ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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欧州行き(12年11月)①―ペライア指揮&独奏アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ「モーツァルト」
11月21日正午すぎ、NH209便にて成田空港からフランクフルトへ。今回は連休明けにブリュッセルでの国際会議に出席するための渡欧である。折角の機会ゆえ、連休前に2日間の休暇を取り、ヨーロッパを周遊することとした。行きのフライトでは、プラチナステータスとしての権利行使によりプレミアムエコノミーにアップグレードし、しかも隣が空席であったため、機内ではそれなりに広々とスペースを利用できたが、12時間弱のフライトでは首が痛くなった。ルフトハンザと比べると、食事がまともなのが救いである。

午後5時前、フランクフルト空港に到着。鉄道でフランクフルト中央駅へ向かい、駅から80メートルの距離に位置するHotel Excelsiorにチェックイン。オールドタイプの3つ星ホテルで、簡素な造りの部屋だが、ちょっと欲しいなと思ったものが一通り手元に揃っていて、使い勝手がよい。受付の応対もよく、リーズナブルな料金で、再訪したいと思わせるホテルであった。

午後8時前、アルテ・オーパーへ。マレイ・ペライア指揮&独奏によるアカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズの演奏会。モーツァルトのドイツ舞曲、ピアノ協奏曲第26番、交響曲第39番が採り上げられた。

筆者が確保した座席は、平土間13列目左側中央。アルテ・オーパーは、空間を縦横に大きく取ったシューボックス型のコンサートホールだが、実際に聴こえてくる音は、箱の大きさを感じさせない。適度な残響と臨場感があり、なかなか優秀なホールだと感じた。筆者の座席では、管楽器がやや遠く感じられてしまうが、この日のプログラムのような古典派作品の場合は、むしろ弦楽器主体の響きが望ましく、鑑賞上の支障はなかった。

プログラム前半の一曲目は、6つのドイツ舞曲。この作品は、指揮者なしで演奏された。フレッシュな響きで、室内楽的な愉しさの窺えるアンサンブル。響きのバランス上、やや凹凸があったが、作品の魅力を伝えるには十分な水準の演奏であった。気負うことなく、自然体な感じが好印象であった。

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プログラム前半の二曲目は、ピアノ協奏曲第26番。マレイ・ペライアが弾き振りを務めた。弾き振りの場合、ピアノの反響板が外されてしまうため、ピアノの音は天井に上がってしまう。しかし、ペライアのクリアで淀みのない素晴らしいタッチは、平土間席にもしっかりと伝わってきた。

ペライアによる独奏は、最初の一音を発した瞬間から、楽章全体のイメージを凛として明示する見事な演奏であった。最初から最後まで音楽の方向性が一貫しており、その姿勢が全くブレない。シンプルな曲想がその様式性の確かさを際立たせる。

第一楽章は、際立った粒立ちのスムーズな流れが特徴的。かといって平板になるわけではなく、各フレーズが然るべきポジションにスッと収まっている。必要なニュアンスに欠けるところはない。ソナタ形式のお手本のような演奏といえる。これに対し、第二楽章は、落ち着きをはらったソフトな語り口で、響きに奥行きを伴う。感傷的になりすぎないところもよい。第三楽章は、軽快なロンドで小気味よい。一方で造形はクリアで、リズムの彫りの深さもある。理想的なロンドが展開された。全楽章を通じて、足しも引きもしない達人による名演であったといえる。

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オーケストラも、プログラム前半一曲目のドイツ舞曲と比べると、音楽のベクトルが揃い、主張に力強さが生まれた。こうして指揮者の有無を聴き比べるというのは、なかなか興味深いものである。アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズは、上品さを伴うよき時代のブリティッシュな香りを兼ね備えるが、室内オーケストラとしてのアンサンブルの水準も非常に高いレベルにある。何よりも、奏法の揃い方が半端ではない。音色にそれほど華があるわけではないが、純度の高い上質な響きが印象に残る。弦楽器のみならず、管楽器に至るまで、フレージングや発音に一寸の滲みすら露呈しないのは、さすがというほかはない。ペライアとの阿吽の呼吸により、格調高く、活き活きとしたモーツァルトの世界を表現できていた。

休憩時間中に、ステージ横に片づけられたピアノの上に残されていたペライアのスコアを発見。使い込まれた辞書のような使用感があり、ペライアの日々の勉強の蓄積が垣間見られた。

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プログラム後半は、交響曲第39番。ペライアは、今度は指揮棒を持って舞台に登場。音楽の方向性は、ピアノ協奏曲と似ている。飾ることなく、まっすぐなアプローチは好感が持てる。ただ、やはりペライアは、優れた音楽家とはいっても、指揮者としては全くの素人レベル。アウフタクトのぎこちなさと指揮者としての天性の欠如が気になって仕方がなかった。

第一楽章の序奏部は、ピアニストらしく、明快な切り口と振幅のあるフレージングで、アプローチとしては悪くはない。ただ、場面の変わり目でアウフタクトが出せず、オーケストラとお見合いしてしまう箇所が散見される。この序奏部は、シンプルな構成だが、棒を振るのは意外と難しいのだ。主部に入っても、ペライアのタクトからは、4分の3拍子は感じられず、アレグロのテンポ感も伝わってこない。横の線を意識したフレージングには、さすがと思わせるセンスも窺われたが、フォルテのトゥッティは推進力に乏しく、響きもリズムもテンポも完全に淀んでしまっていた。加えて、部分的にこだわりをもって細工を試みようとするがあまり、そのパートが前のめりに転がってしまい、腰のすわりが悪くなる箇所が目立つ。第二楽章も、楽想記号に示されたアンダンテ・コン・モートからは程遠い。散漫な印象のまま、曲が進行する。再現部の劇的な転調と和声進行は、然るべき指揮者がタクトを執れば、この上なく感動的に響くはずなのだが。第三楽章も第四楽章も、第一楽章で露呈した問題点をそのまま引きずる。第四楽章の冒頭など、あのアウフタクトでよくぞ合わせられたと思う。

アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズは、指揮者のアウフタクトなどなくても、彼らの呼吸で自然に合わせることができるだけの力を兼ね備えている。ヴィオラを中心とした全体のアンサンブルは、プログラム後半でも健在であった。ヴィオラの首席奏者の呼吸の図り方とボウイングのしなやかさは絶妙であり、筆者はしばし彼の演奏する姿に釘づけになってしまった。

しかし、目の前で変なアウフタクトを出されると、それを無視するわけにはいかないというのが人間の常である。自然と反応してしまうため、音楽の流れがチグハグになる。残念ながら、この日のペライアは、指揮台の上では音楽の邪魔をする存在でしかなかった。

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結局のところ、ペライアは、あくまでもピアニストであり、指揮者ではないということなのだろう。

ピアノの場合、叩けばその瞬間に音が鳴る。しかし、オーケストラの場合、音が出るまでには微妙な間が空く。ピアニストの感覚で、ピアノを弾くイメージのまま、オーケストラを鳴らそうとすると、オーケストラは、全体の中での居所を見失ってしまう。

また、ピアニストは、自分の心の中で音楽を描きながら、指先に神経を集中させて音を紡いでいくが、指揮者は、音楽の方向性を全身から発信し続けなければならない。心に描いているだけでは、実際に演奏をするオーケストラの側には、何も伝わらない。それゆえ、ピアニストが行うように、何か変化を求めて局所的に表情をつけようとすると、そこだけが強調され、唐突な感じになってしまう。

指揮者とはどういう存在であるべきか、色々と考えさせられた一夜であった。終演後はそのままホテルに戻り、翌朝に備える。

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(公演情報)

Academy of St Martin in the Fields

Mittwoch 21. November 2012
20:00, Großer Saal

Murray Perahia: Klavier und Leitung

Wolfgang Amadeus Mozart
Sechs Deutsche Tänze KV 536
Klavierkonzert Nr. 26 D-Dur KV 537 "Krönungskonzert"
Sinfonie Nr. 39 Es-Dur KV 543
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[2012/11/26 06:51] | 海外視聴記(フランクフルト) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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