ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 |
インバル指揮都響―第742回定期演奏会「ブラ3&ブラ1」
10月16日午後7時前、東京文化会館へ。エリアフ・インバル指揮東京都交響楽団による第742回定期演奏会。ブラームスの交響曲第3番と第1番が採り上げられた。夕方から天気が下り坂となり、夜は本格的な雨模様となった。

筆者の座席は、5階席R1列中央付近。二日連続で東京文化会館に通うというのも、なかなか微妙な感じだ。

プログラム前半は、ブラームスの交響曲第3番。この日の都響は、木管楽器を倍に増員した編成で挑む。そういえば、倍管編成は、近時はあまり見かけなくなった。

第一楽章は、冒頭の二和音からエッジの効いた大管弦楽の世界が展開した。フォルテは豪快に鳴り、増員された木管楽器がオルガンのように鳴り響く。アクセントの叩き込みも強い。展開部の進行は速く、コーダではインバルがオーケストラをかなり煽っていたため、一気呵成に突き進んだ感もあるが、叙情性に欠けるものの、割り切って受け止めれば、こういう力技も悪くはない。
これに対し、曲想が穏やかな第二楽章は、あまり印象に残らなかった。淡々と進めるインバルのタクトだと、曲全体が水のように流れてしまい、心に響いてこないかった。
目が覚める想いがしたのは第三楽章。旋律の中で歌い込むポイントを絞り込んだ結果として、長いフレージングが上品に浮かび上がっていたのが秀逸であった。もっとも、メランコリックな雰囲気がほぼ捨象されていたのはいうまでもない。
問題があると感じたのは第四楽章。通常よりもかなり速いテンポ設定で、とにかく前へと突き進む。あそこまで煽られてしまうと、個々の音符をしっかりと鳴らす余裕がなくなってしまい、結果として響きが鋭角的で薄くなってしまう。他の楽章はともかく、第四楽章のテンポ設定だけは、大いに疑問がある。

ところで、この日は、弦楽器セクションが特に優秀であった。精巧な時計が動くかのように、個々の歯車をブレなく噛み合わせながら、個々のリズム系をピタリと時間軸の中にはめ込んでいった。これだけの高水準のアンサンブルには、そうそう頻繁に出会えるものではない。木管セクションの音程の不安定さが悔やまれる。ともあれ、機械仕掛けのアンサンブルとしては、申し分のないレベルにあったが、それにもかかわらず、響きの化学反応が全く生じなかったというのは、やはり何かが不足していたことの証であろう。世界のトップレベルのオーケストラであれば、これだけの精度で曲が組みあがり始めれば、音楽のマジックにより、舞台上から全く別の響きが自然と立ち上がり始めるものである。インバルのタクトの問題か、それとも都響のキャパシティの問題か、よくわからないが、何ともむず痒い演奏であった。

プログラム後半は、ブラームスの交響曲第1番。オーケストラは、この曲でも倍管編成が採られた。プログラム前半では不安のあった木管セクションも、プログラム後半では調子を取り戻し、一つひとつの和音を適切に決めてきた。

第一楽章の序奏は、ボリューム感があり、プログラム前半に演奏された交響曲第3番のときよりも、響きに安定感があった。フレーズの距離の短い交響曲第1番は、交響曲第3番よりもインバル向きなのかもしれない。なお、8分音符の足取りにブレがあったようにも感じられたが、これはインバルのタクトのためであろうか、それともオーケストラ側の都合によるものか、正確なところはよくわからない。さて、問題は第一楽章の主部である。個人的には、インバルのテンポ設定には、疑問符の連続であった。確かに、個々のポーションを取り上げると、音楽的に落ち着きがよく、かつ管弦楽の明晰さも保てるテンポ設定であるため、演奏者側にとっては間違いなく心地よかったであろう。ただ、スコアを頭の中で追いかけながら、醒めた眼で客観的に鑑賞していると、ご都合主義の何ら脈絡のないテンポ変化には、違和感を覚えざるを得なかった。ブラームスの場合、一貫したスタンスを貫きつつ、その制約された中であれこれと工夫することにより、彼の苦悩を追体験できるのではなかろうか。
これに対し、第二楽章以下は、音楽的な流れは自然であった。特に第二楽章と第三楽章は、旋律を担当する楽器に割と自由に歌わせたため、音楽に生命力が宿ったといえる。第二楽章のオーボエ、クラリネット、ヴァイオリンの独奏は、いずれも見事なカンタービレであった。オーケストラ全体としても、響きのバランスが高い次元でコントロールされていたことに加え、豊潤なサウンドを主体に据えつつ、サイレントに近い状態も織り交ぜ、陰影のはっきりした仕上がりであった。
第四楽章は、基本的には前へ前へと突き進むスタイルで、舞台上のオーケストラにも自ずと熱がこもる。もっとも、力技一辺倒というわけではなかった。例えば、爆音にかき消されがちなリズムを、キッチリと硬く演奏させることで、意図的に浮かび上がらせていたのは、スコアの処理として適切であった。また、弦楽器セクションによる第一主題につき、提示部では余韻を活かして上品に、再現部では内声を充実させて濃密に、というように、コントラストも意識した解釈がなされていたのには、感心させられた。他方で、通常であれば執拗なタメが多用される箇所をバッサリとスマートに処理したことにより、音楽それ自体の持つ鮮烈さが際立っていたのも、新たな発見であった。全体を通じ、ブラームスの音楽のパワーが舞台上から客席に向けて放射状に伝わっていくかのような演奏であったといえる。

それゆえ、第二楽章以降については、個人的にも満足できる演奏であった。なお、カーテンコールでは、客席はかなり盛り上がっていたが、舞台上はいつも以上にクールな雰囲気であった。終演後は急いでオフィスに戻り、残務処理に明け暮れる。


(公演情報)

第742回 定期演奏会Aシリーズ


日時:2012年10月17日(水)19:00開演
会場:東京文化会館

指揮:エリアフ・インバル

曲目
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調
スポンサーサイト
[2012/10/18 00:55] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<カンブルラン指揮読響―第553回サントリー名曲シリーズ「ラヴェルのバレエ音楽」 | ホーム | シュナイダー指揮ウィーン国立歌劇場―来日公演「サロメ」>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://mashi1978.blog97.fc2.com/tb.php/151-b78a059a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

mashi1978

Author:mashi1978
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。