ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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欧州行き(12年11月)③―チョン指揮フェニーチェ歌劇場「トリスタンとイゾルデ」
11月23日、午前中はホテルの室内ですごす。サンタルチア駅前の広場でパレードのようなものが行われたため、妙に騒がしかった。午後1時前に、昼食のため、Osteria Alle Testiere(アッレ・テスティエーレ)に再訪。スパゲッティ・ボンゴレ、酢豚風のソースに絡められたエビ、ティラミスを食す。メインは若干微妙だったが、2年前にイタリアで初めて食べたボンゴレの味は健在で、満足できた。

いったんホテルに戻り、休憩の後、午後5時前にTeatro La Feniceへ。チョン・ミョンフン指揮フェニーチェ歌劇場によるワーグナー「トリスタンとイゾルデ」。2012/2013シーズンの新演出として「オテッロ」と並行して上演されている。

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筆者の座席は、前日と同様、Ordine 3 Parco 27の1列目。前日と比べると、オーケストラがより豊かに響いている感じがした。

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オーケストラは、イタリアらしい陽気で明るい音色だ。前日のヴェルディでは、特に意識しなかったが、こうしてワーグナーを聴いてみると、イタリアの響きを再認識できる。途中で、ワーグナーを聴いているのか、ヴェルディを聴いているのか、分からなくなってしまうような瞬間もあったが、旋律に込められた伸びやかなカンタービレは、他では味わえない魅力といえよう。

チョン・ミョンフンの指揮は、「オテッロ」におけるストイックなアプローチに比べると、大らかで自然体であった。持ち前のスケールの大きいフレージングで、無限旋律をつなぎつつ、決め所ではドラマチックに畳み掛ける。テンポ的にはスムーズな進行で、流れも良い。若々しさも漲っており、静寂から激高まで、全体をバランスよくまとめていたといえる。

というわけで、演奏自体は、決して悪くはなかったはずだが、残念ながら、筆者自身は、説明し難い違和感との葛藤に終始してしまい、気持ちが乗らなかった。鑑賞していても、何かが根本的に違う気がして、集中力が持続しない。前日の「オテッロ」との違いはどこにあったのだろうか。

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おそらくは、オーケストラ、さらには劇場自体が、ワーグナーの上演につき、十分に精通していなかったことが最大の原因であろう。借りてきた猫のようなよそよそしさがあった。

確かに、一見すると、どの楽器も朗々と歌っており、まとまりがあるように見えるが、よくよく観察してみると、オーケストラピットの中の各奏者は、楽譜を追いかけるのに精一杯で、余裕があまりなさそうであった。オーケストラの技術面でのポテンシャル不足も気になる。

ワーグナーの場合、個々の動機に対する病的なこだわりが求められるが、積み木を重ねるような、あるいは絵の具を練り込んでいくような、ミクロ的で持続的なアプローチは、イタリアオペラの演奏スタイルとは方向性が異なる。豊潤で大らかなカンタービレは、ワーグナーのスコア上では、糸の切れた風船のように浮遊してしまう。個々の響きが緻密に結合することによって生み出されるワーグナー特有の覚醒と陶酔の世界は、感じ取ることができなかった。

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加えて、この日のオーケストラは、チョン・ミョンフンが畳み掛けると、あたかもヴェルディの幕切れのように楽観的に反応するため、劇的な高揚がかえって唐突な印象を与えてしまう。前日は中身の詰まった濃密なフォルテが聴こえてきたのだが、この日は力任せの外面的なフォルテばかりが鳴り響く。オーケストラが分厚くなると、歌手の歌唱に覆いかぶさるようになるのも問題であった。個々のオーケストラ奏者には、歌詞が聞こえていなかったのではなかろうか。

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キャスト陣の中では、トリスタン役のイアン・ストレイが前回ベルリンで鑑賞したときよりも好調で、第一幕から安定していたが、劇場全体を支配するあまりにイタリア的な雰囲気を前にして、孤軍奮闘の感が否めない。イゾルデ役のブリギッテ・ピンターは、迫力はあるが、やや沈むような声で、必ずしも表情が豊かとはいえず、筆者のツボにはまらない。マルケ王役のアッティラ・ジュンは、悪くはないが、何となく雰囲気が軽い。

ポール・カランの演出は、造形のしっかりしたシンプルな舞台で、オーソドックスなプランニングだが、変化に乏しく、目で追いかけていてもストーリーの展開が見えてこない。舞台上に大きなセットが置かれているだけで、実態は演奏会形式と大して変わらない印象であった。肝心な場面では、静けさの中でもどこか目を引くような工夫が欲しい。

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フェニーチェ歌劇場は、2012/2013シーズンをヴェルディとワーグナーの二大傑作の新演出をもって開幕するという意欲的な取り組みを示したが、この日の上演から窺う限り、「トリスタンとイゾルデ」に関しては、初日以来、早くも名演として話題に上っている「オテッロ」の陰に隠れ、やや不完全燃焼となってしまったように思われる。

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終演後は、翌朝に備え、そのままホテルに直帰。疲労のため、すぐに就寝する。


(公演情報)

Tristan und Isolde

Teatro La Fenice
23/11/2012 ore 17.00

azione in tre atti
libretto e musica di Richard Wagner

Tristan - Ian Storey
Koenig Marke - Attila Jun
Isolde - Brigitte Pinter
Kurwenal - Richard Paul Fink
Melot - Marcello Nardis
Brangaene - Tuija Knihtila
Un pastore - Mirko Guadagnini
Voce del giovane marinaio - Gian Luca Pasolini
Un pilota - Armando Gabba

maestro concertatore e direttore - Myung-Whun Chung
regia - Paul Curran

Orchestra e Coro del Teatro La Fenice
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[2012/11/26 16:19] | 海外視聴記(ヴェネチア) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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