ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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カンブルラン指揮読響―第532回定期演奏会「リゲティ&バルトーク」
12月10日午後7時前、サントリーホールへ。シルヴァン・カンブルラン指揮読売日本交響楽団による第532回定期演奏会。リゲティとバルトークの作品が採り上げられた。

筆者の座席は、指定席であるRBブロック9列目。入場者数は7割程度。ピアニスト目当ての女性客が一定数含まれることを考え合わせると、なかなか寂しい集客状況である。

プログラム前半一曲目は、リゲティの「ロンターノ」。1967年の作品で、フルートの音から始まり、オーケストラの楽器が順々に加わり、音の帯のような音像が導き出されるといういわゆる現代音楽である。

楽器の重ね方や全体のバランスの図り方は、カンブルランらしい計算し尽くされた妙技の連続で、作品の魅力が手に取るように分かる明快さであった。特に弱音部の緊張感の高さは素晴らしく、繊細な音を探るべく、自然と耳を澄ましてしまう魔力が潜んでいた。このような作品を定期演奏会で採り上げたこと自体に、まずは拍手が贈られるべきであろう。

もっとも、この作品に関しては、読響は概ね健闘していたが、オーケストラのキャパシティ不足ゆえ、複数の楽器がユニゾンで重なり合う箇所や大規模な管弦楽が発揮される箇所では、響きのベクトルに微妙なズレがあり、リゲティが意図したオーケストレーション効果が再現し切れていなかったのが惜しかった。各楽器の波長や演奏効果が見事に揃えば、舞台上から巨大な音像の塊が浮かび上がるはずである。また、曲の終盤に入って、イビキを盛大に響かせる輩が複数発生し、繊細な弱音がもたらす空気の振動が全て掻き消されてしまったのも残念であった。

プログラム前半二曲目は、人気の若手ピアニスト金子三勇士を独奏に迎え、バルトークのピアノ協奏曲第3番。最晩年の作品で、悟りを開いたかのような伝統回帰のシンプルさの中に、バルトークらしい強烈な個性が見え隠れする傑作である。選曲の巧みさから、自ずと期待が高まったが、この日の演奏は、少なくとも筆者の期待したものとは異なっていた。

第一楽章は、冒頭から明るく健康的なサウンドが展開。ピアノとオーケストラの室内楽的な響きの重ね方には、カンブルランの巧さが光る。しかし、あくまで個人的な印象にすぎないが、独奏にもオーケストラにも、バルトークと聞いて一般的に期待するような切れ味がなく、音がもっさりしているように感じた。また、スコア上では、ガラス細工のように精巧に構築されており、カンブルランも細心の注意を払って指揮をしていた様子ではあったが、ちょっとしたタイミングに不用意な音が発せられてしまうと、途端に緊張感が削がれてしまう。

第二楽章は、教会旋法による弦楽器のコラールとピアノが対話を交わしながら始められるが、少なくとも冒頭部分の対話に関しては、レガートを徹底しようとして失敗した弦楽器と、重いハンマーでゴツゴツとした音を並べる独奏ピアノとは、あまり噛み合っていなかった。もっとも、後半になると、スケールの大きな旋律の広がりも醸し出され、前半で感じた違和感は払しょくされた。

第三楽章は、熱気を帯びた演奏で、一応の盛り上がりを見せたが、バルトークの音楽に内在する鮮烈さを窺うことはできなかった。金子のピアノは、太いタッチで重厚感のあるダイナミックな響きと、明るい色彩感に溢れた指回しの両面において、個性が感じられるが、バルトークを演奏するにあたっては、断面の鮮やかさや動きの鋭敏さも感じたい。今後に期待したいところである。

プログラム後半一曲目は、バルトークの「6つのルーマニア民族舞曲」。非常に有名な作品ではあり、筆者個人としても、ヴァイオリン編曲版に取り組んだ経験があるほか、オリジナルのピアノ版や弦楽合奏版の演奏には何度も接してきているが、記憶の限りでは、今回演奏された管弦楽編曲版を聴いたのは、この日が初めてであった。

演奏が始まるや否や、弦楽器セクションから、目が覚めるような、伸びやかで、明るく、活力に溢れる音色が湧いてきたのには、正直驚かされた。先ほど演奏したピアノ協奏曲と同じオーケストラとは到底思えない変わり様。アーティキュレーションの徹底ぶりも見事で、ようやくカンブルランらしい冴えた響きが生まれてきたように感じられた。第五曲の終盤で響きが滲んでしまった点、また、第六曲が勢い任せになってしまった点が惜しかったが、この小品の魅力を何割増しにも伝えた立派な演奏であった。

そしてプログラムの最後は、バルトークの組曲「中国の不思議な役人」。舞台用作品を管弦楽用組曲版として再構成した作品である。

こちらは、カンブルランと読響の本気が見えた素晴らしい演奏であった。舞台用作品となると、カンブルランのオペラ指揮者としての才覚が存分に発揮される。オーケストラの音の一つひとつが舞台効果として劇に一体化しており、音から情景がイメージできるというのは、本当に優れた演奏からしか味わえない感覚である。純粋に管弦楽という観点からも、様々な楽器がブレンドされ、また対峙され、ステージ上で縦横無尽に組み合わさる様は、オーケストラ冥利に尽きる。カンブルランの個性の一つであるフランス的な色彩感の豊かさも、この日の演奏を上品なものに仕立てていた。巨大な蒸気機関車が車輪をフル回転させながら突進してゆくようなエンディングにおけるアンサンブルの凄みと高揚感は、近時の読響の演奏の中でも出色のクオリティであった。文句なくブラボーである。

盛大な拍手に応えて演奏されたアンコールは、ベルリオーズのラコッツィ行進曲(ハンガリー行進曲)。1月の定期演奏会への伏線かと勘繰りつつ、堂々とした熱い演奏で、素直に愉しめた。カンブルランが振ると、単なる爆演に終わらないから素晴らしい。

というわけで、プログラム前半はあまり気乗りがしなかったが、後半は盛り上がったので、全体としては良い演奏会であった。


(公演情報)

第532回定期演奏会

2013年12月10日(火) 19:00開演

会場:サントリーホール

指揮=シルヴァン・カンブルラン
ピアノ=金子三勇士

リゲティ:ロンターノ
バルトーク:ピアノ協奏曲 第3番
バルトーク:6つのルーマニア民族舞曲
バルトーク:組曲「中国の不思議な役人」
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[2013/12/10 23:58] | 国内視聴記 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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