ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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大野指揮ウィーン交響楽団―来日公演①「ブラームス」
5月13日午後7時前、サントリーホールへ。大野和士指揮ウィーン交響楽団の来日公演。この日はブラームスを中心に据えたプログラムである。

ホール内には2階席Cブロックを中心にまとまった空席があり、入場者数は6、7割と見受けられたが、ステージに近い座席にはコアなファンが多く詰めかけ、熱気に満ちていた。演奏中も基本的には静寂が保たれており、音楽に集中できる環境が整っていた。

筆者が発売初日に確保した座席は、2階RBブロック6列目。いわゆるデルタの真ん中である。マエストロ大野が指揮する場合、音の解像度の高さが期待できるため、デルタでの鑑賞が望ましい。この日は、入場者数がやや少なかったことから残響が長めであり、2階席後方では響きすぎてしまったのではないかと想像する。左右のバランスが若干崩れること、視覚的に独奏者と指揮者が重なってしまうことが玉に瑕だが、豊かな残響の中で細かな音の粒がクリアに引き立ち、マエストロ大野とウィーン交響楽団の紡ぎだす響きの魅力が存分に味わえるポジションであったといえる。

プログラム前半一曲目は、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」序曲。彼らからしてみれば、「まずはご挨拶を」といったところであろうか。ホール内にウィーンの風を吹き込むという趣旨は全うされていた。ただ、マエストロが志向するすっきりとした、ある意味でイタリア的なスタイルが、オーケストラと共有しきれていないと思われる箇所もあり、音楽の運び方に微妙なズレも窺われた。ウィーンの感覚からすると、もう少しゆったりと歌いたいところなのであろう。

プログラム前半二曲目は、庄司紗矢香を独奏に迎え、ブラームスのヴァイオリン協奏曲。一週間前にウィーンのコンツェルトハウスにおいて大絶賛された曲目である。

これは素晴らしかった。「協奏曲」というコンセプトを見事に具現化する協演であり、インスピレーションと刺激に富んでいた。

庄司の独奏が技術的にほぼパーフェクトであることは言うまでもないが、今回、特に素晴らしかったのは、重厚な質感と、穏やかなカンタービレが、圧倒的な存在感で打ち出されていたこと。気迫が先行して、低弦の響きがやや粗くなる場面もあったが、普段と比べると楽器自体もよく鳴っていたし、高音の艶と伸びも申し分なかった。ウィーン交響楽団の紡ぎだす柔らかみのある明るく豊かな音色を背景に、同系色の輝きを発する独奏パートの音符の数々は、この作品の魅力を120%引き出すものであったといえる。このような演奏は、単に楽器が弾けるだけではなし得るものではない。音色の方向性や音楽的なニュアンスを揃えつつ、自らが主張できる話法を会得するまでには、ウィーン風の演奏スタイルに関する相当量の研究と試行錯誤の繰り返しが求められるはずだ。今回の機会を通じ、ウィーンの語法を完全に吸収し、そして自らの音楽表現と同化させることに成功したのであろう。庄司の呼吸の自然さ、並はずれた作品構成力、そして本番ならではの仕掛けに、オーケストラのテンションは上がりまくりであり、鳥肌の立つような名演が生み出された。

爆発的な拍手に包まれたカーテンコールを受けて演奏されたアンコールは、マックス・レーガーのプレリュード(ト短調)。ブラームスの延長線上にある見事な締めくくりであった。

プログラム後半は、ブラームスの交響曲第4番。王道中の王道である。ウィーン交響楽団の伝統に最大限の敬意を払いつつ、最後には奏者全員を自らの世界観に惹き込んでしまう、マエストロ大野の驚くべきカリスマ性がそこにはあった。タクトを振る部分とあえて振らない部分の峻別が見事で、オーケストラの流れに委ねつつも、絶妙のポイントでキューを出し、奏者の感情を煽る。特に、第三楽章以降は、圧倒的であった。

解釈面でも秀逸であった。実は、この作品で一貫性を維持することは、意外に難しい。色々なエッセンスが含まれているため、ともすると寄り道とも思えるような即興的表現が前面に出てしまい、凝縮力が損なわれることがある。また、勢いに任せると、全体設計から逸脱する粗さが生じてしまう。しかし、この日の演奏では、音楽の軸がブレる瞬間はなく、最初から最後まで音楽が脈々と流れ続けた。ブラームスにおけるウィーン風の溜めやフレージングも存分に発揮される一方で、細かい音符はクリアかつ淀みなく進行しており、妙な凸凹が発生する瞬間もない。大野自身はこの作品の終楽章について、「各パートが深く綿密に結びつきながら、それが怒涛のようにすすみ、最後には大聖堂の大伽藍を築きあげてゆく」と説明するが、このスタンスは全楽章を通じて再現されていた。ウィーンの伝統を踏まえつつ、奇を衒わないオーソドックスな演奏に聴こえるよう、様々な仕掛けをさりげなく仕込むことによって生み出されたこの日の演奏は、実に新鮮であり、説得力があった。

マエストロ大野とウィーン交響楽団に関しては、響きの面での相性の良さも感じられた。低めの重心から縦に拡がる響きをバランスよく、ときには開放的に鳴らすことで、ウィーン風の格調の高さと音楽的な伸びやかさが生まれていた。管楽器から息の長い伸びやかなカンタービレを引き出すあたりは、オペラ指揮者としての手腕を感じさせる。細部の流れと見通しの良さはマエストロ大野の持ち味であり、これらが総合的に組み合わさった結果、サントリーホールのステージ上からは、温かさに満ちた立体的な音像が生み出されていた。

アンコールは、J.シュトラウスⅡの作品から、ワルツ「春の声」、トリッチ・トラッチ・ポルカ、「雷鳴と稲妻」の三本仕立て。ウィンナワルツのリズム感に、フランス風の色彩感をチョイ足しした感じの演奏で、非常に盛り上がった。


(公演情報)

2013年5月13日(月)19:00開演
会場:サントリーホール

演奏:ウィーン交響楽団
指揮:大野和士
独奏:庄司紗矢香

曲目
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ブラームス:交響曲第4番
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[2013/05/16 23:36] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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