ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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大野指揮読響―第556回サントリー名曲シリーズ「アルプス交響曲」
1月9日午後7時前、サントリーホールへ。大野和士指揮読売日本交響楽団による第556回サントリーホール名曲シリーズ。ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番とリヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲が採り上げられた。読響とマエストロ大野の22年ぶりの共演という触れ込みで、チケットは昨年11月半ばには完売であったが、会場内には、ポツポツと空席が散見された。

筆者の座席は、2階RCブロック3列目。全体のバランスは良好だが、RBブロックのデルタ地帯と比べると、響きのピントがややぼけてしまう印象であった。周囲の客席から発せられる種々のノイズによって、鑑賞時の集中力を殺がれやすいのも問題。この日は、馴染みの薄い作品が並んだためか、客席内の緊張感の薄い時間帯が長かった。

プログラム前半は、小山実稚恵を独奏に迎え、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。

マエストロ大野の紡ぎだすダイナミクスレンジの多彩さと奥深さは、数あるこの作品の演奏の中でも随一のものといって過言ではないだろう。オーケストラも、日頃の読響らしくない研ぎ澄まされたスマートな演奏で、これに応える。弱音のニュアンスに長けており、第一楽章序奏部の繊細な響きには、度胆を抜かされた。ホールの静寂までをもコントロールしてしまうマエストロ大野のタクトは、さらに凄みを増している。他方で、ロマン的なニュアンスも適度に発揮され、フォルテの迫力に欠けることもない。しかし、どんなときでも、独奏の存在が常に前面に浮かび上がるようにバランスが図られており、オペラ指揮者としてのマエストロ大野の一面が存分に発揮された演奏であった。

他方で、独奏を務めた小山は、かなり奮闘していたが、この作品が演奏者に課す技術的、音楽的要求の高さを露呈する結果となったようにも思われる。ラフマニノフらしい叙情性は、如何なく発揮されていたが、強奏部は重みはあるが音色が潰れ気味で、音が引き立ってこない。また、個々の音符の洗練度が完璧とまではいえなかったため、複雑に込み入ったスコアが十分には浮かび上がりきらず、管弦楽とのコラボレーションも凡庸な仕上がりにとどまっていた。この作品を物ともせずに弾き切るピアニストは、滅多にいないと思われるが、もし今回の独奏にそのような怪物が現れていたら、オーケストラの好演と相まって、この作品の面白さが倍増していたであろう。

プログラム後半は、リヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲。

この日の演奏は、ここ数年で、マエストロ大野が、ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスの作品を、完全に手中に収めたことを窺わせるものであった。オペラ的なドラマ性と描写性に富み、ダイナミクスのコントロールも外面的にならず、内容が濃い。とりわけ、頂上に到達した際のクライマックスの爆発力は、本当に圧倒的であった。もちろん、精緻な構成と完璧なバランス感覚に裏付けられているため、音楽的な破綻は皆無。加えて、各奏者がベストな状態で音を発せられるように、最善のアウフタクトが示されているのも素晴らしい。ドイツの名立たる歌劇場の常連になることは、時間の問題であろう。

他方で、この作品は、言わずと知れた超巨大編成の作品であり、オーケストラに求められる技術水準も群を抜いて高い。この日の演奏では、致命的な瑕疵はなかったが、読響の技術的なキャパシティ不足が露呈してしまったといわざるを得ない。それでも弦楽器セクションは、まだ善戦していた。4月からコンサートマスターに就任する日下紗矢子の絶妙なリードにより、ニュアンスに富んだヨーロピアンな響きとして、一つに束ねられていた。ベルリンで観たときとは異なり、日下の存在感と巧さが前面に出すぎているようにも感じられたが、ともあれ、ダニエル・ゲーデと日下という偉大なコンサートマスターを新たに迎える読響の弦楽器セクションは、今まで以上に頑張ってほしいものである。他方、管楽器セクションは、楽譜をこなすことで一杯いっぱいで、それらを音楽的な表現に結びつけるレベルには到底及んでいなかった。特に、頂上のクライマックスを通過し、下山を始めたあたり以降、木管セクションの音程は壊滅状態で、金管セクションもスタミナ切れが明白であった。全体として、マエストロ大野のタクトから期待される音の半分も鳴っていなかったのではなかろうか。この作品の場合、世界の超一流オーケストラでなければ、満足のいく演奏は期待できないのかもしれない。

この日の演奏会は、読響による演奏会の中でも、かなり上位に入る出来であったとは思われるが、マエストロ大野による演奏会としては、いま一歩の水準であった。5月に予定されるウィーン交響楽団の日本ツアーにおける共演が待ち望まれる。


(公演情報)

第556回サントリーホール名曲シリーズ

2013年1月 9日(水) 19:00開演
会場:サントリーホール

指揮=大野和士
ピアノ=小山実稚恵

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 二短調 作品30
R.シュトラウス:アルプス交響曲
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[2013/01/12 20:58] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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