ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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ケルン行き(11年8月)①―バレンボイム指揮ウェスト・イースタン・ディヴァン管
8月27日、朝一番のタリスでブリュッセル南駅からケルンへ。
午前9時すぎに到着後、大聖堂などを見学し、昼前にドイツ国鉄でデュッセルドルフに向かう。所要時間は約40分。目的は、麺処「匠」でのランチである。
麺処「匠」は、デュッセルドルフのみならず、近隣に駐在する日本人達が、わざわざ数百キロの距離を車で飛ばしてやって来るという噂のお店で、欧州に駐在する日本人ビジネスマンらの多くがブログ等でも紹介している有名店だ。正午ころにお店に行ったが、すでに行列が出来ており、その多くが日本人であった。

店内には、15分ほどで入ることができた。筆者は、極上味噌ラーメン、餃子、ミニチャーシュー丼、そしてキリン一番絞りを注文。
数ヶ月ぶりに口にした味噌ラーメン。西山製麺所からの直送されたちぢれ麺が、上品な味噌スープと絡み合い、正統派味噌ラーメンの味を創り出す。この感動は、欧州駐在経験のある者にしかわからないものだ。チャーシュー丼の醤油味とともに口に運ぶ白米の美味さもひとしおである。他方、餃子の方は、可もなく不可もなくといった感じで、また、キリン一番絞りも、筆者が舌で記憶していた味とはちょっと違う気もしたが、そこは文句は言うまい。たった2ヶ月でこの心境に陥っている時点で、自分が日本人だと痛感した。

食後は、インマーマン通りにある日本人向けの書店兼文具・食料品店などを見学し、少しだけ日本に思いを寄せる。ちなみに、このインマーマン通り、自分は日本にいるのではないかと錯覚するくらいに日本人で溢れていた。一本道をずらすと、そこは普通のドイツの街並みと変わらないだけに、何とも不思議な空間である。

さて、夕方ケルンに戻り、ホテルで休息を取る。今回滞在しているホテル、CityClass Residence am Domは、駅からも大聖堂からもフィルハーモニーからも徒歩2、3分という好立地。外は非常に騒がしいが、やむを得ない。午後7時半すぎにフィルハーモニーへ向かった。この日の演目は、ダニエル・バレンボイム指揮ウェスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラによるベートーヴェン・チクルスの4日目。交響曲第7番と第8番を軸に据えたプログラムである。

20110827-01

この日の座席は、上手側の12列目。想像していた以上に舞台が近く感じられる。

20110827-04

初めて体験したフィルハーモニーは、ドイツらしい明るく伸びやかなサウンドが特徴的で、客席に座っていると、柔らかな残響に包まれるような感じがした。それでいて、音の分離はとてもよく、細部までよく聞こえた。
モダン建築ゆえ、趣はないが、響きの観点からも視野の観点からも、良く出来たホールだと思われる。

20110827-02

20110827-03

さて、演奏の方だが、全体を通じ、ライン川を思わせるような大きな流れが脈々と流れゆく堂々たるベートーヴェンであった。
加えて、個々のフレーズの扱いが巧妙で、それらのつながりもとても良い。オーケストラのサウンドに個性がなく、また全員がバレンボイムの統率下にあるため、オーケストラからは、まるでバレンボイム自身がピアノを奏でているかのような、絶妙なニュアンスのタッチの数々が浮かび上がっていた。

この日は、弦楽器は16型(Cbと2ndVnはさらに1名増強)、木管楽器は倍という大編成だったが、バレンボイムの意図に従い、セクションごとに、フォルテシモからピアニシモまで、音量のバランスが徹底されており、聞こえるべき細かい声部に対する見通しが良かった。弦楽器によるスビトピアノやピアニシモも、かなり繊細に仕上げられていた。そして、充実の重低音に支えられた巨大なうねりは、バレンボイムの真骨頂である。

しかし、技術的な綻びが散見されたのも事実である。
最も気になったのは、和声感の不足。木管楽器の響きのバランスが悪く、弦楽器からも倍音が開けてこない。
また、プレイヤー間でのアウフタクトが合わず、若干先に飛び出してしまうパートがあったり、テンポが煽り気味になった際に、弦と管で多少の時差が生じてしまったりなど、アンサンブルとしての成熟度という観点からは、まだまだ課題が残る。

以下、曲別に気付いた点をコメントする。

一曲目のレオノーレ序曲第三番であるが、この曲の序奏は、シンプルであるものの、実際に演奏しようとすると、技術的に極めて難しい。案の定、この日も木管のハーモニーが定まらず、和声進行の緊張感は感じられなかった。
また、主部冒頭の弦楽器によるピアニシモの出だしも、ホールの響きの中に埋もれてしまった感じで、音の切り口が見えず、数小節経過してようやく落ち着いてくるという状況。
その後は、前述した大きな流れが生み出され、概ね順調に進んだが、コーダでは、一瞬危なっかしい箇所もあったような気がした。
この曲は、チクルスの初日にも演奏され、この日は急遽プログラムに加えられたが、それでも万全の仕上がりにはなっていなかったようだ。

二曲目の交響曲第8番は、太い毛筆により楷書体を力強く記したようなスケールの大きい演奏で、対旋律の切込みが深く、立体的な音像が構築される。レオノーレ序曲第三番よりも仕上がりは良い。
第三楽章のダカーポ後のアウフタクトで、一瞬の溜めを置くなど、なかなか手が込んでいるし、第四楽章のコーダの前に置かれたベートーヴェンによる自問自答のフレーズも、微妙なテンポの揺らぎを持たせ、コーダに向けた準備として説得力があった。
第一楽章の展開部や、第四楽章のコーダにおいて、音量を絞ったところから徐々に積み重ね、クライマックスへと運ぶあたりは、オペラの世界でも名声を轟かすバレンボイムならではのものといえようか。
このように、総じてよく考えられた演奏ではあったが、それでも、どこか物足りなさは残った。高度な解釈の一つひとつが、大きな流れの中で、座りの良いところにおさまっておらず、自然体としてのベートーヴェンとして昇華させることが出来なかったのかもしれない。

これに対し、三曲目の交響曲第7番は、かなり完成度が高かった。前の2曲と比べ、構成が簡明で、形にしやすいのだろう。曲の性質上、演奏者側にも自然と熱がこもるが、いわゆる爆演系には陥らず、節度を保った中身の濃い演奏であった。
第一楽章の展開部は、交響曲第8番と同様、音量を絞ったところから大きな山を築くが、その演奏効果は絶大である。第二楽章の冒頭は、この日の白眉であり、一つひとつ墨で音色を重ねていくような、そんな格調高い響きに、会場内は息を呑んだ。第四楽章は、ドイツ国鉄の列車が悠然と前へと進んでいくような感じで、重量級の音楽が徐々にスピードを上げながら、そのままゴールまで走り切ったという印象だった。
このように、なかなかの仕上がりであったが、それでも、先に述べたような綻びが散見されてしまったのが惜しいところである。

カーテンコールは、スタンディング・オベーションの大熱狂。筆者個人の印象としては、演奏自体はそこまでのレベルには至っていなかったようにも思われたが、ともあれ、このオーケストラの背景事情や、バレンボイムの棒に全力で喰らい付いていこうとする個々のメンバーの気持ちが、聴衆の心に通じたがゆえの結果だろう。

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ともあれ、とても良い演奏会であったことは確かである。

終演後は、近くの有名レストラン、エム・クリュッチェに入るも、深夜メニューの時間帯に切り替わっており、しかも筆者が注文したポテトスープと焼きソーセージはいたって普通の仕上がりで、可もなく不可もなくといった印象。雨も降り始めたことから、早々に引き上げ、就寝。


(公演情報)

27.08.2011 Samstag 20:00 Uhr
Kölner Philharmonie

West-Eastern Divan Orchestra
Daniel Barenboim Dirigent

Ludwig van Beethoven
Leonoren-Ouvertüre Nr. 3 C-Dur zu op. 72 (1806) für Orchester

Ludwig van Beethoven
Sinfonie Nr. 8 F-Dur op. 93 (1811–12)

Pause

Ludwig van Beethoven
Sinfonie Nr. 7 A-Dur op. 92 (1811–12)
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[2011/08/30 05:02] | 海外視聴記(ケルン) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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