ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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カリニャーニ指揮読響―第551回名曲シリーズ「サン=サーンス3番ほか」
7月23日午後7時前、サントリーホールへ。パオロ・カリニャーニ指揮読売日本交響楽団による第551回サントリーホール名曲シリーズ。6月の定期演奏会からの振替分である。定期演奏会と比べると、客席内の騒音が多いのがやや気になる。

この日は、サン=サーンスを主軸に据え、生誕150年を迎えるドビュッシーの作品を加えたフランス名曲プログラム。チケットは完売で、客席は9割以上は埋まっていた。

座席は1階6列右端。管打楽器は峠の向こう側から聴こえてくるかのような距離感だが、弦楽器は予想以上にまとまって聴こえる。読響らしい厚みのある弦楽器サウンドに、ステージ周囲の壁からの反響が伴うことで、適度な臨場感と風呂場効果がミックスしたかのような不思議な音響であった。

プログラム前半一曲目は、ドビュッシー(ビュッセル編)の「小組曲」。言わずと知れた超名曲である。

カリニャーニは、編成を絞った読響から、繊細で純度の高いサウンドを引き出した。響きに対するカリニャーニのセンスは確かだ。「小」組曲という名称に相応しく、小気味よくまとめたあたりも、ポイントが高い。各旋律の語尾におけるフランス語風な揺らぎにはおよそ関心を示さず、また、第四曲「バレエ」のリズム感がイタリア風になるなど、カンブルランが醸し出す色彩的な艶やかさとは世界が異なるが、音楽的な完成度は高かった。なお、この日はコンサートマスターの席に、ゲストとして三上亮が座ったが、その優等生的なリードは、読響の弦楽器セクションとしっくりきていないようにも感じられた。

続いて演奏されたのは、サン=サーンスの「ハバネラ」と「序奏とロンド・カプリチオーソ」。独奏を務めたのは、若手ヴァイオリニストの南紫音。

南のサウンドには前向きなパワーが漲っており、サントリーホールの空間によく響いていた点に感心させられた。技巧的な箇所をバリっと決め、旋律に艶麗なタメを混ぜるあたりには、余裕すらも感じさせる。安定感は抜群であり、今回の2作品に関しては、なかなか聴き応えのある演奏に仕上がっていたといえる。

ただ、手放しに賞賛できるわけではない。例えば、技巧的なパッセージにおける音の硬さは、日本人によく見受けられる問題の一つであるが、もう少し楽に響かせた方が結果的に音が飛ぶのではないかと感じた。また、歌回しやイントネーションがいかにも日本人風であり、その表情がワンパターンであるように感じられたのも問題。これは、フランスらしさを頭で理解し、真似しようとした際によく陥る状況であり、筆者自身にも経験があるが、例えば、身体から自然に発せられるフランス語のイントネーションは、日本人が感じる音の重心よりもだいぶ前にあり、そのあたりを理屈ではなく感覚で捉えられるようになると、音楽が化けるかもしれない。

なお、オーケストラは、これら2作品では完全に伴奏役であったが、弦楽器によるロンド・カプリチオーソの鼓動がヴェルディ風であったのは、無意識であろうが、個人的にはツボであった。

休憩を挟み、プログラム後半は、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」。イタリア人のセンスと読響の力強さがマッチした興味深い演奏であった。

第一楽章は、足腰のしっかりしたサウンドで、堅実な造り。バランスのコントロールに破綻がなく、安定感があった。個々の旋律にもう少しカンタービレが注ぎ込まれると、うねるような抑揚が湧き上がると思われるが、カリニャーニの意図するところではなかったようだ。

音楽が大きく羽ばたいたのは、第二楽章の冒頭部分。オルガンに導かれ、オーケストラの想いの詰まったポコ・アダージョが始まると、色々な情景が瞼の奥に浮かんでくる。そのまま浸っていたかったが、中盤では響きに雑味が混じったことに加え、終盤ではイタリア語の子音のように弾ける伴奏型が強調されたため、いつの間にか現実に引き戻されていた。

第三楽章は、第一楽章と同様だが、各セクションの譜面の難易度が上がったことに伴い、音の凝縮度が弱まり、やや残念な印象。管楽器の音価がバラバラであったのは、予想されたとはいえ、さすがにがっかりであった。

第四楽章は、堂々とした演奏で、悪くはなかったが、ちょっと落ち着きすぎていたかもしれない。随所に顔を出すイタリア的な拍動感が、新鮮さを生み出す反面、流れのスムーズさを阻害しているようにも感じられた。また、クライマックスになだれ込むテンポ設定に関しては、カリニャーニ自身の中に若干の迷いがあったようにも見受けられた。この作品に関しては、筆者の中では、2009年11月に大野和士指揮フランス国立リヨン歌劇場管を鑑賞をした際、身体の中の全細胞が感化され、居ても立っても居られないほどの興奮に襲われたという記憶が鮮明に残っているため、この日の演奏については、物足りなさを感じずにはいられなかった。もっとも、このあたりは好みの問題なので、これ以上は言及しない。なお、地味な箇所ではあるが、第四楽章の開始直後で、弦楽器と連弾ピアノが織りなす情景の部分は、澄み渡った湖面に明るい朝日が差し込んでキラキラと反射するかのような美しい仕上がりで、素晴らしかった。

万雷の拍手に応えて演奏されたアンコールは、プッチーニの「マノン・レスコー」から間奏曲。

ここにきてようやくカリニャーニのイタリア人の血が騒ぎ出した。冒頭の弦楽器の独奏が肉食系であったのは、意外であったが、ともあれ、カリニャーニは、水を得た魚のように、自由自在に、そして体当たり的に、曲に入り込み、読響の弦楽器セクションから、イタリアの歌心をドラマチックに引き出した。少なくともカリニャーニの指揮からは、「マノン・レスコー」の台本に描かれた人間模様の数々が滲み出ていた。この日のメインは、実はアンコールにあった模様。余韻からアメリカの荒野がイメージできないとか、旋律以外のパートに苦悩が窺われず音色が能天気すぎたなど、細かいことを言い出せばきりがないが、シンフォニーオーケストラのアンコールにそれを求めるのは、酷かもしれない。

カリニャーニが指揮をするプッチーニを観たいという衝動に駆られつつ、帰路についた。


(公演情報)

第551回サントリーホール名曲シリーズ
2012年7月23日(月) 19:00開演

会場:サントリーホール

指揮=パオロ・カリニャーニ
ヴァイオリン=南紫音

ドビュッシー:小組曲
サン=サーンス:ハバネラ 作品83
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ 作品28
サン=サーンス:交響曲 第3番 ハ短調 作品78 「オルガン付き」
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[2012/07/24 00:47] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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