ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 |
ネゼ=セガン指揮ロッテルダムフィル―来日公演①
1月31日午後7時前、サントリーホールへ。ヤニック・ネゼ=セガン指揮ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団による来日公演。知人からの紹介によりチケットを入手。この日は来賓も多く、会場内はいつもの風景よりも華やいだ雰囲気に包まれた。

筆者の座席は、1階席7列目中央。ヴァイオリンが生音になってしまうというデメリットはあるが、この日の目玉である庄司紗矢香の演奏を堪能するにはベストの場所といえる。

プログラム前半一曲目は、シューマンの歌劇「ゲノフェーファ」序曲。シューマンらしい渋い作品である。

技巧的な観点からみても地味に難しく、この作品を細部まで仕上げるのは至難の業といえよう。ネゼ=セガン指揮のロッテルダム・フィルは、この日が来日公演初日であり、初日の幕開けを飾るという観点からは、別の作品の方が無難だったのではなかろうか。

冒頭の序奏部から響きが落ち着かず、主部に入っても、弦楽器を中心に、タテの線の乱れや音程の滲みが絶えない。後半は一気になだれ込み、活力を感じさせたが、勢いだけで押し切った感が否めない。オーケストレーションがシンプルな部分で、弦楽器の中音域からの柔らかいボリューム感や、木管楽器の響きの華やかな膨らみを垣間見ることができたのがせめてもの救いであった。

プログラム前半二曲目は、庄司紗矢香を独奏に迎え、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番。プロコフィエフの真骨頂である孤高の世界観。高い集中力と深い精神性が正面から問われる。

庄司が最初の旋律を静かに奏で始めると、会場の空気が一気に緊張感を増し、そしてオーケストラの音色が変わった。1階席7列目の筆者は、庄司の語りに釘づけであった。

第一楽章における音楽的な統一感と完成度の高さは、筆者がこれまでに接した演奏の中でも出色のレベルにあり、音楽の構造が非常に明晰に浮かび上がっていた。個々のパッセージの間に働く引力を実感できたのが素晴らしかった。第二楽章は、冒頭の静寂で息をのむ深遠さを演出すると、その後は、庄司らしい軽やかさと愛らしさを兼ね備えた優美な旋律美が満載。音色の重心のコントロールが抜群で、重すぎず軽すぎず、適度なレンジの中で、完璧に音楽を奏でていた。格調の高いポリフォニーの世界であった。そして、躍動的な第三楽章では、庄司が仕掛けまくりで、ネゼ=セガンを挑発し続ける。面白すぎであった。

作品を完全に手中に収めた庄司は、オーケストラを瞬時にして自分の世界観へと引き寄せるだけのオーラを纏っており、ますます高みへと昇り続けている。ガチャガチャと弾き散らかす多くのヴァイオリン奏者とは、異次元にある。実に素晴らしかった。

ちなみに、アンコールは、バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番からアダージョ」。バロック的なフレーズ処理に、庄司らしいセンスが光るも、音楽的に整理し切れていないと思わせる瞬間もあり、さすがの庄司も、弾き終わった後は、多少はにかみながらの退場であった。

プログラム後半は、ブラームスの交響曲第4番。

朗々と流れる優雅な響きの帯は、ネゼ=セガンの特長であり、オランダのオーケストラの魅力の一つといえる。軽く繊細なタッチの弦楽器と、華やかな膨らみと色合いの管楽器は、ブラームスにおいても十分に堪能できた。ただ、音楽的にもアンサンブル的にも問題は多く、全体としてはかなり低調な仕上がりであったと思われる。ネゼ=セダンのテンポ設定にも強引さや唐突さを感じさせる箇所が散見された。

第一楽章提示部は、表情のつけ方がカルロス・クライバーそっくりで、さすがに吹きそうになったが、それはともかくとして、問題は展開部以降。アンサンブルが弛緩し始め、プログラム前半のプロコフィエフでは感じられた音楽的な凝縮が徐々に失われていった。予想に違わず、再現部後半からコーダにかけては、若さでもって一気に突入するが、ネゼ=セガンのグリップが弱いので、崩壊寸前の一歩手前ぐらいにまで崩れてしまっていた。第二楽章冒頭は、木管楽器のコラールの音程と和声感がはまらない。中間部の弦楽器がオランダ郊外の草原をイメージさせるような美しい情景を描くも、やはり後半はパワープレーに陥ってしまい、アンサンブルの精度が低い。第三楽章も、出だしは悪くなかったが、後半はぐしゃぐしゃになった。第四楽章に至っては、シャコンヌのテンポ感と拍子感がせわしなく、最後まで聞き通すのが辛かった。タテの線が乱れる場面も多く、聴いていてヒヤリとさせられる瞬間に何度も出くわした。

予想するに、今回の来日公演は、スケジュールが相当タイトであり、十分なウォームアップをする余裕がなかったのだろう。ツアー初日に起こりやすい問題がすべて露呈してしまったのは、彼らにとって不幸なことといえよう。プログラム前半のプロコフィエフで集中力を使い切ってしまい、プログラム後半のブラームスまで気持ちを維持できなかったという事情もあったのかもしれない。アンコールに演奏されたブラームスのセレナード第1番の「スケルツォ」も、やや蛇足気味であり、最後までやや残念な印象を引きずってしまったように感じた。


(公演情報)

2013年1月31日(木)開場/18:30 開演/19:00
会場:サントリーホール

管弦楽:ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
指揮 :ヤニック・ネゼ=セガン
ソリスト:庄司紗矢香(ヴァイオリン)

曲目
シューマン:歌劇『ゲノフェーファ』序曲 Op.81
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 Op.63
ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 Op.98
スポンサーサイト
[2013/02/01 19:32] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<ネゼ=セガン指揮ロッテルダムフィル―来日公演② | ホーム | セゲルスタム指揮読響―第522回定期演奏会「モーツァルト&マーラー」>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://mashi1978.blog97.fc2.com/tb.php/173-a291a019
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

mashi1978

Author:mashi1978
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。