ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ザルツブルク行き(11年8月)③―ティーレマン指揮「影のない女」
8月14日、午後5時半すぎにホテルを出て、祝祭大劇場へ。夜の演目は、この夏のザルツブルク音楽祭における最大の話題作かつ問題作、リヒャルト・シュトラウス「影のない女」。なお、会場内には、日本人がいっぱい。ウィーンやザルツブルクにおける日本人観光客の多さは、群を抜いている。今回の座席は、2階席の前から5列目の下手側。

20110814-03

さて、今回のクリストフ・ロイによる演出に関してだが、既に先人らがブログ等で具体的な解説を試みているので、詳細は割愛する。簡単に述べれば、舞台をカール・ベームによりこの作品が初収録された1955年当時のレコーディングスタジオに置き換えた上で、各役者については、皇后は、駆け出しの歌手から日々成長し、見事成功を納めるヒロイン、乳母は、その駆け出し歌手を指導するベテラン歌手、バラク夫妻は、どちらもプロのオペラ歌手で、揃ってレコーディングに参加しているが、私生活はだいぶ冷え込んでいる模様、皇帝は、大物歌手で、最終的には皇后の実力を評価するに至るといったように、ストーリーの読み替えを行っている。バラク夫妻は、レコーディング期間中、プライベートでも大喧嘩をするが、最終的に関係を修復し、ハッピーエンドという具合。

面白がる人もいるかもしれないが、筆者は、このような読み替え演出には否定的である。結局のところ、読み替え後のストーリーにおいて、台本と辻褄が合わないところは、単なるレコーディング風景として切り捨ててしまっているわけで、長大な台本の中から演出家の独善的な発想に沿う箇所だけを摘み食いしたにすぎないように思われる。舞台上が台本や音楽と連動しないため、総合芸術としてのオペラの魅力が失われてしまっている。音楽の持つ豊かな色彩感と、舞台上の殺伐とした風景とのミスマッチは、「影のない女」という作品の大切な要素を無にしてしまった。五感に訴えかけることにより感動をもたらすのがオペラの醍醐味であり、その基本を忘れてしまっては、本末転倒ではなかろうか。真に優れた演出家とは、作品に忠実なオーソドックスな演出でありながら、なるほどと思わせる箇所を幾つか創ることで、作品に対して新たな光を当てるというスタンスを貫ける人であると筆者は考える。場所の設定などを多少変えるのは構わないが、ストーリーまで変えてしまうのは、ある意味で、演出家としての「試合放棄」ないし「逃げ」ではないだろうか。

というわけで、筆者個人にとっては、演出が全くもって受け入れられない代物であったため、関心は、音楽面に集中する。幸いにも筆者の座席からは、オーケストラピットがよく見えたので、舞台上を気にすることなく、コンサートオペラとして楽しむことができた。

20110814-04

この日のウィーンフィルは超本気モードで、パワーに満ち溢れていた。それでいて、演奏には隙がなく、細部に至るまで、和声とリズムが完璧にはまっている。メンバーも、キュッヒルとダナイローヴァのダブルコンマスを筆頭に、中心メンバーが揃った感じだ。ウィーンフィルの本領発揮である。

具体的には、例えば、息の長いフレーズは、これぞウィーンフィルの呼吸と音色。絹のベールのようだという例えは、的を射た表現だ。また、ピアニシモの室内楽的な響きも、技術的に完璧であるのみならず、ムードも満点。そして、凄みの効いたフォルテシモは、聴いていて怖いほどだが、どんな強奏であっても音が荒れず、美しさを纏っているのがこれまた凄い。
そしてクライマックスに向けての大スペクタルでは、一歩間違えば大崩壊、カオスと紙一重というギリギリの線まで、攻めまくる。ピット内で全員が真っ赤な顔をして全身で弾きまくっている様子は、圧巻であった。弦や木管から生まれた巨大なうねりに、下手側からホルンが鋭く切り込み、この時点で会場内の音量は飽和状態に近くなっているにもかかわらず、さらに、上手側から金管と打楽器がとどめとなる轟音で荘厳な柱を建て、クライマックス。これで演出がマトモだったら、間違いなく涙腺が全開だっただろうが、この日は純粋に管弦楽として聴いていたため、そこまでには至らなかった。

キャスト陣も、スター歌手揃い踏みの豪華な顔ぶれ。主役級以外も、充実のラインナップである。残念だったのは、バラク役のウォルフガング・コッホが、演出の都合上、レコーディングモードとされた箇所において、棒読みを余儀なくされたため、十分な表現を味わうことができなかったこと。繰り返すが、これでマトモな演出であれば、さぞかし凄いことになっていただろう。

そして、これだけの音楽を引き出したティーレマンは、素晴らしいセンスの持ち主である。何故これほど凄いのか、ピット内をよく観察してみたが、アウフタクトが卓越していることに加え、音楽が流れる場面では全体を大きく捉え、推進力を保ちつつ、個々の奏者を自由に泳がせるだけの懐の深さを持っているという点に集約される気がした。以前にテレビで放映されたベートーヴェン全集の映像を観た際には、どこか緩い感じがして共感できなかったが、今回初めて実演に接し、この人の描くワーグナーやリヒャルト・シュトラウスは、間違いなく現代の最高水準にあるということをまざまざと感じた。

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終演後は、ブラボーの嵐。ティーレマンの人気の高さは尋常ではない。カーテンコールは幾度となく繰り返され、全てが終了したのは午後10時半ころ。会場を後にし、有名店シュティフツケラー・ザンクト・ペーターにて、マッシュルームスープとラム肉に合わせて、赤ワイン(Umathum/Zweigelt)のハーフボトルを。料理は中の上、赤ワインは絶品。終演後にサクッとディナーが楽しめる大箱レストランとして使い勝手は良いし、室内の雰囲気もなかなかなものなので、値段も考えると、悪くはない選択肢といえる。

日付の変わるころにホテルに戻り、この日記の前半部分を記して就寝。


(公演情報)

Richard Strauss • Die Frau ohne Schatten

Oper in drei Akten
Neuinszenierung
In deutscher Sprache mit deutschen und englischen Übertiteln

LEADING TEAM
Christian Thielemann, Musikalische Leitung
Christof Loy, Regie
Johannes Leiacker, Bühnenbild
Ursula Renzenbrink, Kostüme
Stefan Bolliger, Licht
Thomas Jonigk, Dramaturgie
Thomas Wilhelm, Choreografische Mitarbeit
Thomas Lang, Choreinstudierung

BESETZUNG
Stephen Gould, Der Kaiser
Anne Schwanewilms, Die Kaiserin
Michaela Schuster, Die Amme
Wolfgang Koch, Barak, der Färber
Evelyn Herlitzius, Sein Weib
Markus Brück, Der Einäugige
Steven Humes, Der Einarmige
Andreas Conrad, Der Bucklige
Thomas Johannes Mayer, Der Geisterbote
Rachel Frenkel, Die Stimme des Falken
Peter Sonn, Erscheinung eines Jünglings
Christina Landshamer, Ein Hüter der Schwelle des Tempels
Maria Radner, Eine Stimme von oben
Christina Landshamer, Erste Dienerin
Lenneke Ruiten, Zweite Dienerin
Martina Mikelić, Dritte Dienerin
Hanna Herfurtner, Solostimmen / Stimmen der Ungeborenen
Christina Landshamer, Solostimmen / Stimmen der Ungeborenen
Lenneke Ruiten, Solostimmen / Stimmen der Ungeborenen
Rachel Frenkel, Solostimmen / Stimmen der Ungeborenen
Martina Mikelić, Solostimmen / Stimmen der Ungeborenen
Maria Radner, Solostimmen / Stimmen der Ungeborenen
Albin Frahamer, Daniel Heck, Philipp Kranjc, Paul Krook, Vivien Löschner, Sabine Muhar, Christoph Quest, Barbara Spitz, Klaus Wetzlinger, Peter Wurzer, Schauspieler
Maria Gruber, Christina Kantsel, Liliya Markina, Julia Rath, Andrea Schalk, Marena Weller, Revuetänzerinnen
Ben Badura, Kim Viviane Binding, Felix David, Elias Kurzmann, Gabriel Paulus, Lukas Parandian, Leoni Ruhland, Sophia Ruhland, Jonathan Seißler, Kinderpersonal
Wiener Philharmoniker
Mitglieder der Angelika Prokopp Sommerakademie der Wiener Philharmoniker, Bühnenmusik
Christa Schönfeldinger, Glasharmonika
Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor
Salzburger Festspiele Kinderchor
Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor
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[2011/08/18 18:15] | 海外視聴記(ザルツブルク) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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