ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ヘレヴェッヘ指揮読響―第561回サントリー名曲シリーズ「ベト1&7」
6月16日午後6時前、サントリーホールへ。フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮読売日本交響楽団による第561回サントリーホール名曲シリーズ。ベートーヴェン・プログラムである。

この日は、翌週の定期演奏会からの振替え。筆者に割り当てられた座席は、RBブロック7列目で、かろうじてデルタ地帯の範囲内であった。今回の演奏でヘレヴェッヘは対抗配置を採用していたが、残念ながら舞台上手側の座席からは対抗配置のステレオ効果は把握できない。また、コントラバスが舞台の最後部に一列に並ぶスタイルがサントリーホールにおいてどこまで功を奏するのかも筆者の座席からは不明。もっとも、適度な臨場感と解像度を保ちつつ、全体の響きがまとまって聴こえるのは、デルタ地帯の特性であり、全体を把握するという観点からは、この日の座席でも不満はない。

この日の演奏会では、序曲「コリオラン」、交響曲第1番、交響曲第7番が採り上げられたが、三曲通じて解釈と演奏スタイルに強靭な一貫性が感じられたのが特筆される。重低音に支えられた力強さ、そして見通しの良い明るい音色とフレージングが見事にマッチングし、現代のベートーヴェン像の一つを明示する素晴らしい演奏となった。演奏スタイルにおいて、ピリオド奏法的な要素も垣間見られるものの、変に固執することはなく、普遍性を追求する意図が感じられた点で、他のピリオド奏法系の指揮者とは一線を画している。ヘレヴェッヘと読響は今回が初顔合わせであるが、正直ここまで相性が良いとは思ってもいなかった。双方の柔軟性がプラスに働いた成果といえよう。

プログラム前半一曲目は、序曲「コリオラン」。

非常に引き締まったアレグロ・コン・ブリオである。最初から最後までインテンポ(に感じられるテンポ感)で一気に聴かせるアプローチは、この作品のあるべき姿を明示する。細部までよく目配りが効いており、フレージングや響きの移ろいが軽やかに浮き立つのは、ヘレヴェッヘの見識の高さに由来するものであろうか。攻めの演奏であるが、強奏部になっても響きが混濁しなかったのには、感心させられた。

プログラム前半二曲目は、交響曲第1番。実はこの日の演奏会の中で、最も愉しめたのがこの作品であった。

第一楽章序奏部から木管楽器の明るい音色とハーモニーの膨らみが聴き手の気持ちを朗らかにさせる。主部に入ってからも、快活で引き締まった弦楽器と伸びやかな管楽器の掛け合いが見事だ。同じアレグロ・コン・ブリオでありながら、序曲「コリオラン」との趣向の違いが良い演出効果をもたらしていた。また、第一楽章展開部において、和声に相応しい柔らかめの音色で転調の過程をたどってゆく様子も印象的であった。

第二楽章も快速テンポだが、アンダンテ・カンタービレ・コン・モートという楽想記号に適った演奏であった。ヘレヴェッヘのアーティキュレーションは、楽譜に忠実で、理知的かつ合理的であり、しかも活き活きとしている。この楽章がこれほど面白く感じられたのは、筆者にとっては初めてかもしれない。

ウキウキするような第三楽章は、ベートーヴェンの真意を汲み取り、メヌエットというよりもスケルツォだが、流れ良く一息で聴かせる演奏であった。個人的には、トリオにおけるフレージングの処理の巧さに感銘を受けた。

第四楽章は、第一楽章から第三楽章の流れに沿った自然な演奏。明るく楽しい雰囲気が終始感じられたのが良かった。ヘレヴェッヘの頭の中で、作品の各構成部分が明晰に整理されていることが窺われる演奏であった。

プログラム後半は、交響曲第7番。この作品の場合、作品自体が強烈な個性を有しているため、誰が演奏しても似通った印象になりがちである。この日の演奏も、想定の範囲内であり、割とオーソドックスな仕上がりと感じたが、ヘレヴェッヘと読響が今回の共同作業を通じて到達したゴールを見るという意味で、興味深い点は多かった。

第一楽章は、展開部の処理が秀逸であった。ブツ切りになりやすい場面だが、ちょっとしたさじ加減で持続性を演出していたのには、ハッとさせられた。引き締まった快速テンポの演奏スタイルは、この作品でも貫かれており、実に聴きやすかった。

第二楽章は、ヴィブラートをセーブした弦楽器による冒頭の響きが白眉であった。響きの透明度やフレーズの織りなしが半端なく、互いに語り合っているかのような錯覚に陥る。ピリオド奏法の延長であるが、モダン楽器による演奏を前提とした処理がなされており、驚くほどの効果がもたらされていた。

第三楽章は、トリオにおける管楽器のフレージングの処理が目を引いた。ノン・ヴィブラートで純度の高い音色を探求すると、読響からもここまでまとまりのある響きが生まれるのかと思わずにはいられなかった。なお、この楽章に限らず、全ての反復が律儀に行われたが、第三楽章において繰り返しが行われた際にガッカリした気分にならなかったのは、筆者にとっては今回が初めてである。

第四楽章は、いつもの読響らしさが前面に現れ、テンションの高い熱演となった。解放されたオーケストラは、弾きたいように弾いていたようにも見えたが、最後の最後までオーケストレーションの輪郭がクリアに浮かび上がり続け、そして響きが混濁しなかったのは、ヘレヴェッヘの並々ならぬオーラに由来する部分も大きいであろう。

終演は午後7時40分。あっという間の演奏会ではあったが、充実感は高かった。カーテンコールでは、客席から多くのブラボーがかかっていた。ぜひこのコンビによる演奏を重ねてほしいと願う。


(公演情報)

第561回サントリーホール名曲シリーズ

2013年6月16日(日) 18:00開演
会場:サントリーホール

指揮=フィリップ・ヘレヴェッヘ

ベートーヴェン:序曲「コリオラン」 作品62
ベートーヴェン:交響曲 第1番 ハ長調 作品21
ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92
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[2013/06/16 21:43] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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