ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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大野指揮ウィーン交響楽団―来日公演③「未完成&マラ5」
5月18日午後6時すぎ、オペラシティへ。大野和士指揮ウィーン交響楽団の来日公演。この日は、シューベルトの交響曲第7番「未完成」とマーラーの交響曲第5番を組み合わせたプログラムである。

この日は、週末ということもあり、ほぼ満席に近い入場者数であった。比較的若い層が多く、マエストロ大野を知る熱狂的なファンが詰めかけた模様だ。

筆者が発売初日に確保した座席は、1階9列目中央。前方2列が張り出したステージによって潰されているため、実質的には7列目である。シューボックス型のオペラシティコンサートホールでは、音が拡散しないのがよい。臨場感のある弦楽器に加え、ステージ後方に位置する管楽器やコントラバスの音もきちんと届いてくる。この場所は、オーケストラを鑑賞する上では、ベストなポジションではないかと思う。

プログラム前半は、シューベルトの交響曲第7番「未完成」。この作品は、今回のツアーでは、この日のみ採り上げられた。

マエストロ大野は、ウィーン交響楽団のペースと作法に最大限に寄り添う。伸び伸びと歌い上げる各旋律を踏まえつつ、要所で微調整を加え、アンサンブルの精度を整えつつ、音楽の流れに一貫性を持たせる。他方で、第二楽章の変イ長調に転調する付近以降、ppの表現を極限まで推し進め、緊張感を高めることにも成功していた。

冒頭から各奏者に自発的な表現を促し続けることで、奏者のテンションを高めつつ、潮目の転換点で静かに舵を切ることで、そのポテンシャルを引き出すカリスマ性には、驚嘆させられる。技術的にも音楽的にも、そしてマインドコントロールの観点からも、本当に巧くまとめていた。

ウィーンの伝統をベースとして、足しも引きもしない演奏スタイルは、マエストロの志向した音楽であるかはわからないが、ウィーン交響楽団の魅力が100%引き出された堂々とした演奏であった。

プログラム後半は、マーラーの交響曲第5番。ウィーンにおける現地公演でも採り上げられた作品であり、今回のツアーの目玉である。

やや幅のある構えで始まったこの日の演奏は、フレージングに関しては、ウィーン交響楽団の個性を尊重し、彼らのやりたいようにやらせようという方針が徹底していた。各奏者らは、マエストロ大野が設定したスケールの大きな枠組みの中で、水を得た魚のように、ウィーン風のアクセントや溜めを自由自在に表現する。彼らとの付き合い方という意味では、このようなアプローチは秀逸である。

音楽的に完成度が高かったのは、第一楽章と第二楽章。とりわけ第二楽章では、オーケストラという身体の細胞の全てが全開になったのではないかと錯覚させるように、音楽が湧き上がった。解像度が高く、細かいモチーフに至るまで、全ての音符が強い主張と輝きを放っており、それらがビシっとはまり込み、一体化する。これほど濃密かつ緻密な第二楽章は、そうそうお目にかかれない。ホール内からは、ため息も漏れていた。

これに対して、第三楽章以降は、音楽的には必ずしも完成度は高くはなかったが、マエストロとオーケストラが繰り広げる駆け引き、すなわち、崩壊するかしないかの瀬戸際を探り合う両者の攻防が非常に面白かった。第四楽章のアダージェットは、オーケストラもマエストロも攻めすぎである。第五楽章のロンド=フィナーレは、やや雑な作りになってしまい、しかも崩壊の危機もあったが、オーケストラの面々が愉しそうに弾いていたし、爆発的な盛り上がりも見せたので、これはこれでよしとしたい。

アンコールは、前回に同じく、J.シュトラウスⅡの作品から、ワルツ「春の声」、トリッチ・トラッチ・ポルカ、「雷鳴と稲妻」の三本仕立て。マーラーの後だと、やや肉食系のワルツとポルカに変貌するのが面白い。カーテンコールは大いに盛り上がり、マエストロの一般参賀も生じた。

この日の演奏に関しては、技術的には色々と突っ込みどころもあったが、どんなに熱くなっても、ウィーン風の香りを均質に保つとともに、音の処理やsubito pは美しくまとめ、後味を悪くさせないあたりは、ウィーン交響楽団の実力の高さを裏付けるものである。外面的にみると、彼らと同程度のアンサンブルができるオーケストラは、国内外を含め、たくさん存在するが、響きのまとめ方やフレージングの語法の点で、超えられない壁がある。ウィーンの伝統を多角的に見る機会として、個人的には興味深かった。

そして、割とクールなスタンスのウィーン交響楽団を相手に、まるでアマチュアオーケストラのように、ここまで熱くさせたマエストロ大野の手腕は凄い。今回のツアーは、マエストロとの初顔合わせになるが、マエストロは、今回のプログラムを通じて、自らの持ち味とキャパシティの広さを、彼らに対して存分にアピールできたのではなかろうか。この評判は、間違いなくウィーンの街に伝わるであろう。マエストロの更なる活躍が期待される。


(公演情報)

2013年5月18日(土)18:30開演
会場:東京オペラシティコンサートホール

演奏:ウィーン交響楽団
指揮:大野和士

曲目
シューベルト:交響曲第7番ロ短調D759「未完成」
マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調
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[2013/05/19 09:38] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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