ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ブルージュ行き(11年8月)①―デ・マルキ指揮アカデミア・モンティス・レガリス―ブルージュ古楽祭
8月5日夕方、職場からブリュッセル南駅へ向かい、そこから国鉄でブルージュへ。この日は、ブルージュ古楽祭初日。午後6時すぎにブリュッセル南駅を出れば、午後8時の開演時刻に間に合う。スケジュールはタイトだが、日帰りで会場に向かうことにした。

午後8時前に会場であるブルージュのコンサートホールに入る。ブルージュ古楽祭の初日を飾るのは、アレッサンドロ・デ・マルキ率いるイタリアのピリオド・オーケストラ、アカデミア・モンティス・レガリス。恥ずかしながら、筆者は、この日まで彼らの存在を全く知らなかった。この日の座席は、前から3列目の上手側サイドである。

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今回は、全く予習をせずに会場に向かったが、最初の数小節を聴いただけで、目が覚めた。

第一に、個々の演奏者の意識の高さは、筆者が体験した中でもずば抜けていた。音の一つひとつに対して魂をこめながら、しかもそれを愉しみながら奏でている様子が手を取るように分かるのだ。身体と一体化した楽器から発せられる音色からは、人間の鼓動がそのまま伝わってくる。弦楽器のガット弦の余韻は、肉声そのものであり、独唱や合唱との掛け合いやコラボレーションは、人間の対話のように聞こえた。
深く、力強く、そして高いテンションで迫るフォルテの説得力、厳粛さとカンタービレの双方が織り込まれたピアノの様式美、はかなく消え行くピアニシモの繊細さ、足し算と引き算が絶妙なバランスで組み合わされており、聴き手を全く飽きさせない。

第二に、アンサンブルという観点からも、安定した躍動感で存在感を示した通奏低音集団や、音楽的にも的確なリードをしていたコンミスを中心に、高揚感と冷静さが同居した職人技が随所に見られた。
筆者が特に注目したのは、舞台中央に陣取ったリュート奏者である。派手な動きはないが、テンポ感や和声感は全て背中が語っている。そして、通奏低音が仕掛けるべきところでは、ほんのわずかだけ先に低音を引っ掛けて、全体の起爆剤を準備する。作為的にならないところが素晴らしい。彼の存在そのものが「音楽」であった。
なお、この日は、テンポの速いフーガ風の曲などの二箇所で、独唱や合唱がわずかながら先に転がっていくような兆候が見られたが、そのようなときでも、音楽は止まらなかった。指揮者の仕草を受け、管弦楽と歌の双方においてパートリーダーから他の奏者に対して瞬時に信号が飛び、これを各演奏者がすぐにキャッチし、それぞれのテンポ感との平仄を取りながら、数小節先に現れる音楽的な落としどころに向けて自然と集結していく。感受性の豊かな演奏者が揃い、その中で共通の理解が形成されていれば、このような芸当が出来るのだ。無理に手綱を締めるなどして、音楽の流れを阻害する必要はない。

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第三に、ソリスト陣も合唱も、声楽的な基礎の厚さを十分に発揮できていた。技術的には、かなりアクロバティックなことが要求されていたはずだが、そういう「難しさ」が表に出ることは、特段見当たらなかった。全員が誇りを持って伸び伸びと歌っている姿は、見ていて気持ちがよいものである。ソリスト陣の中では、ソプラノのロビン・ヨハンセンと、カウンターテナーのマーティン・オーロが、歌唱として聴かせるだけの余裕と安定感を兼ね備えており、とても説得的であった。

なお、この日の充実した演奏が、指揮者のアレッサンドロ・デ・マルキの卓越した手腕の結果であることは、言うまでもない。

一つだけ残念だったのは、会場の音響環境がよくなく、PAによる補強が多目に加えられていたこと。舞台上の反響板に見える壁は、実はブライド状の隙間だらけのもので、全体として、東京国際フォーラムCホールのような構造になっている。会場のキャパシティが小さいのが救いだが、プロダクションが良いだけに、勿体無い気がした。もっとも、古楽をPAなしの室内で鑑賞するというのは、貴族級でなければできない贅沢ではあるのだが。

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終演は、午後10時20分。小走りにブルージュ駅に向かい、午後10時35分発の国鉄に滑り込む。夕食抜き、かつ列車の接続も間一髪という強行軍だったが、満足度の高い一夜であった。

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(公演情報)

MA festival 2011
Vr 5 AUG. 20:00 Concertgebouw Concertzaal

Academia Montis Regalis
Alessandro De Marchi / Dirigent
Roberta Invernizzi / Sopraan
Robin Johannsen / Sopraan
Martin Oro / Alt
Markys Brutscher / Tenor
Antonio Aberte / Bas

plainchant -- Deus in adiutorium
Antonio Caldara -- Haec est Regina Virginum / Laetatus sum
Georg Friedrich Händel -- Saeviat tellus inter rigores (HWV 240)
Antonio Caldara -- Te decus virgineum
Georg Friedrich Händel -- Dixit Dominus (HWV 232) / Salve Regina (HWV 241)
plainchant -- Ora pro nobis / Protege, Domine
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[2011/08/06 08:56] | 海外視聴記(ブルージュ) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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