ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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欧州行き(13年4月)②―サンティ指揮チューリッヒ歌劇場「ファルスタッフ」①
4月26日、午前9時40分発のBA712便にて、ロンドンからチューリッヒへ。チューリッヒ空港での入国審査に時間を要するも、午後2時前には、中央駅前のホテルリマートホフにチェックインできた。立地上の利便性をお金で買ったという感じだろうか。悪くはないが、設備面はかなりチープであった。

この日のチューリッヒは、初夏を思わせる陽気で、日中は半袖でも過ごせるくらいであった。中心部にある百貨店グローブスの地下で、晩酌用のスイスワインとチーズを入手し、SWISS CHUCHIで遅めのランチ。グリーンアスパラガスのクリームパスタをさっと食して、ホテルに戻る。

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午後7時すぎ、チューリッヒ歌劇場へ。ネッロ・サンティ指揮によるヴェルディ「ファルスタッフ」初日。2011年3月新演出の再演だが、劇場内はプレミエ時に匹敵するほどの熱気に溢れていた。

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筆者の座席は、Parkettの1列目中央。マエストロ・サンティと握手ができるほどの距離感で、マエストロが指揮するときの呼吸や顔の表情まで間近に拝むことができる最高のポジションであった。この日のオーケストラは、下手側に弦楽器、上手側に管打楽器を寄せた配置のため、筆者の座席には極上のバランスで届く。弦楽器は10型で小ぶりながらも、状態が良いのか、いつも以上にまとまりのある充実したサウンドを奏でていた。

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マエストロ・サンティの「ファルスタッフ」となれば、素晴らしい仕上がりになることは容易に想像ができたが、この日の上演は、圧倒的な名演のオーラに包まれていた。マエストロの気迫は、ここ数年では随一であり、ヴェルディがこの作品を作曲した年齢を超えたマエストロが、あたかも自らの集大成として挑んでいるかのような様相を呈していた。

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音楽的には、何よりも、歌のみならず、楽器の奏でるあらゆるモチーフまでもが、気品のある活き活きとしたイタリア語に聴こえてくるのが神業の域にあった。ここはチューリッヒ歌劇場であるから、普通に演奏したらこのようなイントネーションは生み出されない。周到なリハーサルを経て、理論的に造型された最高の自然体。イタリア・オペラの真骨頂だ。

そして、作品に含まれる喜怒哀楽の要素を120%引き出したマエストロのタクトの素晴らしさ。この日は特に、マエストロの顔の表情に釘付けとなった。「ファルスタッフ」といえば、トスカニーニの歴史的名演が思い出されるが、マエストロ・サンティの指揮の下では、トスカニーニの男性的生命力に加え、笑顔、優しさ、幸せといった表情も随所に織り込まれており、ロッシーニやドニゼッティのような明るさも垣間見られる。「ファルスタッフ」という作品の中に、マエストロ自身の歩みが多角的に投影されていると感じた。

場面展開の自然さや、全体の構成力など、芝居としての完成度も、申し分ない。音楽的にはすこぶる真面目なのだが、芝居としての喜劇性と相反せず、むしろ絶妙なコラボレーションに発展していたのは、マエストロの包容力ゆえであろうか。特に心に残っているのは、第一幕第二場の日常会話の明るさと軽やかさ、第二幕第一場のフォードによる独白の緊迫感と彫りの深さ、そしてナンネッタとフェントンの純愛に照準を合わせたアンサンブルの組立てなど。

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スヴェン・エリック・ベヒトルフの演出に関しては、チューリッヒ歌劇場らしいモダンなファッショナブルな舞台で、とてもセンスがよい。演技面では、笑いを誘う要素がふんだんに盛り込まれていたが、嫌らしさや不自然さは感じなかった。設定を現代に置き換えることによって生ずる若干の齟齬は、さりげなくカバーされていた。

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なお、個人的に勉強になったのは、マエストロのアウフタクトとは異なるテンポで歌手陣が歌い始めた場合の対処術。こうしたやり取りを眼前で見られるのは、初日ならではである。

キャスト陣も大変充実していた。錚々たるラインナップだが、これだけのメンバーが一体となって本気を出すと、ものすごいことになる。ファルスタッフ役のアンブロージョ・マエストリは、現代最高のファルスタッフであり、その役者ぶりは他の追随を許さない。フォード役のマッシモ・カヴァレッティは、アンサンブルの中での立ち位置を心得つつ、魅せる場所では心に迫る歌唱で、観客を魅了する。アリーチェ役のエレナ・モシュクは、やりたい放題のファルスタッフを相手に、貫録のある歌唱と演技で全体を引き締める。クイックリー夫人役のイヴォンヌ・ナエフは、この役柄に相応しい刺激をもたらす。ナンネッタ役のセン・グオは、息の長いフレージングで、ロマンチックな表情を浮かび上がらせていたのが特筆される。第三幕第二場で、マエストロのタクトに乗れず、やや拡散気味になってしまったのが惜しい。相方のフェントン役のハヴィエル・カマレナは、やや粗削りながらも、勢いのある歌唱で、観客の支持を集めていた。

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カーテンコールはブラボーの嵐だが、やはり最大の賛辞を受けたのは、言うまでもなくマエストロ・サンティ。満場の客席から喝采を受ける際、余韻に浸るかのように、しばらくの間、静かに客席を見つめていたマエストロ・サンティの立ち姿が非常に印象的であった。

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終演後は、ホテルに直帰し、準備しておいた赤ワインとチーズでしばし余韻に浸る。


(公演情報)

Falstaff
Giuseppe Verdi

26 Apr 2013, 19:30

Musikalische Leitung: Nello Santi
Inszenierung: Sven-Eric Bechtolf

Mrs Alice Ford: Elena Moșuc
Nannetta: Sen Guo
Mrs Quickly: Yvonne Naef
Mrs Meg Page: Judith Schmid
Sir John Falstaff: Ambrogio Maestri
Ford: Massimo Cavalletti
Fenton: Javier Camarena
Dr. Caius: Michael Laurenz
Bardolfo: Martin Zysset
Pistola: Dimitri Pkhaladze
Page des Falstaff: Elias d'Uscio
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[2013/05/06 19:01] | 海外視聴記(チューリッヒ) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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