ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ウルフ指揮読響―第157回東京芸術劇場マチネーシリーズ「アメリカン・プログラム」
7月13日午後2時前、東京芸術劇場へ。ヒュー・ウルフ指揮読売日本交響楽団による第157回東京芸術劇場マチネーシリーズ。バーンスタイン、アイヴス、ガーシュインというアメリカン・プログラムであった。定期演奏会からの振替えである。

筆者に割り当てられた座席は、2階C列50番台。東京芸術劇場に訪れるのは、改修後は初めてであるが、巷で言われているように、だいぶ音響が改善されたと思われる。反響板の高さを下げることで臨場感が増すとともに、木目調の装飾により響きに柔らかさがもたらされた。独特の華やかさは健在で、作品によってはよいコラボレーションが期待できる環境に生まれ変わったのではなかろうか。

さて、今回のプログラムは、今年4月から読響のコンサートマスターに着任した日下紗矢子の就任披露演奏会でもあったが、その存在感は半端なかった。凛とした姿勢で的確にリードしつつ、音楽全体の流れをも完全に手中に収めた見事な立ち振る舞い。楽器を奏でる姿から音楽が湧き上がってくるのが素晴らしい。すでに大コンマスとしての風格があり、指揮者を不要と感じさせるほどの抜群の信頼感があった。この日の演奏会では、全体を通じて、細部までキチンと組み上げられた重厚なアンサンブル、そして上品かつ豊潤なカンタービレが特徴的であったが、これはヒュー・ウルフの個性というよりも、むしろ日下紗矢子の目指す音楽であったのではないかとも思われた。

プログラム前半一曲目は、バーンスタインの「キャンディード」序曲。フラッシュの瞬くような鮮烈さはなかったが、手堅くまとめた秀演。特にレガートの旋律部において、適度に力の抜けた上質な響きで歌が流れたのが魅力的であった。アメリカンな演奏スタイルに照らすと、リズムの切れ味がもう少し欲しかったが、悪くはない仕上がりであった。

プログラム前半二曲目は、アイヴスの「ニュー・イングランドの3つの場所」。この作品を実演で聴くのは今回が初めてだが、作品自体が兼ね備える潜在的な力の強さに圧倒された。独立戦争、南北戦争、ハネムーンで訪れた景勝地に繋がる場所を題材にした作品でありながら、アメリカ大陸の荒涼とした景色が全体を支配し、心の安堵とは正反対の空気に覆われている。第二曲のマーチング・バンドのような音楽では、戦争に起因する人々の心の不安定さが鮮烈に描かれており、非常に刺激的である。この日の読響による演奏には、やや消化不足の感があり、音色の均質さが保てない箇所や、音の衝突のインパクトを十分に打ち出せない箇所などが散見されたが、とりわけ第二曲後半以降は、作品のパワーに後押しされる形で、響きの解像度が上がり、作品の奥深さをある程度打ち出せていたように思われる。

プログラム前半三曲目は、ガーシュインの「パリのアメリカ人」。落ち着いたテンポで、じっくりと取り組んだ演奏である。それゆえ、全体的にもっさりした印象であり、1920年代の活き活きとしたパリの風景や、アメリカ人のアクティブさとは無縁である。ジャズらしいリズム感がおよそ感じられなかった点については、もともと期待していなかったとはいっても、やはり後味が悪い。とはいえ、起承転結のまとまりはあり、かつクラシックなアメリカンテイストを見出すことができたので、総じていえば、悪くはなかった。上品でありながら芯のある音色で奏でられる日下のヴァイオリンソロ、短時間ながらもアピール力の強かった金子のクラリネットソロなどは、特筆に値する。

プログラム後半は、バーンスタインの「シンフォニック・ダンス」。読響の馬力が全開になった演奏である。アンサンブルの精度もかなり高かった。高揚した直後に現れる弱音部の処理において、日下の冷静なリードにより、音が荒れることなく、的確に収められていたあたりは、読響にしては珍しい。日下の技量の高さゆえに、逆にヴァイオリンパート内におけるボーイングや音程の不揃いを露呈してしまっていたのがやや残念なところであったが、今後の向上に期待したい。なお、この作品においても、ノリとしてはジャズというよりも日本の夏祭りという体であったが、日本人である以上、それはそれでよいようにも思う。むしろ、日本の夏祭り的なテンションをも正面から受け止めるバーンスタインの作品の包容力に脱帽である。もっとも、夏祭りと割り切ってしまうと、この作品に組み込まれた衝撃的な場面の数々の意味が薄れてしまうのではあるが。

演奏時間は短めであり、午後3時半すぎには終演となったが、猛暑の続く東京において気晴らしに鑑賞するには十分すぎるくらいの充実した演奏会であった。


(公演情報)

第157回東京芸術劇場マチネーシリーズ

2013年7月13日(土) 14:00開演
会場:東京芸術劇場

指揮=ヒュー・ウルフ

《アメリカン・プログラム》
バーンスタイン:「キャンディード」序曲
アイヴス:ニュー・イングランドの3つの場所
ガーシュイン:パリのアメリカ人
バーンスタイン:シンフォニック・ダンス(「ウエスト・サイド・ストーリー」から)
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[2013/07/13 20:32] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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