ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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欧州行き(12年8月)②―ハーディング指揮マーラーチェンバーオーケストラ「シューベルト&シューマン」
8月9日、午前8時すぎにホテルを出て、ゴンドラでピラトゥスを目指す。山肌には氷河の痕跡が荒々しく刻まれており、自然の雄大さにしばし心を奪われる。帰路はピラトゥス登山鉄道にて下山。筆者は朝早い出発であったため、合計5時間程で順調に往復できたが、正午の時点で地上駅には長蛇の列ができていて、かなり混み合っていた。

夕方7時前、カルチャー&コングレスセンター(KKL)へ。ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラによる演奏会。シューベルトとシューマンの合唱曲が採り上げられた。

この日の座席は、昨日よりも6列後方のParkett rechtsの12列目右端。舞台から離れた分、音のバランスは良くなったが、紗幕の向こう側で演奏しているのを鑑賞しているかのような若干の遠さが感じられた。

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プログラム前半一曲目は、シューベルトの「水上の精霊たちの歌」。「人間の魂は、水に似ている(Des Menschen Seele Gleicht dem Wasser)」という一節により開始されるゲーテの詩に基づく合唱曲で、男声合唱と中低弦のみにより演奏される。岩壁から一筋の水が流れ落ち、湖へと至る流れに、人間の魂を重ね合わせたこの作品は、「水のいのち」の欧州版とでもいえようか。

バイエルン放送合唱団の男声合唱は、安定感のあるソフトな語り口で、厳粛さの中に人肌の温もりを微かに感じさせる美観が素晴らしい。無論、コーラスとしての完成度の高さは、申し分ない。ハーディングは、場面ごとの特色をきちんと描き分け、渋い響きの中から多彩な音色を引き出そうと試みており、作品に忠実な演奏を目指していた点は評価できる。

ただ、この日の演奏全般にいえることだが、ポーションの創り込みに注力した結果として、音楽的な流れが削がれる瞬間が散見されたのが残念。特にテンポのゆっくりな場面で、呼吸に推進力が伴ってこないため、停滞した印象になってしまう。前日のオープニング・コンサートと異なり、客席内の雰囲気も弛緩気味であったため、言葉と音楽の融合による感動的なクライマックスからは程遠かった。ヴィオラ6名、チェロ5名、コントラバス3名によるアンサンブルも、響きの透明度の点でパーフェクトとまではいえなかった。

プログラム前半二曲目は、シューマンの「夜の歌」。合唱、オーケストラともに、フルメンバーによる演奏である。編成が拡大したことにより、響きに華やかさが伴う。

バイエルン放送合唱団は、この作品でも、安定した合唱で、聴衆の期待に応えていた。これだけのクオリティを示してもらえれば、聴衆としては十分に満足といえる。フォルテでも、雄叫びにならず、伸びのある声が届いてくるのが素晴らしい。

ただ、上述のとおり、音楽の設計に関しては、ハーディングのアプローチは、成熟度が足りない。最も気になったのは中間部の強奏部分で、オーケストラが硬いアクセントを叩き込むため、合唱のソフトな響きと波長が合わず、テンポ感や音楽の進行に強引さが感じられた。プログラム前半一曲目と同様、個々のポーションは色々とこだわって創り込んでいることが窺えるが、例えば、ヴィブラートの掛け方一つを取ってみても、なぜそのような手法を採用するのかが見えず、全体としての統一感は薄かったように感じられた。

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休憩を挟み、プログラム後半は、シューベルトのミサ曲第6番。ミサ曲の傑作中の傑作であり、終曲Agnus Deiは、何度聴いても深い感銘を与えてくれる。

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バイエルン放送合唱団に代わって登壇したスウェーデン放送合唱団による合唱は、響きに華があり、筆者の座席にもその充実の歌声がよく届いてきた。高度なアンサンブルと抜群の安定感は、世界トップレベルの貫録を感じさせる。独唱陣も、ミサ曲に相応しい声の持ち主ばかりで、安心して心を委ねることができる。こうして一夜限りの真剣勝負の現場に立ち会えたことは、貴重な体験であったといえる。

ただ、前日の奇跡を知る者としては、どこか醒めた眼で鑑賞せざるを得なかった。最大の問題は、歌の呼吸に気持ちが乗っていかないこと。サイレンスにおける内容の詰まり方の点で、前日とは天と地ほどの違いがある。管楽器と合唱との間には、言葉を伴うかどうかという根本的な違いがあり、アプローチの仕方を区別する必要がある。オーケストラに合唱を合わせさせるのではなく、合唱の言葉にオーケストラが寄り添う方が望ましい。ハーディングの指揮は、管弦楽の延長としての完璧さを追い求めるが故に、流れをブツ切りにしてしまった嫌いがあった。

個々の楽曲の中では、音楽自体に勢いがあるSanctusとAgnus Deiの完成度が高かった。合唱とオーケストラのテンポ感が見事に噛み合い、プログラム前半で感じたような違和感は、ほとんど感じさせなかった。他方、Gloriaは、アンサンブルがウルトラC級であるため、よく整理されていたが、音楽的にはもう一歩踏み込みたいもどかしさが残った。

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なお、全体を通じ、マーラー・チェンバー・オーケストラは、ハーディングの指示に忠実に、メリハリの効いた演奏を繰り広げていたが、ハーモニーの純度の点では、微妙なブレが生じる場面があり、響きによる覚醒までは演出できていなかった。

このように、この日の演奏は、かなり高い水準ではあったが、ルツェルン音楽祭という場に鑑みると、やや物足りなさを感じざるを得ない仕上がりで、あと一歩が欲しい、そんな印象の演奏会であった。

終演後は、前日と同じく、Hotel Rebstock併設のレストランに向かう。味、サービスともに、十分満足できる安心感がある。

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(公演情報)

Symphony Concert 1
Thu, 9 August 2012 | 19.30 | KKL Luzern, Concert Hall

Mahler Chamber Orchestra
Bavarian Radio Choir (D 714, Schumann)
Swedish Radio Choir (D 950)
Daniel Harding conductor
Mari Eriksmoen soprano
Bernarda Fink alto
Andrew Staples tenor
Andrew Kennedy tenor
Franz-Josef Selig bass

Franz Schubert (1797-1828)
“Gesang der Geister über den Wassern” (“Song of the Spirits over the Waters”), D 714

Robert Schumann (1810-1856)
“Nachtlied” (“Night Song”), Op. 108

Franz Schubert (1797-1828)
Mass in E-flat major, D 950
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[2012/08/20 18:18] | 海外視聴記(ルツェルン) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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