ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 |
欧州行き(12年11月)⑧―ムーティ指揮ローマ歌劇場「シモンボッカネグラ」
12月1日午前、LH1844便にてミュンヘンからローマへ。宿泊先であるヒルトン・ローマ・エアポートに午後2時すぎにチェックイン。翌朝のフライトを考えると、他に選択肢はなかった。ホテル併設のレストランで昼食を摂るが、絶対に外さないだろうと思ったペンネパスタが、自分で作った方が美味しいのではないかと思わせる低調さ。イタリアの玄関口としてのプライドはないのだろうか。

午後4時すぎ、列車でローマ・テルミニ駅へ。午後5時すぎにオペラ座に到着。リッカルド・ムーティ指揮ローマ歌劇場によるヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」。一昨日に引き続き、2度目の観劇となる。

20121201-02

前回は記さなかったが、2012/2013シーズンの開幕に合わせて、ローマ歌劇場のロビーやホワイエには、歴代のヴェルディ作品の衣装が一堂に会している。一つひとつ観てまわると、なかなか興味深い。

20121201-01

さて、発売初日にインターネットにより筆者の確保した座席は、平土間9列目上手側。この劇場は、平土間にも若干の傾斜があることに加え、ムーティの立ち位置が高いので、平土間席からでもムーティの横顔を窺うことができた。ローマ歌劇場の平土間席は、音響的にも視覚的にも理想的であった。

20121201-04

オーケストラの音色は、階上席で聴くと剝き出しになるが、平土間席で聴くと、オーケストラピットから立ち上がり、平土間に下りてくるプロセスを経ることで、見事にブレンドされ、艶を増す。生々しさも十分であり、コントラバスの刻みもズンと伝わってきた。加えて、至近距離から捉えるムーティの指揮姿からは、顔の表情や細かいニュアンスまで伝わってくるので、一昨日とは違った側面を知ることができたのも大きな収穫であった。

20121201-03

さて、上演の方だが、鑑賞した座席が異なるため、単純に比較はできないものの、一昨日よりも安定感が増し、練られた印象であった。フォルテにおける力強さとドラマチックさが増強されたように感じる。特に、第一幕第二場が圧巻であった。もちろん弱音のニュアンスも絶品である。このように、フォルテとピアノの表情の違いが明確になることで、この作品の内包する複雑な表情が、完全なる様式観の下で、多彩に描き分けられていた。

20121201-05

プロローグでは、フィエスコのモノローグの後奏部分をピアニシモのニュアンスをベースに仕立てた点が秀逸。抑制されたクレッシェンドの中に、フィエスコの悩みの深さが現れていた。前回も指摘したが、3拍子系モデラートの歌唱部分における歌回しの滑らかさは、模範的かつ理想的であり、キビキビとしたリズムと推進力が全体をキュッと引き締めるのも、ムーティの独壇場である。加えて、幕切れにおける民衆の歓喜の場面で、オーケストラを軽い響きでまとめつつ、合唱に関してはフォルティッシモを振り絞らせるという采配も素晴らしかった。改めてスコアに戻ってみると、プロローグにおいて、オーケストラ全体によるフォルティッシモが求められている場所は、パオロが男声合唱に対して選挙でシモン投票するよう呼びかけるシーンと、シモンとフィエスコの二重唱のクライマックスくらいしかない。スコアを読みながらこの日の演奏を振り返ると、フォルテとフォルティッシモの音色の違いを全て思い返せるというのは、驚異的である。

第一幕第一場では、この作品のテーマの一つである恋愛と親子愛が、天国的な美しさと優しさで、色彩豊かに描かれていたのが印象的。アメーリアのロマンツァへの導入となる前奏部分では、音楽自体が場を完全に演出できていたのに感心させられる。これにより、劇場全体にスイッチが入った。アメーリアとガブリエーレの二重唱、フィエスコとガブリエーレの対話と、極上の世界が続く。やはり白眉は、シモンとアメーリアによる二重唱。前回は捉えきれなかった陰影に富んだニュアンスが肌に伝わり、ヴェルディによるオーケストレーションの天才的なセンスを初めて体感できた。そして、クライマックスで、ムーティがグッと右腕を持ち上げて溜めを作ると、音楽の高揚は頂点に達し、感動的な瞬間が訪れる。クレッシェンドの運び方と、頂点に達した後のディミニエンドの図り方が完全に計算されているから、安っぽい演歌に成り下がらない。この格調の高さをどう表現すればよいのだろうか。

第一幕第二場には、ムーティの芸術家としての強い意思があった。キャスト陣、合唱、オーケストラともども、凄みを増してゆく。前回の鑑賞時に、オーケストラピットの中の状況を予習できていたため、エッジの効かせ方が平土間席に伝わるサウンドにどのように反映されるのかを具体的に学ぶことができ、感動を覚える。圧巻のクライマックスであった。

第二幕以降は、劇場内の観客の集中力が続いておらず、騒音が多かった。子供の泣き声や、携帯電話の着信音が響いたのには、ガッカリさせられた。こういう流れになると、音楽が化けることはあまり期待できなくなってしまう。ムーティのタクトからは、何とか空気を戻そうという様々な意図が感じられたが、悪循環を断ち切ることができなかった。第二幕以降の仕上がりに関しては、一昨日の上演の方が良かったかもしれない。もっとも、これはあくまでも比較論であり、練り上げられた心情表現の数々は、圧倒的な説得力を持っていた。

20121201-06

キャスト陣に関しては、前回と同様、見事なバランスであったが、フィエスコ役のドミトリー・ベロセルスキーが絶好調で、圧倒的な存在感を示していた。ガブリエーレ役のフランチェスコ・メーリも、伸びがある明るい声で、役柄に合っている。響きの相性が良いのか、オーケストラの内声部と見事にハモっていたのには、驚かされた。アメーリア役のマリア・アグレスタについては、個人的には、第一幕でもう少ししなやかさが欲しいと感じたが、第二幕における筋の通った主張の強さに触れ、今回のキャスティングの意図に納得。シモン役のゲオルグ・ペテアンは、やや小粒ながら、役柄に求められる性格をコンパクトに示し、物語の中にうまく溶け込んでいた。シモン役に焦点を当てるのではなく、5人の主要キャストの間で繰り広げられるドラマに焦点を当てようというムーティの意向によるものであろう。パオロ役のクイン・ケルシーは、出すぎず、しかしアクはきちんと出して、この憎まれ役を見事に演じ、周りを支えていたが、損な役回りのためか、観客の反応は今一歩だった。

アドリアン・ノーブルの演出は、絵画のように美しい舞台。シンプルながら、出演する歌手らが引き立つ。ムーティが指揮する舞台では、演出もオーソドックスかつスマートで、安心して鑑賞できるのが特徴の一つだ。演技面や立ち位置の構成において、棒立ちになる部分も無くはなかったが、各役者の顔の表情はさすがのもので、平土間席で観ると、迫力があった。

20121201-07

カーテンコールにおけるブラボーの数は、一昨日よりも多かった気がする。週末の公演であったため、遠路はるばる駆けつけたファンが多かった模様だ。ただ、同時にマナーの悪い観客も相変わらず多く混じっている。客席からノイズが出るたびに、それを制する「シーッ」という大合唱になるのだが、そもそもこの劇場の観客は、ノイズを出さないということが出来ないものだろうか。この日に座った平土間席では、周囲から絶えず発生するノイズに邪魔をされ、弱音のニュアンスを十分に堪能し切れなかったのが悔やまれる。

終演後は、列車でフィウミチーノ空港に向かい、ホテルに直帰。翌朝4時に起床し、LH243便にてフランクフルトへ。そして、NH204便に乗り継ぎ、帰国。


(公演情報)

Simon Boccanegra
Musica di Giuseppe Verdi

Teatro dell'Opera
Sabato, 1 Dicembre, ore 18.00
Nuovo allestimento

Direttore - Riccardo Muti
Regia - Adrian Noble

Simon Boccanegra - George Petean
Maria Boccanegra (Amelia) - Maria Agresta
Jacopo Fiesco - Dmitry Beloselskiy
Gabriele Adorno - Francesco Meli
Paolo Albiani - Quinn Kelsey
Pietro - Riccardo Zanellato
Un Capitano dei balestrieri - Saverio Fiore
Un’ancella di Amelia - Simge Bűyűkedes

ORCHESTRA E CORO DEL TEATRO DELL’OPERA
スポンサーサイト
[2012/12/02 18:58] | 海外視聴記(ローマ) | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<尾高指揮読響―第521回定期演奏会「マーラー9番」 | ホーム | 欧州行き(12年11月)⑦―マゼール指揮ミュンヘンフィル「ミサソレムニス」>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://mashi1978.blog97.fc2.com/tb.php/167-23b155b4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

mashi1978

Author:mashi1978
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。