ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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メルビッシュ行き(11年7月)―メルビッシュ湖上音楽祭「ジプシー男爵」
7月30日早朝、SN2901便にてウィーンへ。そして列車とバスを乗り継ぎ、正午前に宿泊地のイルミッツに到着。ウィーンからの移動時間は、1時間半弱である。この日の宿泊は、Hotel Post Illmitz。街の中心に位置し、バス停の隣という好立地。しかも、パックで申し込めば、メルビッシュ湖上音楽祭への送迎も付くので、利用価値は高い。

イルミッツは、ノイシードラ湖東岸南部、ハンガリー国境近くの田舎町である。葡萄畑に囲まれており、小さい町ながら、いたるところにワイナリーやホイリゲがある。甘口のデザートワインや赤ワインで定評があるらしい。筆者も早速、近くのホイリゲを訪ねることとした。

訪問したのは、Fasslkellerというレストラン。店員さんの助言に従い、Sautanzteller(厚切りハム、ベーコン、黒ソーセージの煮込みに、ジャガイモとザワークラウトを添えたもの)というこの地域の郷土料理をあてに、Sämling 88 2010という甘口の白ワインと、Blauer Burgunoerという甘口の赤ワインを。これが美味で、しかも値段もお手頃。肉のジューシーさと、甘口ワインの相性はとてもよく、この地ならではの食文化を堪能できた。他にも近隣のレストランを2軒巡ってみたが、こちらはお洒落感を出そうとして逆に失敗したという感じのお店で、Fasslkellerにもう少し長居すればよかったと若干後悔した。

いったんホテルに戻り、早めの夕食をホテルで摂る。送迎バスの出発は午後7時。数キロ離れた港に向かい、ノイシードラ湖西岸のメルビッシュへ上陸するという段取りだ。周辺から続々とオペラファン達が集まる。船での会場入りは、メルビッシュならではといえる。

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今年のメルビッシュ湖上音楽祭の演目は、ヨハン・シュトラウス「ジプシー男爵」。オペレッタの名作である。筆者の座席は、Block Dの前から9列目で、大迫力のステージが眼前に広がる絶好のポジション。湖上音楽祭の醍醐味を十分に愉しむことができた。

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第一に、演出が秀逸であった。メルビッシュの舞台は、湖に向かって開けており、背後の浮島も舞台装置としての役割を果たす。今回の演出では、その舞台のスケール感が存分に活かされていた。
例えば、第一幕であれば、肉屋に関連する出来事は下手側の家屋を起点に、またジプシーに関連する出来事は上手側のボートを起点に、というように、簡明に整理されていた。このような整理は、上手側と下手側にそれぞれ配置された舞台装置を伴うことで、視覚的な変化をもたらす。また、群衆の出入りを舞台奥、すなわち湖の方から行わせることにより、舞台の奥行きを活用し、その立体感も表現されていた。役者の出入りもワンパターンではなく、色々な引き出しがあったのも注目される。
加えて、土地の人々、ジプシー達、兵士達の衣装が一目で分かるように統一されていたのも、ストーリーの理解を助けた。熊の着ぐるみや機関車の模型、火柱、さらには船といった野外オペラならではの仕掛けも見られたが、それらが目立ちすぎることはなく、よいアクセントになっていた。
第三局の活用という点も、よく考えられていた。役者二人の対話の場面でも、直接には関係がなく舞台の反対側に位置する役者がさりげない仕草や演技をしていたり、また、カップルが二人きりで愛に浸っている場面でも、舞台奥でダンサーの男女一組が踊りで愛を表現したりというように、舞台に常に動きと変化があるように工夫されていた。
立ち位置の観点からも、一つの場面の中でも、心情的に変化のある役者を舞台の前後左右に動かすことで、その心理的なニュアンスを浮かび上がらせることに成功していた。このあたりは、演出家のセンスが問われるところといえよう。

第二に、配役が充実していた。各役者とも、よい歌唱を聴かせており、アンサンブルにおいても、音程、リズムともに申し分なく、安心して観劇できた。驚くべきことは、実際に観劇していると、その歌唱の水準の高さよりも、演技力の高さに意識が集まるという点である。オペレッタの場合、通常のオペラと比べ、演劇として、しかも喜劇として、いかに見せるかが課題となる。難しいパッセージが仕込まれている中で、担がれたり、走り回ったりと、あれだけの動きが出来るというのは、脱帽である。
あいにくこの日は、第二幕から風が強まり、そして第二幕後半から雨が降り出したが、そんな劣悪な環境下でも、身体を張った歌唱と演技を貫徹し、ほぼ通常通り演じ切った彼らのパワーは、並々ならぬものといえよう。

第三に、オーケストラも良いサポートを行っていた。メルビッシュ湖上音楽祭の舞台では、オーケストラ・ピットは、舞台の下に配置されており、指揮者の頭のみが舞台の最前方に窺うことができる。完全なオープンスペースゆえ、マイクとスピーカーを通じた音響であるが、それでも、ワルツやポルカのリズム感、テンポ感、そしてフレーズ感、加えて、幕切れに向けての高揚なども伝わってきたのは、演奏者側の意識の高さを示すものといえる。PAを利用することにより機械的なエコーを伴うため、管弦楽的な観点からの「攻め」を狙う余地はないが、全体を通じて、安定感のある自然体の音楽が楽しめた。
指揮者のマンフレッド・マイヤーホーファーは、今年4月、新国立劇場「薔薇の騎士」に急遽代役で出演し、成功に導いた職人肌のマイスターだが、この日も、雨が降りしきる中、雨具に身を纏い、最後まで緊張感を絶やさずに音楽を運び続けたことは、絶賛に値する。
それにしても、指揮者用のオーケストラ・ピットの扉を最大限に狭め、風雨にも負けずに演奏を続けようとする意気込みには、心底驚愕した。

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終演後のカーテンコールにも演出が施されており、観客を飽きさせない。

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そして、最後は、「ジプシー男爵」の音楽に合わせて湖上に打ち上げられる大迫力の花火。眼前で展開されるヨーロッパ風の花火は、ディズニーランドの花火とは比較にならないほどのエンターテイメント性を兼ね備えており、これを見るだけでも気持ちが高まる。会場も大盛り上がりであった。

今回思ったのは、ワルツやポルカといったある種のフォークソングをベースにしつつ、内容的に充実した一つの劇を創り上げてしまうヨハン・シュトラウスのセンスの良さ。シナリオ的には深刻になりそうなところでも、軽やかなポルカ風の音楽をさらりと流し込み、テンポよく喜劇としてまとめてしまうのは、文字通り天才の成せる技である。

そして、会場の雰囲気からも、オーストリアの人々がヨハン・シュトラウスの音楽をいかに敬愛しているのかが肌で感じられた。終演後は、いたるところから、「ジプシー男爵」のフレーズをなぞった口笛や鼻歌が聞かれる。これこそ、正に「文化」である。喜劇にも関わらず、日本の「お笑い」のように、度を越えた下品な演出に陥らないのは、何故だろうか。

筆者個人の反省点としては、湖上音楽祭における防寒対策の甘さ。この日は、雨模様ということもあり、陸から海に吹きぬける風は、とてつもなく寒かった。セーターとレインコートは必携だと感じた。

翌日は、正午前にチェックアウトし、前日の反省も踏まえ、ホイリゲであるHeuriger Holzhammerへ。マスターが親身になって注文の相談に応じてくれた。頼んだのは、ザワークラウト、ソーセージの西洋わさび添え、シュニッツェル。ワインは、白ワイン1杯(Muskat Ottonel 2010)、赤ワイン2杯(Chiara Zweigelt 2008(辛口)とClassico 009 Blaufänkrisch 2009(甘口))、デザートワイン2杯(Muskat Ottobel Spätlese 2008(白)とBlaufränkishlikör(赤))。お料理の味付けは美味だし、ワインも自家製のものばかり。葡萄の濃縮した味わいが楽しめた。イルミッツを満喫した気分になれたひと時であった。

午後2時半すぎにイルミッツを出発し、ウィーンで若干過ごした後に、空港へ。そして、SN2908便にて午後11時10分にブリュッセル空港に到着。オーストリア人の真面目で親切な人柄にも触れることができ、短いながらも、充実した週末であった。


(公演情報)

DER ZINGEUNERBARON
Johan Strauss

Seefestspiele Mörbisch 2011
30 Juli 2011 / Beginn 20:30 Uhr

Prof. Dr. h.c. Ks. Brigitte Fassbaender / Regie
Manfred Mayrhofer / Musikalische Leitung

Daniel Serafin / Graf Homonay
Prof. Harald Serafin / Conte Carnero
Lucian Krasznec / Sándor Barinkay
Evelin Novak / Saffi
Monika Bohinec / Czipra
Wolfgang Bankl / Kálmán Zsupán
Iva Mihanovic / Arsena
Linda Plech / Mirabella
Gernot Heinrich / Ottokar

Festival Orchestra Mörbisch
Chor, Ballet und Statisterie der Seefestspiele Mörbisch
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