ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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スクロヴァチェフスキ指揮読響―第147回オペラシティーマチネー「ベートーヴェン2番&3番」
9月30日午後2時前、巨大台風が接近する中、オペラシティへ。スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮読売日本交響楽団による第147回オペラシティマチネーシリーズ。チケットは完売であったが、あいにくの空模様のためか、空席がパラパラと目につくやや残念な状況。

筆者が確保した座席は、3階正面の右側。オペラシティコンサートホールは、実は、3階正面が一番音響が良いとも言われるが、少なくともオーケストラを愉しむ上ではそれは正しい。豊かな残響に阻まれて、subito pのニュアンスが聞き取れないこともあるが、サントリーホールと異なり、ホールの横幅が狭いので、音が拡散しないのがありがたい。楽器間のムラが適度に補正され、一つにまとまって聞こえるというメリットもあり、響きの全体像をそれなりの臨場感で鑑賞できるという意味では、個人的には好きなポジションの一つである。

プログラム前半は、ベートーヴェンの交響曲第2番。ノーランと小森谷のダブルコンマス体制で挑んだ読響は、自信に満ち溢れた安定感の高いアンサンブルで、ミスターSの熱意に応える。

第一楽章は、序奏も主部も、引き締まったテンポで、緩むことなく、真直ぐ突き進む。胸をすくようなドライなテイストは、筆者の理想に近い。フレージングの息が長く、十分なカンタービレが花開くため、音楽的な表情も多彩である。弛緩しやすい箇所では、ミスターSが絶妙なアウフタクトを入れることにより、音楽の流れを前へと進めており、実に流れが良かった。なお、ヴァイオリンが本来はスラーで演奏する16分音符のパッセージについて、プルトの表と裏で奏法を変え、スラーと刻みを併用していたのには、かなり驚かされたが、その演奏効果は絶大であった。

第二楽章は、瑞々しいカンタービレが基調だが、陰影のコントラストが明快で、表現の幅が広い。展開部前半の静寂が後半のグランディオーソへと姿を変えてゆく過程は、見事というほかない。結尾部の名残惜しそうな表情は、これまた絶品であった。音楽的には文句なしといえるが、この楽章に関しては、1stヴァイオリンとホルンの傷がちょっと目立ってしまったのが惜しかった。

第三楽章も、とても流れがよい。軽やかなスケルツォの中に、sfが執拗に叩き込まれるが、これらに関して、ティンパニや低弦を土台にした立体的な響きが明快に鳴っていたのが秀逸であった。

第四楽章は、疾走感にあふれるアレグロ・モルト。男性的な響きと伸びやかなカンタービレが適切に配置され、目まぐるしく変化する曲想を上手に処理していたが、全体の進行を支えていたのは、内声に現れる裏打ちのリズムの軽快さである。また、展開部において中低弦に現れる妥協のないドラマチックな刻みは、非常に良い演奏効果を上げていた。

交響曲第2番は、キチンと楽譜を処理し、音楽的に聴かせることが実に難しい作品ではあるが、この日は、全楽章を通じ、ベートーヴェンらしい力強さと室内楽的な見通しの良さが最良のバランスで表現されており、ここぞというポイントでミスターSがあえて注ぎ込んだロマン的なニュアンスとも相まって、出色の仕上がりとなっていたといえる。

休憩を挟み、後半はベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。これは、前半の交響曲第2番よりも、さらに輪をかけて素晴らしかった。

第一楽章冒頭、ミスターSが想いを籠めるかのように静かにタクトを上げ、緊張感が高まるや否や、気迫の漲った二つの和音が会場内の聴衆の心に真直ぐ突き刺さってきた。この衝撃は今も脳裏から離れない。提示部のアレグロ・コン・ブリオは、交響曲第2番と同様、引き締まったテンポとリズムで、何かに憑りつかれたような疾走感が尋常ではない緊迫感を演出する。無論、全体のバランスは理知的にコントロールされており、スコア上に描かれたダイナミクスや楽曲構造が明晰に浮かび上がる。ドライな骨格の中で、息の長い旋律のカンタービレが映える。展開部は、今振り返ってみても、かなり秀逸な構成であったといえる。空模様が時々刻々と変化し、厚い雲に覆われたかと思えば、明るい陽射しが差し込んだりもする。展開部中盤のffにおけるsfの連打は、充実した響きが鳴る余裕を持たせつつも、テンポ感が全く弛緩しない。場面の切り替えしにおけるテンポ操作が実に巧みであり、これが緊張感をさらに高めることになる。再現部に入ると、提示部で感じた疾走感よりも、むしろ自信に満ちた安定感が前面に出てきた。長大なコーダは、第一主題のカンタービレと立体的なオーケストラサウンドの脈々とした流れにより有機的に結合され、ソナタ形式という楽曲構成が兼ね備える音楽的なドラマを体現させてくれたかのような充実の第一楽章が幕を閉じた。

第二楽章は、内容が深すぎて、いまだに頭が整理しきれない。引き締まった表情で動き出した葬送行進は、小節ごとに重みを増すコントラバスの足音により、数小節も経たないうちにその足取りを止められてしまう。対旋律がチェロに移ると、完全な死が暗示される。長調の主題は、息の長い明るいカンタービレで描かれるが、どこかに死の緊迫感と悪魔の囁きが見え隠れする。劇的なフーガは、出だしは抑制を効かせつつ、徐々に中身を詰めてゆき、一番のクライマックスで、ロマン的な濃厚さと宇宙的な広がりを演出。主部に戻り、いくつかの感情の爆発を伴いつつ、音楽は徐々に遠ざかってゆき、コーダでは、全てが完全に息を引き取っていた。目の前がくらくらする中、楽章が終結した。

さて、第三楽章が始まり、急に現実に引き戻されたかのような錯覚に陥る。過去の英雄が死亡し、次の世代が勝利に向けて走り出す、そんな場面が想起させられた。シンプルで緩みのないアレグロ・ヴィヴァーチェで終始一貫していた。

そしてアタッカで始まった第四楽章は、堂々としたフィナーレ。とても前向きで若々しい。かといって、音色に粗さはなく、音楽的な格調の高さは抜群である。低弦の踏ん張りが効き、腰の据わったサウンドがミスターSの男性的なベートーヴェン像を後押しする。たまに出現する静寂で、ちょっと醒めた表情を覘かせつつも、すぐに場面を切り替え、明るいフレーズへと寄り添うセンスには、脱帽である。また、オーボエに始まるPoco Andanteを抒情的にしすぎず、一つの変奏として捉えるとともに、コーダ前の限りない静寂へと導いたのにも感銘を受けた。

終演後の熱狂ぶりは、最近見た演奏会の中でも、1、2を争うほど。カーテンコールでミスターSを迎える読響メンバーの表情からも、その達成感と満足感が窺われた。

この日のベートーヴェンは、いずれも世界のトップレベルに通用する仕上がりであった。ミスターSと読響が全身全霊で挑んだ結果として、ある意味必然的に生まれた名演といえ、筆者自身、その場に居合わせることができ、とても幸せであったと思う。


(公演情報)

第147回オペラシティ・マチネーシリーズ

2012年9月30日(日) 14:00開演

会場:東京オペラシティコンサートホール

指揮=スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
ベートーヴェン:交響曲 第2番 ニ長調 作品36
ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
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[2012/09/30 20:03] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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