ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[--/--/-- --:--] | スポンサー広告 |
ベルリン行き(11年7月)①―コーミッシェオーパー「カルメル派修道女の対話」
7月15日夜、SN2589便にてベルリンテーゲル空港へ。バスで中央駅に向かうと、午後10時にもかかわらず、お店の電気がついていることに新鮮さを覚える。午後6時か7時が近づくと、ものすごい勢いでお客を外に追い出そうとするブラッセルとは大違いである。中央駅からホテルまでは、900mとの説明があったが、やはり遠く感じる。ベルリンは、欧州の中でも、とりわけ建物のサイズがキングサイズ。縦・横・高さの全てを1.2倍したくらいの印象である。

7月16日朝、博物館の島と呼ばれる地区に向かい、大聖堂、赤の市庁舎、DDRミュージアムなどを見学。テレビ塔にも向かってみたが、午前11時前にして早くも見学待ちの長い列が出来ていたため、今回は回避した。街には観光客が溢れている。

昼からは、ドイツ最大級の老舗デパートであるカーデーヴェー(KaDeWe)周辺でショッピング。ブラッセルには、ショッピングセンターはあるが、大きなデパートがない。欲しい物が手に入らないことが結構ある。Sサイズの薄いコートと若干の文房具を購入し、ホテルに戻る。

夕方は、文化メディアを扱う大型総合書店であるドゥスマンに立ち寄った後、一心という人気寿司店へ。手頃な値段で、一応のお寿司が食べられるという意味では、欧州在住の日本人にとっては利用価値が高いという印象だ。

軽く食事を済ました後、ベルリンコーミッシェオーパーへ。この日の演目は、プーランク「カルメル派修道女の対話」(ドイツ語上演)。

20110716-1

この日の座席は、2.Rang links Reihe 1, Seat 21。日本で言うところの3階席の正面。コーミッシェオーパーは、総客席数が1270席と小さめであるため、舞台と客席の距離も非常に近く、臨場感をもって愉しむことができる。マイナーな演目の割には、フェスティバル期間中ということもあり、客席の入りも8割以上。ウィーンやミラノと違い、いわゆる観光客がいないため、劇場内も落ち着いており、雰囲気はよい。

20110716-2


コーミッシェオーパーは、斬新な現代的演出で話題を集めている劇場だ。この日は、特に演出家のセンスが光った。

舞台上には、工事現場にあるような鉄製の素材で組まれた巨大な四段ベッドが4つ。これがあるときは背景に、あるときは舞台に、そして最後にはギロチンにと多様な顔を見せる。また、両袖には、それぞれ5つの白黒モニターが置かれており、キャストが内面を歌い上げる場面等で、人の手や眼、草花といった抽象的イメージを映し出し、その心情を描き出していた。照明にも流れがあり、見ていて飽きることはない。

なんといっても、役者の立ち位置の構成が秀逸。鉄格子状の巨大な四段ベッドを非常に効果的に活用されていた。
例えば、第一幕第一場では、冒頭に修道女らによるプーランクのアカペラ歌曲が挿入されたが、その後、修道女らを鉄格子の各セルに配置することで、舞台前方で繰り広げられる侯爵邸での対話の背景として活かし、暗示的な効果をもたらす。
また、ブランシュと誰かが上手側で対話をしているときであれば、下手側で台本上関連のある役者を控え目に前後に動かし、さらに、上手奥側の四段ベッドの最上段から一人のダンサーがこちらを見つめている設定。
第二幕第四場では、役人が修道女らに対して立ち退きを求めに来るが、ブランシュを上手側の四段ベッドの三段目の端っこに配置することで、統一性を保つ。
そして、第三幕第三場の死刑宣告では、突然客席が明るくなり、なんと、2.Rangのセンター(筆者のまさに隣)に、獄吏が拡声器を持って立ち、判決文を読み上げるという演出。
このように、舞台という三次元空間を大きく広く活用し、役者の立ち位置を見るだけで台本の流れが自然と頭に入るように考えられていたことに加え、第三局の役者や背景、そして両袖の映像を要所で組み合わせることにより、舞台全体の引き締めにも成功していた。第三局や背景の活用という観点は、容易には出来ないが、特に役者の心理表現において絶大な効果をもたらすことを学んだ。

20110716-3

なお、場面によっては、文面には書きづらいようなグロテスクで刺激的な物や姿が登場したが、これは作品の内容の鮮烈さに鑑みれば、特に違和感は覚えなかった。

クライマックスである第三幕第四場は、期待どおりの素晴らしい舞台。
前奏曲の開始後、これまで静止していた鉄格子状の四段ベッドが、左右交互に大きく動き出し、ギロチンの刃を想起させる。その中を、舞台奥からブランシュが一つひとつの鉄格子を乗り越えるようにしながら前方に歩む。それを遠くで一人のダンサーが見つめている。
断頭台にかけられる場面では、各修道女が順に鉄格子の各セルの中央に歩いていき、そこで手を左右に大きく開いてうつ伏せの状態で跪き、ギロチンの音とともに舞台に散るという演出。最後が血生臭くならないところがよい。
一番最後のブランシュとコンスタンスの再会は、音楽の持つエネルギーとともに、涙無しには見られない感動の場面であった。

コーミッシェオーパーは、キャストも合唱も、相当高度な演技力を兼ね備えていると思われる。演出家の指導による部分もあるだろうが、オペラとしてではなく、演劇として観ても、十分に成り立つほどの出来栄えであった。

キャスト陣では、ブランシュ役のMaureen McKay、マザー・マリー役のIrmgard Vilsmaier、クロワシー役のChristiane Oertelが伸びのある表情豊かな歌唱と演技で観客を魅了した。コンスタンス役のIngrid Frosethは、最初は若干不安定な箇所も見受けられたが、中盤以降は調子を上げ、太めの声の役者が並ぶ中で、激しい演技を行いながらも、軽やかなソプラノをキープし、安定感を示した。対して、ブランシュの兄である騎士役のJoska Lehtinenは、歌唱も演技も線が細すぎる。悩んだ挙句に修道院に入り、抵抗と格闘を重ねながらも、最後はコンスタンスとともに断頭台へと自ら進むという人間的成長を示すブランシュとの対抗馬として、騎士役は、フランス革命という時代の流れを強烈に印象付けるべき役柄のはずだが、この日は、そのような大きなものは感じられず、存在感はなかった。

いまだに謎なのは、開演前から一貫して舞台に立ち、不思議な動きをし続けていたひとりのダンサー。色々な場面で暗示的な役割を果たしており、それ自体はよかったのだが、全体を通してこのダンサーがどのような位置づけであったのかは、情報不足のため、解明できていない。

以上に対し、この日は、舞台の完成度の高さと比べると、オーケストラは、かなり物足りなかったといわざるを得ない。
あらゆる音の立ち上がりにおいて、オーケストラとしての和声感が定まらないため、プーランク特有の複雑な転調や多様な色彩感による響きの面白さが全く浮かび上がってこないのだ。「よく分からないけど、とりあえず楽譜どおりに弾きました」という感じ。オーケストラの状態が良いときは、コンマ数秒前に、つまり音が出る少し前に、オーケストラ内で響きのイメージについての共通認識が形成され、ピット内から香りが立ち昇るが、今回はそれが一切ない。ドイツの劇場ゆえ、各々のメンバーがプーランクのサウンドにはあまり慣れ親しんでいないのかもしれない。
指揮者も、見た目的にはそれなりに格好良くタクトを振り、そして、一応はアンサンブルをまとめていたが、プーランクのイメージがどこまで築けていたかは疑問。作品の持つパワーが壮絶であるため、生半可な勉強では作品自体に負けてしまう。
オーケストラの演奏にもっとメリハリがあれば、この日の上演はもう何倍にも花開いたであろうと思うと、残念でならない。歌唱がドイツ語であることとも相まって、ぎこちない堅さのみが記憶に残ってしまった。

20110716-4

終演後は、そのままホテルへ。バーカウンターで数杯飲み、午前0時過ぎに就寝。


(公演情報)

Gespräche der Karmelitinnen
Oper in drei Akten von Francis Poulenc
Libretto vom Komponisten nach Georges Bernanos
Deutsche Textfassung von Peter Funk und Wolfgang Binal

Komische Oper 'Festival
Samstag, 16.07.2011, 19:30 Uhr

Musikalische Leitung ... Stefan Blunier
Inszenierung ... Calixto Bieito
Bühnenbild ... Rebecca Ringst
Kostüme ... Ingo Krügler
Dramaturgie ... Bettina Auer
Chöre ... André Kellinghaus
Licht ... Franck Evin
Video ... Robert Lehniger
Marquis de La Force ... Claudio Otelli
Blanche de La Force ... Maureen McKay
Der Chevalier ... Joska Lehtinen
Madame de Croissy ... Christiane Oertel
Madame Lidoine ... Erika Roos
Mutter Marie, Novizenmeisterin ... Irmgard Vilsmaier
Schwester Constance ... Ingrid Froseth
Mutter Jeanne ... Caren van Oijen
Schwester Mathilde ... Maren Schäfer
Der Beichtvater des Karmel ... Peter Renz
1. Kommissar ... Thomas Ebenstein
2. Kommissar ... Hans-Peter Scheidegger
Kerkermeister ... Carsten Sabrowski
スポンサーサイト
[2011/07/19 17:54] | 海外視聴記(ベルリン) | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<ベルリン行き(11年7月)②―コーミッシェオーパー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 | ホーム | ミラノ・ヴェローナ行き(11年7月)③―アレーナ・ディ・ヴェローナ「アイーダ」 >>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://mashi1978.blog97.fc2.com/tb.php/23-a051e31a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
プロフィール

mashi1978

Author:mashi1978
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。