ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ローマ・マチェラータ行き(11年7月)②―スフェリステーリオ「仮面舞踏会」
7月22日、この日はローマからマチェラータへの移動日。朝起床して余裕を見てコロッセオの駅に向かうと、地下鉄の入り口が閉まっている。朝からイタリア国鉄のストライキらしい。あわててタクシーを捕まえ、テルミニ駅に向かうも、予約していたアンコーナ行きのEurostar Italia 9324はキャンセル。アンコーナ行きの普通列車に望みを託すも、他の列車も含め、続々とキャンセルが表示されていく。

駅で2時間ほど様子を見て、列車での移動は無理と判断し、正午頃、バスターミナルを探しに市内に出る。当然、市内バスもトラムもほとんど動いていない。街中は乗用車で溢れ、大混乱。駅の案内所での情報を頼りに、徒歩で長距離バスの発着するバスターミナルに向かうも、案の定、道に迷い、テルミニ駅とティブルティーナ駅の間の路上をさまよい続ける。万事休すとは、正にこういう状態をいうのだろう。

しかし、何としてもマチェラータに行かなければならない。片言のイタリア語で、街に立つ警察官などに教えてもらいながら、2時間かかってティブルティーナ駅のバスターミナルに着いた。テルミニ駅とティブルティーナ駅の間は、およそ2.5キロ。こんなに離れているならば、駅の案内所で聞いた時に、目的地の名称を正確にヒアリングし、何種類もの地図上で場所を厳密に特定してもらうべきだったのだが、後の祭りである。

ティブルティーナ駅からマチェラータに向かうバスは、午後4時発とのこと。バスターミナルには、行き場を失った旅行者らでいっぱいだ。筆者もティブルティーナ駅の片隅の日陰に座り、2時間弱をぼーっと過ごした。

予定の午後4時よりも30分遅れて、予定のバスがターミナルに入る。バスは2台に増設されており、しかも車内は満席だ。渋滞に巻き込まれ、結局、市内から脱出できたのは、午後5時頃。順調に走り続けることのみを祈りつつ、3時間半、車窓をぼんやりと見つめ続けた。車窓からは、イタリア中部の田舎の街並みや、田園風景、そしてアペニン山脈の険しい山肌が楽しめる。ここまで来ると、完全に開き直りの心境である。

マチェラータのバスターミナルに着いたのは、午後8時40分。タクシーを捕まえてホテルに向かおうという計画は、もろくも崩れ去った。街の中心から離れたターミナルには、地元の人の出迎えの車が数台止まっているのみ。悲壮感満載の表情で、バスの運転手のお兄さんに、片言のイタリア語で尋ねると、何とそのお兄さん、数分ほどバスを回送で走らせてくれ、丘の上の分かりやすいところまで連れて行ってくれた。ローマ市内でも思ったが、イタリア人は皆、気さくでとっても親切。イタリア人の温かさの一端に触れることができたという意味では、貴重な体験をした一日であった。

さて、オペラの開演は午後9時。荷物を持ったまま、アレーナに直行し、滑り込みセーフで開演に間に合うことができた。朝からの一連の出来事からすると、奇跡としか思えない。この日の演目は、ヴェルディ「仮面舞踏会」。スフェリステーリオ・オペラ・フェスティバルの初日で、「仮面舞踏会」はこの日がプレミエである。

この日の座席は、Centralissima di Grandinata Fila 1 Posto n. 30/Sxで、階段状の座席の3列目の中央寄り。ステージからの距離も遠くはなく、舞台の全体像と各役者の仕草の双方を味わうことができる。

このアレーナは、野外にもかかわらず、とても音響がよい。オーケストラピットからは、ほぼ生の音が聞こえるし、歌も、舞台最前方の両端のマイクで音を拾って返している以外には、PAは入っていない。通常の劇場とほぼ同じ設定で、しかも劇場に座っているかのような臨場感が伝わってきた。不思議なものだ。

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ピッツィの演出は、ボストンという設定を前面に打ち出したもの。
冒頭、アメリカ国旗が大きく映し出され、その後も、大きなアメ車が登場したり、アメリカ国旗を身に纏ったダンサーがショーのエンターテイナー役として登場したりするなど、古きよきアメリカを想起させる。
衣装も、男性は、軍服の集団とダークスーツやジャケット姿の集団に色分けされており、他方、女性は、カラフルなパーティドレスに身を包み、華を添える。

役者を2つのテレビカメラで撮影し、これを背後の壁面に白黒で大きく映し出すという方法も、横長なアレーナの舞台を効果的に活用したもの。
両袖に観客席を設け、コーラスをそこに待機させたり、また、第二幕で大量にスモークを炊き、風になびくスモークと背後の映像を重ね合わせたりするというのも、アレーナならではといえるだろう。
大きな舞台装置はないが、高価な家具をピンポイントで並べることで、見栄えのする舞台が作られていた。

全体を通じて、メッセージ性はあまり感じられなかったが、分かりやすく、そして見飽きないという点では、一つの成功例といえるだろう。

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キャストの設定については、オスカルが女性役として扱われていたことをどう考えるかが最大の争点だろう。
リッカルドについては、王様というよりは、悪戯好きな今風の若者という扱いで、コミカルな演技が主体であった。
それゆえ、シナリオ上の焦点は、自ずとレナートに集まる。レナートの威厳と内面を深く掘り下げるという方向性は、なかなか見ごたえがあった。

歌手については、アメーリア役のテレサ・ロマーノは、最初は音程が上ずり気味で、また高音でやや硬くなる箇所も散見されたが、第三幕のアリアなどは表情豊かに表現できており、ぎりぎり合格点が付くレベル。
オスカル役のグラディス・ロッシも、軽やかに歌い、また演技もこなしていたが、最高音が硬くなったのが残念。
ウルリカ役のエリザベッタ・フィオリッロは、典型的なウルリカという感じで、堅実に歌い、演じていたが、最後まで通して観ると、あまり印象に残っていない。
リッカルド役のステファーノ・セッコは、軽めの感じで、伸びのある歌唱を聴かせていたが、最高音に上がるときのチェンジでわずかに引っかかることがあり、それが聴き手にマイナスな印象を与えてしまった。
というわけで、安定した歌唱と説得的な演技を示したのは、レナート役のマルコ・ディ・フェリーチェ。第三幕の前半の苦悩に満ちた表情は、とりわけ印象的であった。
色々と書いたが、総じて粒ぞろいの配役であったことは、間違いない。

指揮は、ダニエレ・カッレガーリ。全体的に、初期のヴェルディを窺わせるサウンドを基調とし、テンポも通常より速い。特に、歌手のアンサンブルでは、推進力が前面に押し出され、基本的にはインテンポで突き進む。せっかちな指揮姿ゆえ、ゆとりのなさは倍増である。
加えて、金管や打楽器の強奏によるフォルティッシモでは、叩きつけるような衝撃を伴う。
一言でいえば、カラッとさわやかな南国イタリア風のテイストに、アメリカンな破壊力をちょい足ししたという感じだろうか。

管弦楽の観点からは、あり得る手法であり、その音楽的意味は理解できるが、歌手がテンポについていけない場面も多く、「仮面舞踏会」という作品に対するアプローチとして適切かどうかについては、若干の疑問を感じざるを得なかった。この頃のヴェルディ作品の場合、シンプルであっても、より深い呼吸が求められるようにも思われる。歌手が肉体的に自然に歌えるテンポ設定をすることが前提となるのではなかろうか。

他方で、有名なアリアのシーンでは、一般的なテンポに落ち着き、非常に柔らかく、息の長いカンタービレが提示されるから、その音楽的スタンスはさらに不可解となる。全体の一貫性という観点からも、腑に落ちない印象であった。

オーケストラでは、特にヴィオラセクションの充実が目を引いた。オーケストレーションの観点からは、中低弦が重要な役割を果たす場面が多く現れるため、ヴィオラセクションの充実度の高さは、「仮面舞踏会」において絶大な効果をもたらす。
第三幕前半のトランペットのソロが非常に危なっかしかったこと、またオーケストラピットという場所の性質上やむを得ないものの、上手と下手に分かれた金管セクション間でテンポに食い違いが生じたことなどを除けば、このテンポ設定の下、細かいところまでよく弾けていたと思う。

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今回は、「仮面舞踏会」という作品の持つ引き出しの多さを改めて痛感した。音楽的には、4月に鑑賞したネッロ・サンティ指揮のチューリッヒ歌劇場の上演が一つの完成形であると信じて疑わないが、今回の上演も、一つのあり方といえるようにも思われる。演出のコンセプトも踏まえた上での音楽的アプローチについて、更なる勉強の必要性を感じながら、会場を後にした。

終演は午前0時。終演後は、会場前のBarでビールを立ち飲みし、早々にホテル・アルカディアに引き上げる。なお、ホテルには、幕間の休憩中にチェックインをするという荒技を行った。多少のアルコールを口にし、気が付くと、眠りについていた。


(公演情報)

SFERISTERIO
Un ballo in maschera
Giuseppe Verdi
22 luglio - ore 21.00

Conductor: Daniele Callegari
Direction, Sets and Costumes: Pier Luigi Pizzi
Orchestra: Fondazione Orchestra Regionale della Marche
Coro: Coro Lirico Marchigiano "V. Bellini"

Riccardo: Stefano Secco
Renato: Marco Di Felice
Amelia: Teresa Romano
Ulrica: Elisabetta Fiorillo
Oscar: Gladys Rossi
Silvano: Alessandro Battiato
Samuel: Antonio Barbagallo
Tom: Dario Russo
Un giudice: Raoul d'Eramo
Un servo di Amelia: Enrico Cossutta
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[2011/07/25 20:47] | 海外視聴記(マチェラータ) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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