ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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高関指揮都響―第740回定期演奏会「日本管弦楽の名曲とその源流」(松平&ベリオ)
9月3日午後7時前、東京文化会館へ。高関健指揮東京都交響楽団による第740回定期演奏会。注目シリーズ「日本管弦楽の名曲とその源流」の第16回目にあたるこの日の演奏会では、松平頼暁とルチアーノ・べリオの作品が採り上げられた。両者を比べると、作曲技法に似た部分と正反対の部分とがあり、プログラムとしての統一感と聴き手に与える刺激のバランスが良く取れた秀逸なプログラムといえる。そして、現代音楽のスペシャリスト、高関健のタクトとなれば、自ずと期待が高まる。このような企画は、今後もぜひ前向きに取り組んでほしいものである。

筆者の座席は、5階席R1列中央付近。会場内は、定期会員の欠席率が高く、空席が目立ったが、逆に、演奏中の雑音が少なく、割と落ち着いた雰囲気であった。筆者と同世代くらいの熱心な聴衆が多かったのは、喜ばしい限りである。もっとも、関係者も少なからず混じっていたであろうが。

プログラム前半には、松平頼暁の作品から三曲が選ばれた。

最初に演奏された「コンフィギュレーションⅠ&Ⅱ」は、1960年代前半に作曲された作品で、総音列主義(音楽における全ての要素を数列化し、計算によって音楽作品を形成する作曲法)の技法で書かれている。実際に耳にしてみると、コンフィギュレーションⅠでは、点描的な響きが印象的ではあり、コンフィギュレーションⅡでは、アルペジオとクラスターの交替による進行がユニークである。時代の最先端をゆくものであり、初演当時は大きな衝撃をもって受け止められたに違いない。

しかし、筆者個人としては、特に感銘は受けなかった。無論、演奏自体は、非常に高水準であった。高関のタクトは、非常に明晰で、鍵盤楽器のエコーや、アルペジオの立体感など、見事に描き出していた。ただ、その後の半世紀にわたる作曲技法の進化を知ってしまうと、響きの多様性に乏しいように感じてしまう。室内オーケストラ編成を前提とする作品ゆえ、もっと小さな会場で耳にしたら印象も異なるのかもしれないが、どこか物足りなさを感じずにはいられなかった。まあ、5階席ゆえ、文句は言うまい。

続いて演奏されたのは、「オーケストラのための螺旋」。1990年代半ばに作曲された作品で、巨大な管弦楽編成が採用されている。時代が進んだ分、響きの面白さは格段に向上したように感じられた。作曲者により、「あらゆる音色群の組合せによって、いくつもの糸がらせん状に絡まって現れる」との説明が付されているが、音色の渦巻きの流れが協和音の結び目により断ち切られる場面の反復は、システマティックな作曲法に生命が宿った瞬間であったと思われる。

ただ、この作品は、16分の演奏時間を要するが、筆者自身はどうも相性が良くないのか、後半部分でやや退屈してしまった。ピッチ・インターヴァル技法を最上のバランスで聴かせた高関&都響には、全く非がないのであるが。

休憩を挟み、プログラム後半は、ルチアーノ・べリオの協奏曲第2番「エコーイング・カーヴ」(ピアノと2つの楽器群のための)。こちらは、個人的に愉しむことができた。

そもそも、ステージ上から聴こえてくるサウンドが新鮮だ。この作品では、ステージ前方でピアノを取り囲むAオーケストラが吹奏楽のような編成であるのに対し、舞台奥に陣取るBオーケストラは弦楽器主体である。それゆえ、弦楽器と管楽器のブレンドにより描かれるオーケストラサウンドの印象がガラッと変わる。この鮮烈さは、実演でなければ感じることが難しいだろう。

また、オーケストラが描く曲線上をピアノが点線でなぞるという手法が圧倒的であった。緻密な点描画のような構成は、生々しい輪郭と微妙な濃淡を描き出し、大きなうねりをも感じさせる。ヒトの潜在意識に訴える仕掛けが満載であり、聴き手を異次元の世界へと導くパワーを兼ね備えていたように感じられた。他方で、振り返ってみると、20世紀前半の作曲家らの音色に通ずる側面も多く含まれていたようにも思われ、その構成の秀逸さに改めて感心させられた。驚異的な難易度の独奏パートを務めた岡田博美とともに、この作品の魅力を存分に引き出した高関&都響に拍手。

精神や観念ではなく、機能や運動から把握する作曲技法の場合、音像の斬新さにより、聴衆の脳内を刺激し、トリップ状態に陥らせることができるかどうかが分かれ目となると思われる。聴き手によって感じ方は区々であり、異論反論もあるであろうが、筆者個人的には、ルチアーノ・べリオの作品は、サルヴァトーレ・シャリーノの作品と同様、五感に働きかける何かを含んでいるように受け取った。

終演は午後8時30分。この日のプログラムであれば、これくらいで終わるのが丁度よい。響きの洪水の余韻に浸りつつ、帰路についた。


(公演情報)

第740回 定期演奏会Aシリーズ

2012年9月3日(月)19:00開演
会場:東京文化会館

指揮:高関健
ピアノ:岡田博美

曲目
《日本管弦楽の名曲とその源流−16(プロデュース:一柳慧)》
松平頼暁:コンフィギュレーションⅠ/Ⅱ
松平頼暁:オーケストラのための螺旋
ベリオ:協奏曲第2番「エコーイング・カーヴ」(ピアノと2つの楽器群のための)(日本初演)
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[2012/09/03 23:51] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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