ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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カンブルラン指揮読響―第553回サントリー名曲シリーズ「ラヴェルのバレエ音楽」
10月18日午後7時前、サントリーホールへ。シルヴァン・カンブルラン指揮読売日本交響楽団による第553回サントリーホール名曲シリーズ。ラヴェルのバレエ音楽「マ・メール・ロワ」と「ダフニスとクロエ」が採り上げられた。集客は、会員の欠席者分も含めると、8割程度。

筆者の座席は、2階RCブロック3列目。RBブロックの壁から少し離れさえすれば、このブロックは、鑑賞上全く問題はない。総合点で満足のゆく音響バランスであった。

プログラム前半は、ラヴェルのバレエ音楽「マ・メール・ロワ」(全曲)。

カンブルランのタクトは、「静」を基調とした室内楽的な響きを志向し、水墨画タッチの解像度の高いキャンバスを提供する。各楽器により描かれる動機の数々は、キャンバス上で一つひとつデリケートに固定されていった。オーケストラ側に求められる響きの純度の高さはこの上ない。それゆえ、管楽器の和音の崩れや弦楽器の滲みなど、わずかな綻びが誤魔化されることなくそのまま露呈してしまうという怖さがあった。

実際、「前奏曲」や第一場「紡ぎ車の踊りと情景」では、管楽器の和音がはまりきらず、違和感を覚える箇所が散見された。第三場「美女と野獣の対話」あたりになると、オーケストラの響きが馴染み、程よい落ち着きが生まれたが、たまに生ずるちょっとした乱れが音楽的な緊張感に水を差してしまうという問題もあった。第五場「パゴダの女王レドロネット」では、キラキラと光り輝く情景が瞬間的に姿を見せたが、その後は物思いに沈んだような雰囲気となり、終曲「妖精の園」は、華やかな大団円というよりも、シックな大人な夜明けという感じであった。

全体として、ムードが盛り上がらなかったのは、カンブルランの意図なのか、オーケストラの問題なのか、判断できない。ただ、カンブルランが多種多様な仕掛けを周到に準備していたにもかかわらず、音のキャンバス上には、試し書きレベルのスケッチが残されたにとどまり、釈然としないまま演奏が終わり、休憩となってしまった。

プログラム後半は、ラヴェルのバレエ音楽「ダフニスとクロエ」(全曲)。合計で50分ほどの演奏時間を要する。

第一部冒頭の弱音は、プログラム前半の「マ・メール・ロワ」の延長線上にあった。プログラムとしての一貫性が感じられた点には感心させられた。主題が展開し始めると、音楽的な流れが生まれてきて、聴きやすくなったが、緻密さの中に細かなノイズが混じってしまう箇所が散見されたのが惜しかった。第一部終盤の無伴奏合唱は鍵盤を叩くかのような機械的な進行であったが、音程のブレがその音楽的効果を半減させていた。この日の新国立劇場合唱団は、プロとしての面目は一応は保っていたが、和声が決まらず、素晴らしいなどとはお世辞にも言えないレベルであった。
第二部は、読響お得意のパワープレーで、ドカドカと元気のよい演奏が鳴り響く。ただ、やや能天気すぎるようにも感じられた。
第二組曲として著名な部分を含む第三部は、演奏の安定感が格段に上がった。壮麗なクライマックスや序奏主題の再出現では、和声が伸びやかに展開し、聴き応えがあった。最後の「全員の踊り」は、それまでおとなしかったカンブルランが手綱を強烈に引き締め、突如として神がかり的な盛り上がりとなり、曲が閉じられた。 結局のところ、終わりよければすべてよしということだったのだろうか。

オーケストラは、プログラム前半に比べると、概ね好調ではあったが、カンブルランの求める解像度の高い画面上では、アナログ的な鈍い動きしか示せないことも多く、洗練度の不足した音色に終始した部分も少なからずあった。また、精巧に歯車が組み合わされるべき箇所でも、アンサンブルの精度の詰めは甘く、全体的にいま一歩の仕上がりであった。なぜ音楽が化けていかないのか、演奏を聴きながら色々と考えてみたが、結局のところ、問題は、演奏者側に「ダフニスとクロエ」というバレエ音楽ないしその基礎となる台本に対する理解がほとんどなかった点に帰着すると思われる。読響の面々がやっていたことは、単に音符をなぞることだけであり、個々の動機のもたらす演奏効果という観点からの掘り下げは、ほとんどなされていなかった。こういうスタンスでは、演奏自体に心が宿ることはない。外形的にうまく切り抜けたとしても、その白けたムードが客席に伝わってしまう。フォルテの部分を威勢よく鳴らせばよいというものではない。ストーリー性が大事なのである。シンフォニーオーケストラを起用してオペラやバレエを演奏することの難しさを改めて実感した。

なお、この日の演奏では、カンブルランの驚異的な耳と分析力に触れるとともに、場面によっては、ハッとさせられる表現の方向性をいくつか見つけることができたので、個人的にはそれで良かったことにした。


(公演情報)

第553回サントリーホール名曲シリーズ

2012年10月18日(木) 19:00開演
会場:サントリーホール

指揮=シルヴァン・カンブルラン
合唱=新国立劇場合唱団
ラヴェル:バレエ音楽「マ・メール・ロワ」(全曲)
ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」(全曲)
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[2012/10/19 23:48] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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