ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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藤原歌劇団「ラ・トラヴィアータ」(三日目・千秋楽)
9月8日午後2時すぎ、新国立劇場オペラパレスへ。藤原歌劇団によるヴェルディ「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」。この日は、初日組による二回目の上演である。

筆者の座席は、1階席17列目上手より。前日よりも少し奥まったため、若干距離を感じたが、鑑賞上の不都合はなかった。

さて、初日組の目玉は、何といっても、ヴィオレッタ役のマリエッラ・デヴィーアである。65歳という年齢を隠せない部分もあるが、完璧な技術でコントロールし、全三幕をパーフェクトに仕上げた。第一幕のアリアには、鬼気迫るものがあり、狼狽、夢想、そして我に帰ったカバレッタと、心情の劇的な移り変わりをドラマチックに表現。技術と表現が完全に結びついたデヴィーアの歌唱は、圧倒的であった。カーテンコールは沸きに沸いた。

第二幕に入っても、デヴィーアの存在感はとどまるところを知らない。第二幕第一場のジェルモンとのシェーナと二重唱においても、完璧な技術に裏付けられた歌回しと表現が絶妙なニュアンスを生み出し、対話を通じた心境の変化の過程が手に取るように伝わってきた。「私は死んでしまいます!」に始まる激しい二重唱に見られたヴィオレッタの凄みは、この作品の最大の見どころの一つであり、筆者の体内を重く深い衝撃が走り抜けた。そして、これに続くヴィオレッタのシェーナの「私を愛してね、アルフレード」も鳥肌が立つ瞬間であった。この箇所をこれほどまでに表情豊かに表現できる歌手は他にいないのではなかろうか。

第二幕第二場も、デヴィーアを中心に舞台が回った。アルフレードの賭けトランプの合間に挿入される「ああ、なぜうかつにも来てしまったのかしら」は、安易にテンポを緩ませることなく、インテンポのスピード感を保った中で歌われたのは、理想的なスタイルである。強さがしなやかさに変わり、そして悟りの境地へと進む心情変化が克明に浮かび上がった。

第三幕は涙なしには観られない感動の舞台。アリア「さようなら、過ぎ去った日の美しく楽しい夢よ」の儚さには、文字通り言葉を失った。しかし、さらに印象的であったのは、アルフレードが戻ってきた後の場面。ヴィオレッタに漲った「生きること」への希望と執念。デヴィーアの演ずる姿を観て、筆者はヴィオレッタという女性に描かれた「前向き」な人物像に気付かされるとともに、ヴェルディが描いた音楽の意味を再発見することができた。

というわけで、この日の公演は、デヴィーアの老練な至芸の妙、そして作品と舞台に対する誠意に満ちた哲学的な美観が隅々まで行き渡った内容の濃い舞台であり、藤原歌劇団の特長であるチームプレーのもたらす一体感や心の温もりとも相まって、感動的な千秋楽となった。観客が得られる内面的な充実度という観点からは、全世界でみても稀有の仕上がりであったといえるであろう。

なお、藤原歌劇団のヴェテラン歌手らが配されたキャスト陣も、それぞれの持ち味を活かしつつ、落ち着いた声と演技で、デヴィーアと良いアンサンブルを繰り広げていた。アルフレード役の村上敏明の安定感と安心感は、さすがの貫録である。また、ジェルモン役の堀内康雄も、独特の歌回しではあるが、豊富な声量で要所を締めていた。第二幕第一場のシェーナと二重唱でややスタミナ切れが見られたのが惜しかった。アンニーナ役の家田紀子は、この作品におけるアンニーナという役柄の重要さを存分に印象付ける彫りの深い歌唱と演技。デヴィーアとのバランスもよかった。

園田隆一郎の指揮する東京フィルハーモニー交響楽団は、デヴィーアに触発されたのか、前日よりもイタリア的な、明るく軽やかな音色に変貌していた。絶妙なアウフタクトとテンポのコントロールで、デヴィーアの歌唱を陰から支え続けた園田のタクトは、非常に素晴らしかった。

東京で、しかも国内団体で、これだけ質の高い公演を堪能できる時代が到来したのかと思うと、感慨深い。雨の降りしきる中、幸せな気持ちで会場を後にした。


(公演情報)

藤原歌劇団公演

ヴェルディ作曲「ラ・トラヴィアータ」

2013年9月8日(日)15:00開演
会場:新国立劇場オペラパレス

公演監督:岡山 廣幸
指揮:園田 隆一郎
演出:岩田 達宗

出演
ヴィオレッタ:マリエッラ・デヴィーア
アルフレード:村上 敏明
ジェルモン:堀内 康雄
フローラ:鳥木 弥生
ガストン:所谷 直生
ドゥフォール:三浦 克次
ドビニー:柿沼 伸美
グランヴィル:久保田 真澄
アンニーナ:家田 紀子
ジュゼッペ:山内 政幸
使者:江原 実
召使:秋本 健

合唱/藤原歌劇団合唱部
管弦楽/東京フィルハーモニー交響楽団
バレエ/スターダンサーズ・バレエ団
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[2013/09/12 22:05] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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