ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 |
チョン指揮フェニーチェ歌劇場―日本公演2013特別コンサート「リゴレット」「椿姫」
4月18日午後7時前、東京文化会館へ。チョン・ミョンフン指揮フェニーチェ歌劇場による日本公演2013特別コンサート。「リゴレット」の抜粋と「椿姫」の第二幕全曲が演奏会形式により採り上げられた。会場内には、音大生や来賓に混じって、コアなオペラファンも少なからず見受けられた。ノイズがほぼゼロであったのも良い。

筆者が確保した座席は、1階席L8列中央。段々畑の中腹で、2階席の屋根が被らないギリギリのポジションである。楽器のバランス、歌手の臨場感、合唱との距離感など、全てが狙い通りであった。

今回の来日公演におけるフェニーチェ歌劇場メンバーの気合いの入り方は尋常ではなく、現地公演よりもテンションが高いように感じられた。ツアーならではの熱気が伝わってくる。この日は、東京文化会館の優れた音響を味方につけ、非常に高水準の演奏を繰り広げた。

プログラム前半は、「リゴレット」からの抜粋。前奏曲が落ち着いた趣で厳粛に演奏されると、第一幕からジルダとマントヴァの二重唱に続き、ジルダのアリア。ジルダ役のエカテリーナ・バカノワとマントヴァ役のシャルヴァ・ムケリアは、明るく若々しい声で聴衆を魅了する。表情にやや硬さがあったが、手堅く難所をクリアしていた。続いて、一糸乱れず演奏された第一幕の男声合唱は、筆者のテンションを一気に高めた。第二幕からマントヴァのアリア、合唱、カバレッタが演奏され、チョン・ミョンフンらしい劇的な高揚も現れる。第三幕からは有名なカンツォーネ、そして四重唱が採り上げられたが、最後の四重唱は、アンサンブルとして完成度が高く、聴き応えがあった。チョン・ミョンフンの指揮は、全体を通じて、どちらかというと、ヴェルディの初期から中期にかけてのシンプルな響きを志向しており、室内楽的なアンサンブルの面白さが引き立っていた。

プログラム後半は、「椿姫」の第二幕全曲。これは、筆者の知る限り、暫定第一位と断言できる名演であった。緩急の差を大きくとるチョン・ミョンフンの指揮は、ときに空回り気味になることがあるが、この日の演奏では、音楽面で全ての歯車が噛み合っていたし、歌手が無理を強いられる瞬間もなかった。プログラム前半の「リゴレット」と比べると、中期から後期にかけてのシンフォニックな創りで、スケールはやや広めにとられていたが、「これぞイタリア」という音色の軽やかさや明るさが随所に輝いており、響き、音色、呼吸のどれをとっても、歌手陣との相性は抜群である。歌劇場のオーケストラの面白いのは、通常抜粋と異なり、幕を通して演奏する場合には、自ずとボルテージがあがり、聴衆の心をグッと惹きつけるオーラを発する点である。歌手陣のノリも、コンサートというよりも、オペラそのものを演ずる方向にシフトしており、表現力が格段に上がっていた。ヴェルディの作品が兼ね備えたポテンシャルは、無限大である。どの瞬間も素晴らしかったが、音楽的な表現力と説得力という面で、ヴィオレッタとジェルモンの二重唱は特に素晴らしく、涙なしには聴けなかった。また、長大なフィナーレでは、引き締まったテンポ感と緊張感を基礎にしつつ、適度なカンタービレと揺らぎが交錯し、チョン・ミョンフンの卓越した構成力が見事に開花した。ヴィオレッタ役のエカテリーナ・バカノワ、アルフレード役のシャルヴァ・ムケリア、ジェルモン役のジュリアン・キムの3名は、持ち前の美声と伸び伸びとした表現力で、プログラム前半からは見違えるほどであった。

フェニーチェ歌劇場はやや落ち目とも言われているが、この日の演奏を聴く限りではそのような懸念はただの杞憂であった。リラックスして発した音や声が、見事に立ち上がり、全体として飽和するという感覚は、イタリアオペラの音色の王道だ。筆者が直接体感した中では、他にはロッシーニオペラフェスティバルにおけるボローニャ歌劇場メンバーによる上演くらいであろうか。アンサンブル面でも、単に縦横のブレがないというレベルの話ではない。ミクロに見れば、脈々と流れる時間軸の中に、細部まで磨かれた個々の言葉や音符が適度に詰まっており、それぞれが活き活きと物語るし、マクロに見れば、オペラのストーリーの青写真に適うバランスを保ちながら、全体が進行する。これらがチョン・ミョンフンの功績であることは言うまでもないが、メンバー全員の身体の中に、ヴェルディの作品が自分の言葉のように沁み込んでいるからこそできる芸当ともいえる。「僕が何も言う必要がない」「全員が一言一句を理解しています」「ここではすべてを共有している感覚がある」「とても自然なこと」と語るチョン・ミョンフンの言葉は、事の本質を見事についていると思われる。グローバル化が進む音楽業界において、ロッシーニからヴェルディへと続くイタリア本来の音色がきちんと残っているということは、貴重なことであり、しかも、その持ち味が、チョン・ミョンフンのような素晴らしいセンスの持ち主との共演により、現代にも通ずる形で発展的に継承されてゆくということは、喜ばしいことといえよう。

アンコールは「椿姫」より「乾杯の歌」。カーテンコールでは、ステージ上で大盛り上がりのメンバーに対して、熱狂的な拍手が惜しみなく贈られた。明日は日本公演の最終日「オテロ」。今回のツアーの集大成として、とんでもない上演を鑑賞できるに違いない。


(公演情報)

フェニーチェ歌劇場 日本公演2013「特別コンサート」

2013年4月18日(木) 19:00開演
会場:東京文化会館

曲目
ヴェルディ:
「リゴレット」より抜粋
「椿姫」より第2幕

指揮:チョン・ミョンフン
出演:エカテリーナ・バカノヴァ、シャルヴァ・ムケリア、ジュリアン・キムほか
演奏:フェニーチェ歌劇場管弦楽団
合唱:フェニーチェ歌劇場合唱団(合唱指揮:クラウディオ・マリノ・モレッティ)
スポンサーサイト
[2013/04/19 00:29] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<チョン指揮フェニーチェ歌劇場―日本公演2013「オテロ」 | ホーム | マゼール指揮ミュンヘンフィル―2013来日公演②>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://mashi1978.blog97.fc2.com/tb.php/184-e82aa41f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

mashi1978

Author:mashi1978
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。