ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ウィーンリングアンサンブル2013
1月7日午後7時前、サントリーホールへ。恒例となったウィーン・リング・アンサンブルによるニューイヤーコンサート。23回目の来日となる今回は、セカンド・ヴァイオリン、チェロ、ホルンに3人の新しいメンバーが加わった。新しいメンバーとはいえ、いずれもウィーン・フィルでのキャリアは相当なものである。

筆者の確保した座席は、2階RBブロック6列目。デルタではないブロックであったため、舞台の手前側にいたチェロとコントラバスや、舞台中央にいた管楽器に関しては、響きがやや遠く感じられるとともに、若干の時差も生じていたが、ライナー・キュッヒルの真正面というポジションは、そういったデメリットを全て跳ね除けるだけの価値がある。できれば発売開始直後にチケットを購入し、1列目で鑑賞したかったが、こればかりはやむを得ない。

客席の入りは、6割程度であろうか。2階席後方はほぼ全て空席で、1階席後方5列や、2階席LCブロックやLBブロックも空席が目立つ。他方、1階席前方から中央、2階席RBブロックなどは、超満員。来場者の大半がホールの特性と演奏者のキャラクターを熟知していることが窺われる。いわゆる招待客風の聴衆や一見客はほとんど見当たらず、会場内はガチな緊張感で満たされていた。

プログラム前半は、J.シュトラウスⅡの5作品。一曲目のオペレッタ「こうもり」序曲は、折り目正しい楷書体の演奏で、この作品を彼らがワルツやポルカとは別のジャンルの芸術作品として捉えていることが明確に伝わってくる。会場の広さと人数の少なさゆえ、硬さが出てしまう場面もあったが、弦楽器と管楽器の響きの溶け合う瞬間は、彼ららしい魅力に溢れていた。二曲目は、ワルツ「芸術家の生活」。筆者の印象としては、この作品の演奏がこの日のベストであった。一曲目で響きのツボを掴んだのか、じわじわと香りを漂わせるペーター・シュミードルとヴォルフガング・トムベックに誘われて、これぞウィーンという音色が花開く。ふわっと、しなやかに、そして優美に舞うカンタービレは、キュッヒルの独壇場だ。演奏中の客席の集中力の高さと演奏後の爆発的な拍手を受け、彼らにスイッチが入ったのか、三曲目のポルカ・シュネル「浮気心」は、活き活きとした低弦に触発され、ノリノリの演奏に。そして、四曲目のワルツ「加速度」では、冒頭の加速を阿吽の呼吸でさらりと決めると、主部では、軽やかさの中に、表情の多彩さも織り込み、聴き手を唸らせる。何よりも愉しそうである。五曲目のポルカ・シュネル「観光列車」は、定番曲ではあるが、ネタを仕込みつつも、演奏自体は、本気かつ完璧であるのが凄い。この躍動感は、オーケストラによる演奏を凌ぐレベルだ。

プログラム後半は、やや路線を変えて、ヴェルディやツィーラーの作品も加わる。一曲目は、ヴェルディ・イヤーにちなんで、ヴェルディのオペラ・メドレー。「ラ・トラヴィアータ」の主要場面を中心に、「リゴレット」のマントヴァ公爵の持ち歌を混ぜ込んだ構成であった。予想に違わずウィーン訛りのヴェルディで、地中海の澄み切った青空というよりも、ウィーンの森の風景を思い浮かべてしまったが、もはや確信犯であろう。二曲目のツィーラーのワルツ「天国の幸せ」は、デリケートなニュアンスに富んでおり、曲名のとおり、天国的な美しさを誘う演奏であった。続くJ.シュトラウスⅡのポルカ・フランセーズ「クラップフェンの森で」は、ネタ曲として定番ともいえるが、ヴォルフガング・シュルツとペーター・シュミードルの二人組がやりたい放題遊んでいるのを尻目に、弦楽器セクションが二拍子をドヤ顔で決めているのが素敵であった。この作品で彼らが示したポルカのリズムは、重さと軽やかさが見事に融合した非の打ちどころのないものであり、この日随一の仕上がりであった。ツィーラーのワルツ「ウィーン娘」とぶどう畑のギャロップは、やや通好みの作品ではあるが、渋い巧さが冴えていた。そして、弦楽器のみで演奏されたJ.シュトラウスⅠのケッテンブリュッケ・ワルツは、キュッヒルの独演会の様を呈す。J.シュトラウスⅡのオペレッタ「こうもり」からチャールダーシュは、どちらかというと手堅い印象で、化けきらなかったが、これは次の曲への前座であり、最後の曲であるポルカ・シュネル「雷鳴と電光」では、なんとキュッヒルが打楽器奏者に転向し、大太鼓とシンバルを同時に叩くというサプライズ付き。この大太鼓が音楽的に見事に鳴っていたのには、心底驚かされた。

アンコールは、J.シュトラウスⅠのフリオーソ・ギャロップ、ツィーラーのワルツ「楽しめ人生を」、J.シュトラウスⅡのワルツ「美しき青きドナウ」、J.シュトラウスⅠのラデツキー行進曲の4作品。お腹いっぱいである。熱狂的なカーテンコールに包まれながら、演奏者と聴衆の全員が笑顔で帰路に就く素晴らしい演奏会であった。

こうして改めて聴いてみると、ウィーン・リング・アンサンブルが毎年日本でニューイヤーコンサートを開催してくれるというのは、あまりにも贅沢な話だ。この水準の演奏は、現地でもそうそう聴けるものではないと断言できる。少なくとも、ウィンナー・ワルツの踊れない指揮者がタクトを執ったウィーン・フィルのニューイヤーコンサートよりも、はるかに完成度が高いし、魅力的でもある。

彼らは、アンサンブルになると、驚くほどの自発性を発揮する。これは、ウィーン・フィルの舞台上では、なかなか表に出てこない側面だ。キュッヒルがここまで音楽にのめり込んでいるのを見たのは、筆者としては今回が初めてであるし、ハインリヒ・コルの愉しそうな表情も、普段の様子からはあまり想像がつかない。さすがにシュルツとシュミードルは、年齢的な衰えを隠せないが、彼らの持つ味わい深い音色は、唯一無二のものである。なお、今回の新しいメンバー3人は、まだまだ手さぐりの部分も多かったようであるが、回を重ねるごとに変化してゆくであろう。来年のニューイヤーも、ウィーン・リング・アンサンブルで決まりである。


(公演情報)

ウィーン・リング・アンサンブル 日本ツアー 2013
1月7日(月)19:00 サントリーホール

ライナー・キュッヒル(ヴァイオリン)
ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン)
ハインリヒ・コル(ヴィオラ)
ロベルト・ナジ(チェロ)
ミヒャエル・ブラデラー(コントラバス)
ヴォルフガング・シュルツ(フルート)
ペーター・シュミードル(クラリネット)
ヨハン・ヒントラー(クラリネット)
ヴォルフガング・トムベック(ホルン)

J.シュトラウスII :
 オペレッタ「こうもり」序曲
 ワルツ「芸術家の生活」
 ポルカ・シュネル「浮気心」
 ワルツ「加速度」
 ポルカ・シュネル「観光列車」

ヴェルディ: オペラ・メドレー

ツィーラー: ワルツ「天国の幸せ」

J.シュトラウスII : ポルカ「クラップフェンの森で

ツィーラー:
 ワルツ「ウィーン娘」
 ぶどう畑のギャロップ

J.シュトラウスI : ケッテンブリュッケ・ワルツ

J.シュトラウスII :
 オペレッタ「こうもり」から チャールダーシュ
 ポルカ・シュネル「雷鳴と電光」
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[2013/01/09 00:07] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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