ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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マゼール指揮ミュンヘンフィル―2013来日公演②
4月17日午後7時前、サントリーホールへ。ロリン・マゼール指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団による来日公演。チャイコフスキー、パガニーニ、ストラヴィンスキーの作品が採り上げられた。会場内には、五嶋龍が目当ての女性客とBMWの招待客が目立ち、マゼール御大の芸術を鑑賞するのにふさわしい殺伐とした空気感が不足していた。招待客がしばしばノイズを発生させるし、プログラム後半では補聴器から漏れる高周波音が遠くから聞こえてきてしまい、せっかくの演奏の魅力の何割かが失われてしまったように感じられた。

筆者の座席は、前回と同じく1階席13列目上手側中央寄り。この日は編成が大きかったので、弦楽器中心の響きと臨場感を体感するには適度な距離感であった。

プログラム前半一曲目は、チャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」。マゼール御大は冒頭からアクセル全開で、空前絶後の超名演であった。

冒頭の木管楽器の響きから、ロシア風のハーモニーがたまらない。和声の色合いと各モチーフのディテールが変幻自在に浮かび上がり、作品に秘められた奥深さがマックスに引き出される。ドイツのオーケストラらしい重厚さと機能性も如何なく発揮され、フォルテにおけるアンサンブルも引き締まっている。力技に拘泥しないのが何よりも素晴らしい。格調高く、そして朗々としたカンタービレには、各奏者の想いが存分に注がれ、琴線に触れる瞬間がたくさんあった。20分あまりという短い時間に凝縮されたドラマは、オペラ一演目分に匹敵するほどの感動を与えてくれた。

プログラム前半二曲目は、五嶋龍を独奏に迎えて、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番。プログラム構成という観点からは、この作品は蛇足であったといわざるを得ない。

そもそも五嶋の独奏は、豊潤な響きのミュンヘンフィルを前にすると、痩せこけた細い音色で、しかも硬い。技術的な綻びや音程の乱れも、相当数発生しており、許容範囲を超えていた。マゼール御大の率いるミュンヘンフィルの相方としては、あまりに役不足であったのではなかろうか。マゼール御大は、つまらないオーケストラパートをできる限り面白くしようという観点から、おもちゃを扱うかのように遊んでいたが、作品自体の内容が薄いので、聴衆としての満足度は低かった。大人の事情により挿入された演目と思われるが、この作品が入ったことで、プログラム前半の演奏時間が長くなりすぎてしまい、会場内でプログラム後半に向けて緊張感が削がれてしまったのは、非常に残念な結果であった。

プログラム後半は、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」。パーフェクトとはいえないものの、100点満点でいえば95点くらいの仕上がりであり、この作品の演奏としては、驚異的なレベルにあったといえる。

第1部は、前半は割とスッキリとした仕立てで、爽やかなイメージであったが、徐々にマゼール節が牙をむきはじめ、後半では絶頂のクライマックスが築かれる。第2部は、前半の弱音部において圧倒的な静寂が演出されたのを皮切りに、マゼール節が随所に編み込まれた名演で、あっという間に結末に至ったというのが正直な印象だ。この日の演奏は、この作品が初演された当時の衝撃に値する感覚を聴衆に呼び起こさせたという意味で、とんでもない演奏であったように感じた。音の解像度の高さと、情報量の多さ、その構成力の確かさと、全体のバランスは、期待通りの水準にあり、スコアのテクスチュアをビビッドに描き出していたが、そういった技巧的な観点とは別に、理知的かつ冷徹に表現することに徹し、泥臭さや人肌感覚をあえて排除したマゼール御大の演奏アプローチは、手垢にまみれた近時の演奏とは異次元のものであり、聴衆の心の平穏を奪うものであった。ミュンヘンフィルの持つ明るさと自発性がかえってこの作品の異常性を際立たせたことも、この日の演奏ではプラスに働いていたといえよう。演奏終了後も、自らが受け取った衝撃があまりに大きかったので、すぐには拍手やブラボーを切り出すことができなかった。

満場の拍手に迎えられて演奏されたアンコールは、何とビゼーの「アルルの女」第二組曲からファランドール。プログラムのメイン曲目とは表情が真逆になり、人肌の温かさが滲み出てきて、筆者の心はようやく落ち着きを取り戻した。この日の演奏会は、こうした聴衆の心の動きを見越した上での演奏であり、マゼール劇場の完全勝利といって過言ではない。満足感が帰宅後に徐々に湧き上がってくる不思議なコンサートであった。


(公演情報)

2013年4月17日(水)19:00開演
会場:サントリーホール

管弦楽:ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ロリン・マゼール
ヴァイオリン:五嶋龍

曲目
チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
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[2013/04/18 00:12] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(5) |
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コメント
はじめまして。
わたしは大阪にいきましたが、良かったですよ。
やはり、ノイズはありましたね。

アンコールはニュルンベルクのマイスタージンガーでした。
[2013/04/18 11:18] URL | ほがらか #- [ 編集 ]
コメントいただきありがとうございます。
大阪のワーグナー&ブルックナーのプログラムも名演だったようですね。同じ演目を以前にミュンヘンで鑑賞しましたが、当時よりも進化していそうな気がします。
客層によってホールの雰囲気が変わってしまうのは、致し方ないことですが、やはり残念ですね。
[2013/04/18 13:08] URL | 筆者 #- [ 編集 ]
レジ袋の音までしましたね(・ω・)ノ

ブルックナー三番からアンコールまでミュンヘンフィルのメンバーがノリノリで、楽しく聴けました。
[2013/04/18 16:11] URL | ほがらか #- [ 編集 ]
こんばんは。

私も17日伺いました。

マゼールは、ニューヨークフィル、トスカニーニ、と実際に聞いて以来、すっかりファンで、

今回も期待を裏切らない、彼のロメジュリに、春祭!
そして、マゼールらしさ満点のファランドール!!素晴らしかったです!

また、五嶋龍のパガニーニの三楽章のオケ・ピチカート伴奏の盛り上がりも
初めて耳にしたもので、大興奮でした!


概ね、Y島くんのコメントに大賛同でしたが、
五嶋龍のコメントに対してのみ、『?』が頭に飛び交いましたので、下記、コメント致します。

彼の音が、「痩せこけて細い音色で、しかも硬い」ということですが、

まぁ、それは、個人の主観なので結構で、Y島くんの感性を尊重致します。

しかし、次のコメントに関しては、さっぱり理解できません。

「技術的な綻びや音程の乱れも、相当数発生しており、許容範囲を超えていた。」

とのことですが、
私は、このパガニーニの曲は、もちろん熟知しており、
当日はミニチュアスコアを片手に聞いておりましたが、音程の乱れは殆どなく、

技術的には、彼以上に弾ける日本人は居らず、
また、世界的に見ても、彼の持つ技術は、トップクラスであるのは、明白です。

当日、私は、日本を代表する音楽大学の弦学科主任教授と共に拝聴しておりましたが、
彼女は、Y島くんのコメントとは真逆の感想を述べていらっしゃいましたよ。

「五嶋龍くんの演奏は初めて聞いたが、聞いた事もないほどの音量で、とにかくミスがなく自由。
こんなのは初めて!」


Y島くんも、色々と実際に聞きに行かれて経験を積まれているようですが、
ヴァイオリンに関しては、未だ未だ、論評されるには未熟と言えると考えます。

まだ、御若いですから、これからはオペラだけではなく、ぜひ、ヴァイオリンも聞かれて耳を養われて下さい。

因みに、音程の面では、ヘンリク・シェリングのCDを聞かれることを御薦め致します。

また、生き生きとした持ち味という点では、
ハイフェッツ、パールマン、クレメル、ムッターといったラインナップでしょうか?

ぜひ、御拝聴ください。

Y島くんなら、
健全で公正な競争状態を保持するために、独占禁止法があるのは御存知のことと思いますが、

論評については、そのような禁止法が無い分、責任あるコメントをするべきだと、
たとえ個人のブログ内であっても、そうあって然るべきと考えます。

貴方は、音楽について有識者であるという設定で論評されているブログですから、尚更です。

また、人気があってチケットがあまりに売れる、という「大人の事情」は、
音楽の裾野を広げるための、然るべき方法と、ポジティブに捉えていいのではないですか?

どのような理由からかわかりませんが、
日本から出た、久々の国際競争力有り得る若手ソリストの足を引っ張るようなブログを、
個人の主観で書かれるのではなく、

拍手を以って応援するのが、我々の責務と思います。

日本は、日本国内でしか通用しない、普遍性のない価値観に毒され過ぎです。
世界のオペラに耳を傾けられてきたY島くんでしたら、よくお分かりでしょう?


世界的に超一流と認められた日系クラシック演奏家は、
未だかつて、小澤征爾さんと内田光子さんと五嶋みどりさんだけです。

因みに、私は音楽の専門的教育を海外で修士まで受け、
かなり精密な絶対音感を、もちろん、保有しております。

取り急ぎ以上です。
[2013/04/26 00:05] URL | objective lady #- [ 編集 ]
長文にわたるコメントを頂戴し、誠にありがとうございました。
当方の記載に読み手に誤解を招く点や不快な思いを抱かせる点が含まれていたとすれば、その点はお詫びいたします。
ご指摘の点は、真摯に受け止めさせていただきます。
期待が高かっただけに、また、マゼール指揮ミュンヘンフィルという特別なパートナーとの協演であったがゆえに、期待したほどではなかったという意味で、否定的なコメントをしてしまったと振り返ります。私自身がヴァイオリンを弾くことから、ヴァイオリンの独奏に対しては、ついつい厳しい感想を抱きがちであるという事情もあるように思います。

数点補足すると、「痩せこけて細い音色で、しかも硬い」と感じたのは、もしかすると私が聴いた座席の固有の問題かもしれません。
ご存知のとおり、サントリーホールは、座席の位置によって聴こえ方が全く変わってきますが、私の座席は、1階席13列目上手側であったため、ヴァイオリンの独奏からは最も遠い場所の一つです。カーテンコールでは、どちらかというと、1階席下手側前方の客席が沸いていたように感じましたが、そうした音響面での差異が背景にあった可能性は考えられます。

この日の彼がかなり健闘していたことは、確かです。相対的にみれば、かなり良い線を行っていたとは思います。
ただ、誤解を恐れずに述べれば、個々のパッセージを仕上げることでとりあえずは満たされており、ビシッと一本筋が通った演奏にまでは至っていなかったのではないかと感じました。
また、音を外してはいないとはいえ、ムラや揺らぎはあったと記憶しており、例えば、重音が連続する箇所など、倍音が一気に花開くはずのところ、どうも本来の演奏効果が発揮されていないようにも感じました。
とはいえ、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番は演奏不可能なほどに難しい作品であるため、理想や完璧を求めることはお門違いということかもしれません。
ここから先は好みの問題ですが、活きのよい演奏は、それはそれで魅力的ではあるものの、個人的には、半歩下がって作品と向き合うタイプの演奏を好みますので、この日の演奏に関しては、満足度はあまり高くはありませんでした。

加えて、この日の会場の雰囲気は、土曜日とは明らかに異なりました。
マゼール指揮ミュンヘンフィルの演奏を聴く環境としては、客席内の落ち着きが不足していました。
終演後のサイン会の行列には、若干の違和感を覚えました。もちろん、これは日本に限らず、海外でも時々目にする光景ですが。
マーケティング上の都合もあるのかもしれませんが、せっかくの機会なので、マゼールとミュンヘンフィルの世界を、腰を落ち着けて鑑賞したかったというのが、私自身の率直な想いです。
[2013/04/27 15:53] URL | 筆者 #- [ 編集 ]
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