ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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シュナイダー指揮ウィーン国立歌劇場―来日公演「サロメ」
10月16日午後3時半、東京文化会館へ。ウィーン国立歌劇場来日公演「サロメ」。フランツ・ウェルザー=メストが指揮する予定であったが、右腕の故障により、ペーター・シュナイダーが代役指揮を務めることが数日前に発表された。

筆者の座席は、5階L1列舞台側。音響的には、オーケストラピットの生音がガンガンと飛んでくる一方で、歌唱は聴こえにくく、幽閉されたヨカナーンの声は天井のPAから降ってくるという構図。視覚的にも、下手側の台座上や両袖の階段上が見切れてしまう。そのため、初見での鑑賞にはお勧めできないポジションである(そもそもエコノミー券ゆえ、文句を言える立場にはない。)。もっとも、昨年10月にウィーンでシュナイダー指揮による同じ演目を鑑賞済みの筆者にとっては、むしろオーケストラピットの中を鳥瞰できる今回の場所は、いくつかの発見をもたらしてくれた。

この日のシュナイダーは、気合いが入っていた。第一場、第二場は、慣らし運転気味で、各ポーションを手堅く枠の中に収めながら進行するスタイルであったが、厳かな動機とともにヨハナーンが舞台に登場すると、音楽は大きなスケールで展開を始め、気持ちの高まりとともに、畳み掛けるような緊張感も演出された。ヘロデとサロメのやり取りは、冒頭と同様の手堅さが見られたが、ユダヤ人、ナザレ人たちの論争で、緻密なアンサンブルが繰り広げられると、舞台上は再び熱を帯び始める。最大の見せ場の一つである7枚のヴェールの踊りでは、思いのほか強い推進力が感じられ、これに続くヘロデとサロメの対話、そしてサロメの長大なモノローグでは、若々しいエネルギーが噴出し、ウィーン国立歌劇場らしい響きのボリューム感が全開になる。職人シュナイダーの別の顔を垣間見た気がした。

オーケストラは、ホームグラウンドではないためか、響きが拡散気味に感じられたが、冒頭から各パートが細部まできちんと拍の中に収まっており、少なくとも、ウィーンで連日行われているルーチン公演よりは、多少は真剣に取り組んでいるという印象を受けた。ただ、ベストメンバーではないことは明らかであり、目立った綻びはないものの、響きの純度はいま一つ。やや雑味の混じった音色であったことは否定できない。加えて、東京文化会館の音響では、弦楽器セクションから艶やかな響きが立ち上がりにくい模様で、リヒャルト・シュトラウスの描いた濃厚な官能的な響きに酔いしれるという雰囲気には、残念ながら至らなかった。もっとも、このホールでは、太い低音を基礎にピラミッド状に音が積みあがるので、シュナイダーの引き出す骨太な響きと相まって、ウィーン国立歌劇場管弦楽団の新たな魅力を知ることができたという意味では、収穫も多かった。いずれにせよ、楽器の音色、オーケストラの音色により、鮮明な舞台効果を演出するこのオーケストラの技術は、他の追随を許さないレベルにある。この日の上演において、そうした特色が前面に出ていたのは、聴衆にとって幸せなことであった。多少の荒っぽさもあったが、それはそれで生演奏の醍醐味といえるだろう。

キャスト陣に関しては、サロメ役として抜擢されたグン=ブリット・バークミンが奮闘していたが、声の若さが目立ってしまい、例えば、ヨハナーンの首を求めるシーンでは、冷めた少女の神秘性を表現しきれず、また、ヨハナーンとの対話や長大なモノローグでは、官能的な魅惑を秘めた奥深さからは程遠かった。この役を演じることの難しさを再認識させられた。他のキャストは、もともと目立ちにくい設定ではあるが、可もなく不可もなく。バランスは取れていたが、使い古された演出であるためか、歌唱面でも演技面でもマンネリの域を出なかったように思われた。この辺は致し方ないといえるかもしれない。

今回の「サロメ」に関しては、シュナイダーの頑張りが窮地を救ったといっても過言ではない。昨年10月にウィーンで観た彼の姿からは想像が出来ないほどに、熱がこもっていた。同じ顔合わせでも全く表情が変わってくるところが面白い。ウィーン国立歌劇場の「サロメ」は、やはり格別である。


(公演情報)

2012年10月16日(火)16:00開演(会場:東京文化会館)

リヒャルト・シュトラウス作曲
「サロメ」 全1幕

Richard Strauss
SALOME   
Oper in einem Akt

指揮:ペーター・シュナイダー
Dirigent Peter Schneider
演出 :ボレスラフ・バルロク
IRegie Boleslaw Barlogn
美術:ユルゲン・ローゼ
Ausstattung Jürgen Rose

ヘロデ:ルドルフ・シャシンク
Herodes Rudolf Schasching
ヘロディアス:イリス・フェルミリオン
Herodias Iris Vermillion
サロメ:グン=ブリット・バークミン
Salome Gun-Brit Barkmin
ヨカナーン:マルクス・マルカルト
Jochanaan Markus Marquardt
ナラボート:ヘルベルト・リッペルト
ENarraboth Herbert Lippert
小姓:ウルリケ・ヘルツェル
Page TUlrike Helzel

第1のユダヤ人:ヘルヴィッヒ・ペコラーロ
Erster Jude Herwig Pecoraro
第2のユダヤ人:ペーター・イェロシッツ
Zweiter Jude Peter Jelosits
第3のユダヤ人:カール=ミヒャエル・エブナー
Dritter Jude Karl-Michael Ebner
第4のユダヤ人:ウォルフラム・イゴール・デルントル
Vierter Jude Wolfram Igor Derntl
第5のユダヤ人:アンドレアス・ヘール
Fünfter Jude Andreas Hörl

第1のナザレ人:アルマス・スヴィルパ
Erster Nazarener Almas Svilpa
第2のナザレ人:ミハイル・ドゴターリ
Zweiter Nazarener Mihail Dogotari
第1の兵士:アレクサンドル・モイシュク
Erster Soldat Alexandru Moisiuc
第2の兵士:ダン・ポール・ドゥミトレスク
Zweiter Soldat Dan Paul Dumitrescu
カッパドキア人:ヒロ・イジチ
Ein Cappadocier Hiro Ijichi
奴隷:ゲルハルト・ライテラー
Ein Sklave Gerhard Reiterer

ウィーン国立歌劇場管弦楽団
Orchester der Wiener Staatsoper
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