ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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スクロヴァチェフスキ指揮読響―第518回定期演奏会「トリスタンとイゾルデ(オーケストラル・パッション)」
9月24日午後7時前、サントリーホールへ。スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ指揮読売日本交響楽団による第518回定期演奏会。ウェーバーの歌劇「魔弾の射手」序曲、スクロヴァチェフスキのクラリネット協奏曲、ワーグナー(ヘンク・デ・フリーヘル編曲)の楽劇「トリスタンとイゾルデ」(オーケストラル・パッション)が採り上げられた。

座席は、いつもの指定席である1階席通路より少し前のセンター。開演直前から雨模様となり、会場内の空気はやや湿っぽい。

プログラム前半一曲目は、ウェーバーの歌劇「魔弾の射手」序曲。

冒頭から驚くほど深遠で、吸い込まれていくかのような錯覚に陥る。旋律が動き始めても、表情は険しく、そして厳しい。主部では、弦楽器セクションが語気を荒げてリズムを執拗に刻み込む。ドイツの民話の素材にした森の中の物語という建付けだったはずだが、全く別物に感じられた。むしろ、トドワラの並ぶ荒涼とした北の大地の方が鳴っている音のイメージに近い。アガーテの愛が勝利する様子を描く結尾部の有名な旋律になり、ようやく活力が湧き上がり始めたが、ハッピーエンド調というよりも、巨大な大蛇が這い回るかのような光景で、何が何だかよくわからないうちに終わってしまった。ミスターSの変態ぶりに唖然。

プログラム前半二曲目は、リチャード・ストルツマンを独奏に迎え、スクロヴァチェフスキのクラリネット協奏曲(日本初演)。ミスターSの自作の日本初演である。

第一楽章の神秘的な開始に宇宙的な広がりを感ずるも、その後は、断片的なモチーフがパズルのように組み合わさる作風に頭が全く追いつかず、途中で脱落。仕事で忙殺されて疲れ切った脳には、いささか刺激が強すぎたようだ。ポーランド風の響きが色濃く出ていることを確認できただけでも、良しとしよう。

プログラム後半は、ワーグナー(ヘンク・デ・フリーヘル編曲)の楽劇「トリスタンとイゾルデ」(オーケストラル・パッション)。

この日の読響は、特に素晴らしかった。技術的な安定感と充実度が抜群のクオリティである。前奏曲冒頭のトリスタン和音が完璧に決まった時点で、既に予感はしたが、普段なら音程にブレが生じやすい管楽器セクションのハーモニーが、この日に限っては、一つひとつ見事なまでに収まってゆく。絶妙な楽器バランスにより、見通しの良い立体的な音像を構築するのは、ミスターSならではの至芸だが、60分間に及ぶ長大な管弦楽曲のモチーフの全てにまで目を行き届かせ、大人のタッチで全体をまとめあげた手腕には、心底驚かされた。4日間のリハーサルと、1回の本番を経た読響は、これだけのクオリティを示せるのである。

そして、ミスターSの描くワーグナーの管弦楽の世界は、描写性に富んでいた。伝統的な分厚いワーグナーでもなく、最近流行りのさらっとしたワーグナーでもない。むしろ、そういった恣意性とは対極にある。ミスターSは、スコアに秘められた様々な表情をバランスよく引き出すことで、個々の楽節に対して陰影のある多彩な色合いを添え、味わい深い音楽に仕上がていたといえるが、各モチーフに生命が宿り、その結果として、各情景が聴覚的に自然と浮かび上がるというのは、ワーグナーが音楽を通じて目指した姿の一つと考えられる。

この日の演奏は、ワーグナーの楽劇に馴染みのない大半の客層には、やや退屈だったようだが、今年度の読響のベスト演奏の一つに数えられる高水準の演奏であったことは間違いない。とりわけコールアングレを担当した北村さんは、今期MVPに匹敵するだろう。残念だったのは、ストーリーを理解していない一部の聴衆がここぞという場面であり得ないノイズを生じさせていたことと、幕となりミスターSがまだタクトを下していないのに1階席後方席の知ったかぶりワグネリアン1名がこれ見よがしに拍手を始めたこと。あえて苦言を呈しておきたい。

終演は午後9時10分。そのまま帰宅し、家で残った仕事を片付ける。


(公演情報)

第518回定期演奏会

2012年9月24日(月) 19:00開演
会場:サントリーホール

指揮=スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
クラリネット=リチャード・ストルツマン

ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
スクロヴァチェフスキ:クラリネット協奏曲(日本初演)
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」(デ・フリーヘル編) 
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[2012/09/25 00:38] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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