ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ブロムシュテット指揮バンベルク響―「ブル4」
11月6日午後6時前、サントリーホールへ。たまたま仕事が早く片付いたので、当日券売り場に並ぶ。販売開始時点で当日券を求める長い列ができていた。ヘルベルト・ブロムシュテット指揮バンベルク交響楽団の来日公演。モーツァルトのピアノ協奏曲第17番とブルックナーの交響曲第4番が採り上げられた。

筆者が確保した座席は、2階RBブロック4列目。いわゆるデルタ地帯。この場所ならば、響きの透明度と立体感、そして研ぎ澄まされた音の立ち上がりを鮮明に捉えることができる。昨年11月のライプツィヒでは肩透かしを喰らったが、ようやくそのリベンジを果たすことができる。そう思うと、自ずとテンションが上がった。

この日の来場者数は、7割程度の模様。どの席種にも空席が見受けられた。ただ、会場内は、老若男女問わず、首都圏の真面目なブルックナー愛好家が集結したかのような雰囲気で、ある種異様な緊張感が流れる。演奏中の雑音もほぼ皆無。この雰囲気には、バンベルク響の面々も驚いたことだろう。なお、ブルックナーの第四楽章冒頭で時計のアラームを鳴らした輩がいたのは、非常に遺憾である。

さて、プログラム前半は、モーツァルトのピアノ協奏曲第17番。ピョートル・アンデルシェフスキが独奏を務める。ドイツの演奏様式がバッハの延長にあることを再認識するとともに、ウィーン時代中期のモーツァルト作品に秘められた驚くほどの内容の深さに気付かされた演奏であった。

この日は、アンデルシェフスキの独奏が実に見事であった。瑞々しい粒立ち、奥行きを感じさせる音色、深遠な弱音表現など、ブロムシュテットの志向する音楽とベクトルが揃っており、特に第二楽章以降、神がかり的な世界が静かに繰り広げられたのが印象的であった。音楽を語れるピアニストに久々に巡り会ったように思う。

また、オーケストラのやや控え目な創り込みも魅力的である。切り口は素朴だが、少し遅れて渋い響きがじわっと広がる。そして、個々のセクションから発せられたフレーズの持つオーラが舞台上で次々にキャッチボールされる。この感覚は、筆者にとっては初めての体感であった。響きは淡色系でありながら、音楽が活き活きと、しかし崇高に感じられるのは、いったいなぜなのだろうか。

アンコールには、バッハのフランス組曲第5番より「サラバンド」が採り上げられたが、これがまた秀逸。プログラム前半を明るく静かに閉じるにふさわしい素晴らしい演奏であった。

プログラム後半は、ブルックナーの交響曲第4番。ようやくブロムシュテットの凄さに接することができた。会心の出来といえる。現地公演でもこのレベルはなかなか実現しないのではなかろうか。ブロムシュテットとバンベルク響の相性の良さと、東京の聴衆の真剣さが通じ合い、一期一会の素晴らしい一夜となった。

ブロムシュテットの率いるバンベルク響は、ブルックナーのオーケストレーションに照らすと、重心はむしろ軽めで、音色も明るい。しかし、和声の一つひとつを採ると、中身が詰まっていて、含蓄のある奥深さが感じ取れる。個々の旋律のカンタービレが殊に美しく、歌心に富んでいるのも特徴だ。加えて、個々の奏者が非常に自発的かつ積極的で、一人ひとりが目立たないところで実に良い仕事をしているのが素晴らしい。このひたむきさと一生懸命さ、そして一つの動機に対する職人的(オタク的)なこだわりは、ドイツのオーケストラならではといえる。そして、アンサンブルの組み立て方を見ていれば一目瞭然だが、オーケストラとしての様式性が明確であり、かつ奏者全員がそれを十二分に理解し、実践しているのが分かる。ドイツの伝統を後世に継承する数少ないオーケストラの一つといえる。なお、バンベルク響のオーケストラとしての素晴らしさは、チューニングを静かに執り行う様子からも窺い知ることができた。

筆者自身は、すでに冒頭の一節の段階で、心に沁み渡る奥深さにノックアウト。森林に秘められた様々な表情をそのまま切り取ってきたかのような印象。特に第一楽章における緊張感の高まり具合は半端なく、展開部とは、文字通り音楽が展開してゆく箇所なのだ、ということを肌で感じさせる凄さがあった。振り返ってみれば、第一楽章前半で頂点にまで達したボルテージは、そのままのテンションを保ったまま、音楽的な安定感と完成度を揺るがすことなく、第四楽章の最後まで貫かれた。突き詰めた正攻法がもたらす心の充足。このコンビによる演奏は、他の追随を許さないというレベルを超えており、別次元のものであると思わずにはいられない。

カーテンコールにおける拍手の盛り上がりは、尋常ではなかった。一般参賀は2回。自然な成り行きであったと思う。それに値する演奏であった。なお、演奏後の拍手に関しては、1名ほど拍手がやや早い輩がいた(ブルックナーの演奏会では、必ずといってよいほど、自己顕示欲の強いマニアが拍手の口火を切る。)が、最後の和音の余韻にはぎりぎり被らなかったので、不満には思うものの、許容範囲。

終演後は、あちこちでマニアトークが繰り広げられる中、耳に蓋をして足早に会場を後にする。せっかくの余韻を邪魔されたくないのだ。


(公演情報)

バンベルク交響楽団
2012年11月6日 19:00開演
会場:サントリーホール

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
ピアノ:ピョートル・アンデルシェフスキ

モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K.453
ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」(ノーヴァク版)
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[2012/11/07 00:47] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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