ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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昭和音大オペラ公演2013―「オベルト」
10月5日午後2時前、テアトロ・ジーリオ・ショウワへ。昭和音楽大学オペラ公演2013「オベルト サン・ボニファーチョ伯爵」。言わずと知れたヴェルディの処女作である。ヴェルディ生誕200年のメモリアルイヤーに、大学のオペラ公演として、あえてこの作品に挑むという意欲が、前評判を呼んでいた。会場には、学校関係者に混じって、業界関係者や一部のオペラファンも訪れていた模様である。

筆者の座席は、3階3列正面。舞台上で発せられた声とオーケストラピットから立ち上がった響きが眼の前の空間でバランスよくまとまって客席に届いてくる。とりわけ、歌がオーケストラの響きの上に乗っかってくるのが素晴らしい。合唱に関しては、舞台のどの位置で歌っていても、きちんとした存在感が感じられた。オーケストラピットに関しては、どちらかというと、イタリア的な奏法で、滑舌の良さとレッジェーロを徹底すると、サウンドが引き締まるとともに、個々の音色が活き活きと展開し、理想的な音場が出来上がるようだ。なお、これはオペラハウスの宿命ではあるが、立ち位置によって音量に落差が生じてしまう点は、演出上の工夫により克服しなければならない箇所と認識した。キャストが舞台前方で歌う場合と、舞台中央より後ろで特に横向きで歌う場合とでは、客席での聴こえ方に大きな違いがあった。ともあれ、非常に優れたオペラハウスであることは間違いない。都内でイタリアオペラを上演するにあたっては最高水準の環境といえる。

今回上演されたヴェルディの処女作である「オベルト」は、もちろん後に作曲される傑作の数々と比べると見劣りしてしまうが、ドラマ構成には若書きであるがゆえの面白さがあるし、当時のイタリア・オペラに共通する雰囲気の中に、ヴェルディらしい緊張感や躍動感が差し込まれているという意味で、音楽的にも興味をそそる作品である。第一幕前半は、ベッリーニやドニゼッティの面影が残るナンバーが多いが、第一幕第七曲及び第八曲は、いずれも充実したナンバーであり、アンサンブルの醍醐味を十分に味わえる作品である。第二幕も、独唱を中心としたナンバーが並ぶ中、初演の立役者メレッリのアイデアにより付け加えられた四重唱が緊迫感を醸し出し、ヴェルディらしいシンプルで推進力のある展開が随所に見られる。

この日の上演では、第一幕第七曲シェーナと三重唱「私こそがその男です!絵の前にいる哀れな男を」以降、尻上がりに完成度が高まっていった。これは音楽自体の充実度の高さとも呼応していたのであろう。

第七曲におけるレオノーラ、クニーツァ、オベルトの3人による劇的な三重唱では、廣田美穂、丹呉由利子、三浦克次という三拍子揃った名歌手らにより、三者がバランスよく対比された安定したアンサンブルが繰り広げられ、舞台の緊張感が一気に高まった。第八曲の第一幕フィナーレ「皆さん、こちらへ」は、充実の合唱も加わり、高揚感に溢れる充実のフィナーレとなった。第二幕では、第九曲シェーナとクニーツァのアリア「誰が私に戻してくれるの、あの熱い思いを?」で、丹呉由利子が意志の強さの漲る引き締まった歌唱をみせると、合唱に続く第十一曲シェーナとオベルトのアリア「裏切りへの憎しみが悪人の血を求めている」では、三浦克次が渾身の表現で苦悩を歌い上げる。第十五曲シェーナとロンド・フィナーレ「哀れな女です!私はこの地で」は、救いのないシナリオながら、廣田美穂による溢れんばかりの思いの丈に心が奪われた。キャスト陣の中で唯一違和感を感じたのは、リッカルド役の山内政幸。重唱において他のキャストと声が溶け合わないばかりでなく、アリアやロマンツァでも不安定さが感じられた。第一幕前半の停滞感や、第二幕の四重唱の不発感は、もったいなかった。

ところで、合唱の充実度の高さは、この日の上演の成功に大きく貢献していた。出演者が五人しかおらず、台本の完成度の高くないこの作品を、飽きさせることなく最後まで観させた立役者は、合唱を務めた学生たちの地道な努力の賜物である。練習の成果が滲み出てくるし、技術的にも、明るくて丸みのある自然な発声と溌剌とした表情が相まって、純度の高いハイレベルな仕上がりであった。昭和音楽大学の声楽指導のクオリティの高さが窺われた。

オーケストラに関しても、第二幕に入ってからは、肩の力が下りたのか、イタリアらしい切れ味のよい軽やかな音色が飛んできており、満足できるレベルに到達していた。場所によって、響きがもっさりしたり、若干迷子になったりするのは、ご愛嬌といったところか。もう少し思い切りよく演奏できるようになると、スカッとしたイタリアの青空に近づけるのではないかと思う。

マルコ・ガンディーニによる演出は、吊った布や透明ビニルシートを効率的に活用しつつ、できる限り省エネで表現をしようという観点からは、退屈しないようには配慮されていた。台本の流れが追いかけられる程度の変化はあったので、低予算の中ではこれで良しとしなければならない。舞台美術の観点からは、舞台奥を真っ白に染め、中央に十字架等を配置しつつ、中心を囲うように上下左右から黒い布を攻めたり引いたりすることで、見た目的な遠近感を演出していたのは、なかなか上手い手法であると感じた。また、透明ビニルシートに反射する光をそのまま映像効果として活かしている点も悪くはなかった。ただ、第二幕で背後に置かれた草模様の背景画の意味は、あまりよく分からなかった。

ともあれ、「オベルト」というマイナーかつ上演困難な作品を、きちんと形に仕上げ、そして立派に提供した今回の企画は、メモリアルイヤーを飾るという意味でも、意義深い公演であったと思われる。終演後は、雨の降る中、新百合ヶ丘駅へと急ぎ、夜の演奏会の会場であるNHKホールへ移動。


(公演情報)

昭和音楽大学オペラ公演2013
G・ヴェルディ「オベルト サン・ボニファーチョ伯爵」

2013年10月5日(土)14:00開演
会場:テアトロ・ジーリオ・ショウワ

指揮/ダンテ・マッツォーラ
演出/マルコ・ガンディーニ

リッカルド:山内 政幸
レオノーラ:廣田 美穂
オベルト:三浦 克次
クニーツァ:丹呉 由利子
イメルダ:下條 広野

昭和音楽大学管弦楽団
昭和音楽大学合唱団
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[2013/10/06 22:10] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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