ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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尾高指揮読響―第521回定期演奏会「マーラー9番」
12月14日午後7時前、サントリーホールへ。尾高忠明指揮読売日本交響楽団による第521回定期演奏会。マーラーの交響曲第9番が採り上げられた。先月は海外出張のため欠席。読響は1か月半ぶりである。

座席は、いつもの指定席である1階席通路より少し前のセンター。だが、聴こえてくる音の印象が違って感じられる。弦楽器の響きは紗幕を通したかのような曇り空で、金管楽器はそれぞれの立ち位置で別々に鳴っている感じがする。こんなにバラバラだったっけというのが正直な感想だ。

さて、演奏の方だが、序奏部におけるチェロの不整脈とホルンの断片が精彩さを欠いてしまった時点で、この日の演奏の行く末が全て語られてしまっていたように思われる。少なくとも、筆者の期待するマーラーの交響曲第9番からは程遠かった。

尾高と読響による演奏からは、全楽章を通じて、非常に丁寧に練習した痕跡が窺われた。通常であれば、団子状になってグシャグシャに聴こえるところを、細部まで非常に明晰に示したという意味では、一定の成果はあったであろう。

しかし、デジタルな点描画としては成立していても、リズム感は皆無で、音楽としての流れや推進力は全く感じられず、落ち着きのあるシーンでは、時間軸自体が失われていた。まるで大学の講義を聴いているかのような感覚であった。

そもそも、尾高の指揮は、叩きが明晰すぎ、かつ的確すぎるため、オーケストラは巨大な機械のように反応するものの、発せられる音に自発性が宿らない。志向する響きの重心は軽めで、優雅な気品を伴うものなのであろうと推察されるが、造型をきっちりとさせようとするがあまり、額縁をはめ込むかのような硬い打点を叩き込むので、旋律がブツ切りになり、音楽はオープンに広がらず、結果として、一定の枠の中に無理矢理収められてしまったかのような印象になってしまう。

楽章別にみると、例えば、第一楽章は、前述のとおり、緩と急のうち、緩の部分が完全に弛緩し、しかもサンドペーパーのようなざらつきを常に感じさせたので、気分は都会の喧騒のまま。第二楽章では、日本人に苦手な4分の3拍子のリズムに安定感がなく、旋律が前のめりになってしまう箇所も散見される。そもそも音が金属的すぎたのではなかろうか。第三楽章は、重戦車が野原を突進するかのような迫力はあったが、音に凝縮力が足りない。第四楽章のカンタービレはブツ切りで、世界が小さい。冒頭のファゴットのミスは、あり得ない。

第三楽章終盤の盛り上がりや、第四楽章の後半の静寂は、音を客観的に鑑賞するという意味では、聴き応えがあり、感心させられたが、あくまでも「音」であって、「音楽」ではなかった気がした。

読響の技術水準の限界も、今回の演奏をいまいちな印象に拍車をかけた。健闘していたとは思うが、尾高のようなアプローチのもとでは、各パートの細かな瑕が出来上がりに大きく影響する。金管楽器の支えの弱さや、弦楽器の音色の滲みは、もう少しどうにかしてほしかった。また、久しぶりにコンサートマスターとして登壇した藤原浜雄が、いぶし銀の輝きを放ちながら孤軍奮闘していたが、彼自身の独奏にも腕が落ちたなと感じさせる部分があり、また音の粒立ちの点で、コンサートマスターとそれ以外の奏者との間には歴然とした差があり、引退して半年あまりしか経過していないのに、読響の弦楽器セクションとの間で、既に溝のようなものが介在してしまっていたのには、正直驚かされた。

尾高の指揮は、演奏する方にとっては、指揮棒の通りに演奏すればよいので、悩みがなく、非常にwelcomeなのであろうが、歌を重視する筆者の感性には、マッチしなかった。昨年10月にロンドンでロリン・マゼールがフィルハーモニアを指揮して披露した演奏の感銘が大きすぎたのであろうか。いずれにせよ、第四楽章において、ホール全体に響き渡る盛大ないびきの伴奏が入るというオマケが付いて、何とも微妙な感覚のまま、終演。カーテンコールでは、2階席後方から、相撲の行司が発するような雄叫びブラボーが複数発せられたが、あれはサクラか何かか。不自然極まりなかった。


(公演情報)

第521回定期演奏会

2012年12月14日(金) 19:00開演
会場:サントリーホール

指揮=尾高忠明
マーラー:交響曲 第9番 ニ長調
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[2012/12/15 11:38] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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