった。1stヴァイオリンを5プルトにまで減らしたオーケストラからは、室内オーケストラ的な響きのまとまりが感じられる。この作品に描かれた室内楽的な要素が十二分に浮かび上がっていた。オーケストラ自体の呼吸も感じられ、「伴奏」ではなく「協奏」が実現していた点は、特筆ものである。広上のタクトの巧さを感じた。

独奏者もオーケストラプレイヤーということもあり、オーケストラとの間で心が通ずる部分も多々あったのだろうか。最晩年のバルトーク作品に秘められた可能性に迫るスリリングな演奏を通じ、舞台上は不思議な一体感で結ばれていた。澄み渡るトワイライトの輝きは、この作品において見事に花開いた。

アンコールは、バルトークの「44の二重奏曲」から21番「新年の挨拶」と38番「ルーマニアンダンス」。読響首席の鈴木康浩との共演である。二人の音色のキャラクターの違いに苦笑いさせられたが、飾らない立ち振る舞いの清水に対し、ホール内からは最後まで温かい拍手が送られた。

休憩を挟み、プログラム後半は、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」。

こういう作品では、オーケストラから伸びやかさと自発性を存分に引き出す広上のタクトが冴えわたる。明るい歌心に満ちたフレーズ処理や、響きの奥行きに関しては、申し分ない。サントリーホールの舞台上で、これだけの遠近感を愉しめるとは、想像もしていなかった。旋律では個々のプレイヤーを自由に泳がせつつ、要所ではビシッと引き締め、完璧なバランスの下で、読響の個性を全開させた広上のタクトは、さすがである。例によって、第一楽章冒頭や第四楽章末尾における木管楽器の音程の不安定さに、若干幻滅させられたが、独奏が織りなす中間部では、そういった弱点もあまり目立たなかった。

コンサートマスター小森谷の独奏は、折り目正しいキリッとしたテイストで、筋が通っている。そんな小森谷に漲る気合いと緊迫感は、すぐさまオーケストラ全体によって共有され、「チーム読響」の連帯感と底力が相乗的に増幅されていった。このムードは、他のオーケストラではまず現れない。読響の特長の一つである。観ていて幸せな気分になれるのが何よりも嬉しい。

欲を言えば、第一楽章の波を象徴する分散和音の動機につき、動き始める前に何らかのオーラが欲しかったが、航海に対する日本人のリズム感に照らすと、こういう響きに落ち着いてくるのかもしれない。

カーテンコールは、前半と同様、温かい拍手に包まれた。こういう演奏会では、終演後の雰囲気もとても和やかである。この日の東京は、最高気温27度とそれほど高くはないものの、西日本に記録的大雨を降らせている低気圧の影響を受け、朝から強風が吹き荒れ、湿度も高かった。しかし、そんな真夏の蒸し暑さを忘れさせるような、来て良かったと素直に感じられる満足度の高い演奏会であった。


(公演情報)

第517回定期演奏会
2012年7月12日(木) 19:00開演
会場:サントリーホール

指揮=広上淳一
ヴィオラ=清水直子

武満 徹:トゥイル・バイ・トワイライト(読響1988年 創立25周年記念委嘱作品)
バルトーク:ヴィオラ協奏曲
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」作品35
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[2012/07/13 01:12] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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