ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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小林指揮都響―第744回定期演奏会「田園」
11月19日午後7時前、東京文化会館へ。小林研一郎指揮東京都交響楽団による第744回定期演奏会。ベルリオーズの交響曲「イタリアのハロルド」とベートーヴェンの交響曲第6番「田園」が採り上げられた。ここ数日、都内は一気に気温が下がり、コートが手放せなくなってきた。

筆者の座席は、5階席R1列中央付近。この日は、会場内の雰囲気がやや弛緩しているように感じられたのは気のせいだろうか。

プログラム前半は、ベルリオーズの交響曲「イタリアのハロルド」。都響の特任首席奏者の店村眞積が独奏を務めた。

演奏の方だが、筆者の座席で聴く限り、全体を通じて非常に単調な印象で、ベルリオーズの管弦楽の手法の斬新さは、ほとんど感じられなかった。

店村の独奏は、楽器自体は主人公ハロルドを想起させるにふさわしい朗々とした音色を兼ね備えているが、旋律の線が細く響きが開かないし、力が入ると音が潰れてしまう。技術的にやや不安な箇所もあり、それらが音楽の流れと緊張感を阻害するという悪循環が生じていたように感じられた。本人的には頑張っていた模様だが、定期演奏会の舞台にのせるレベルではなかったというのが正直な感想。

オーケストラもかなり不調。普段であれば、舞台上で束ねられたサウンドが高い解像度を保ったまま5階席まで届いてくるのだが、少なくともこの作品では、個々の音色は立ち上がらないし、響きの方向性もバラバラで、立体感や奥行きがまるで感じられない。最後はやっつけ的に盛り上げたものの、その前とのつながりは不明。和音が合っていない箇所も散見されたし、そもそもリハーサルが足りていなかったのではなかろうか。

折角の名作がこのような仕上がりに終わってしまったのは、残念といわざるを得ない。客席の拍手もそれなりな感じであった。

プログラム後半は、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」。これくらいの有名曲だと、オーケストラの安定感は段違いだ。都響には、都内のオーケストラの中ではトップクラスと称されるだけのポテンシャルは備わっている。

小林のアプローチは、非常にロマン的なベートーヴェン像を志向する。かつては力みや強引さを感じることがあったのだが、この日の小林は、実に自然体であり、無理なく丁寧にカンタービレを紡いでいた。都響の自発性を引き出すことにも成功していた。

中でも、第四楽章から第五楽章にかけての潮流は、実に見事であった。第三楽章が粗削りであったため、一抹の不安を感じたが、第四楽章は逆に抑制の効いた演奏であり、感心させられた。演奏効果に偏重した大嵐とせず、内声部を上手に活用することで、客観的に表情を描いたことが功を奏したようだ。大人な落ち着きの中に、スケールの大きさと優しさが共存し、安らかな気持ちにさせる演奏であったといえる。また、第一楽章のコーダにおける響きの拡がり方、第二楽章の末尾の祈りも、第五楽章への伏線として意味があった。

欲を言えば、前半部分に関してであろうか。第一楽章の前半や第二楽章では、慎重な運びが表情の硬さとして露呈してしまうことがあり、拍子感に若干の停滞が見られる場面があった。また、ダイナミクスの幅がやや小さく、ずっとmpで進行しているように感じられた。ヘルベルト・ケーゲル指揮ドレスデン・フィルによる衝撃演奏の録音を知る者としては、第一楽章や第二楽章に織り込まれた異様な静寂の中での複雑な色合いに想いを寄せてしまう。

また、これはこの作品の演奏の難しさを象徴する出来事ともいえるが、調性や場面の転換点で曲想をガラッと変える効果を期待される楽器にわずかな綻びが生ずることが複数回あり、その結果として、緊張感の連鎖が途切れてしまうという事態が何度か発生していた。それだけシビアな作品であるということなのであろう。

この日は、お得意のアンコールやスピーチもなく、静かに終演となったため、穏やかな気持ちのまま帰路につくことが出来た。ベートーヴェンは奥が深い。そんなことを感じさせる一夜であった。


(公演情報)

第744回 定期演奏会Aシリーズ

日時:2012年11月19日(月)19:00開演
場所:東京文化会館

指揮:小林研一郎
ヴィオラ:店村眞積

曲目
ベルリオーズ:交響曲「イタリアのハロルド」
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調「田園」
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[2012/11/20 00:19] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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