ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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レオ・ヌッチ バリトン・リサイタル
11月14日午後7時前、オペラシティへ。世界最高のヴェルディ・バリトンであるレオ・ヌッチによるリサイタル。会場内は、首都圏在住のヌッチファンやオペラ愛好家で埋め尽くされた。拍手のレスポンスの良さとブラボーの多さは際立っており、日頃のコンサートではあまりお目にかかれない光景であった。日本では、オペラ愛好家は、依然として一部のコアな層にとどまっているということなのだろうか。

筆者の座席は、1階10列左側中央。そもそもこのホールは、歌を聴くには響きが強すぎる。1階席前方であれば、生々しさが愉しめるかと思っていたが、実際には想定以上に残響の効果が加わってしまい、細かい言葉のニュアンスを打ち消してしまっていた。800席くらいの馬蹄形の劇場で鑑賞するのがベストなのだが、それを求めるのは贅沢というべきであろう。

さて、プログラム前半は、ヴェルディとトスティの歌曲集。

祈り、嘆き、哀しみから、恋、愛情、喜びに至るまで、厳選された曲の中に、盛りだくさんの要素が詰まっている。歌曲の場合、構成がシンプルで、かつ台詞もストレートであるため、歌い手の表現力が正面から問われる。歌による感情表現の幅の広さに目を丸くした、あっという間の35分間。イタリア歌曲の真髄に触れた衝撃は、休憩時間に入ってもなお筆者の中に余韻として残った。

プログラム後半は、ヴェルディのオペラアリア集。

こうして並べて聴くと、それぞれの作品におけるバリトン役に託されたキャラクターの違いが如実に現れて面白い。というよりも、たった一曲のアリアを歌うだけで、聴き手に対してそれぞれの役の青写真を明確に印象付けるとともに、作品全体をも語ってしまうヌッチの並はずれた表現力が凄すぎる。《二人のフォスカリ》~「ああ、年老いた心臓よ」で、この曲の素晴らしさに光を当てると、その後の《ドン・カルロ》~ロドリーゴの死「終わりの日は来た」は、文字通りのお涙もの。《ラ・トラヴィアータ》~「プロヴァンスの海と陸」では、計算高いジェルモンの一面をくっきりと描き上げ、続く《仮面舞踏会》~「お前こそ魂を汚すもの」では、半ば分裂状態にあるレナートの心境を、アメーリアへの愛情を出発点として優しく浮かび上がらせる。最後の《エルナーニ》~「おお、若かりし頃の」は、スケールの大きさに鳥肌が立った。

アンコールも充実。

お馴染みの《リゴレット》~「悪魔め、鬼の」、ペッチャのロリータ、《イル・トロヴァトーレ》~「君の微笑み」と続き、最後は恒例の「忘れな草」と「オー・ソレ・ミオ」を会場全体で歌ってお開き。

今回のようなリサイタルの場では、純粋に「歌」のみに専念して鑑賞することができるため、ヌッチの傑出した技術力と類まれな表現力が存分に活かされる。筆者の場合、ヌッチの歌唱には、この一年あまりの間に、チューリッヒ歌劇場の《リゴレット》や、スカラ座の《アッティラ》、《ルイザ・ミッテル》で、計3回接しており、それなりに分かったつもりでいたが、今回のリサイタルで観たヌッチは、筆者のこれまでの想像をはるかに上回る真の怪物であり、魔法使いであった。

もちろん、「声」の張りに関しては、多少は衰えが感じられる。しかし、よく言われるように、高度な技術により整えられているので、聴いていて全く気にならない。音程の正しさは、驚異的である。喉からとか腹からとかではなく、全身から「歌」が発せられており、太くて芯の強い表現が「歌」の波動の中に濃密に詰まっていることに驚かされた。「歌」とはこういうものなのか。

加えて、ヌッチのエンターテイナーとしての心意気も素晴らしく、一つのリサイタルとして純粋に愉しめる内容と構成。もう言うことなしである。

会場内では、曲が終わるごとに爆発的な拍手とブラボーが飛び、特に終盤は、興奮が渦を巻いていた。スタンディングオベーションの大騒ぎの中、午後9時過ぎに終演。素晴らしかった。


(公演情報)

レオ・ヌッチ バリトン・リサイタル

2012年11月14日(水)19時
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル

イタリアン・チェンバー・オペラ・クァルテット

(前半)
ヴェルディ:詩人の祈り / ああ優しい人よ、取り除いてください / エリーザよ、疲れた詩人は死んでゆく
トスティ:魅惑 / 私は死にたい / マレキアーレ / 君なんかもう

(後半)
ヴェルディ:《二人のフォスカリ》~“ああ、年老いた心臓よ”
《ドン・カルロ》~ロドリーゴの死“終わりの日は来た”
《ラ・トラヴィアータ》~“プロヴァンスの海と陸”
《仮面舞踏会》~“お前こそ魂を汚すもの”
《エルナーニ》~“おお、若かりし頃の”

(アンコール)
ヴェルディ:《リゴレット》~“悪魔め、鬼の”
ペッチャ:ロリータ
ヴェルディ:《イル・トロヴァトーレ》~“君の微笑み”
忘れな草
オー・ソレ・ミオ
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[2012/11/15 00:52] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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