ましましの音楽日記
G.ヴェルディの作品をこよなく愛するオペラ愛好家による音楽日記です。筆者が鑑賞した海外でのオペラやコンサートの模様や、筆者自身が日頃行っている音楽活動などについて、不定期に綴っていきます。
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モネ劇場―ケルビーニ「メデア」
9月6日午後7時半ころ、モネ劇場へ。演目は、ケルビーニ「メデア」。モネ劇場2011/2012シーズンの開幕初日である。

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この日の座席は、2nd Balconの下手側サイド。チケットの売れ行きがよく、この位置しか確保できなかった。舞台上の下手側奥が死角になってしまうが、やむを得ない。

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今回も全く予備知識なく鑑賞したが、なかなか渋い作品であった。パーツとしては魅力的な箇所も随所にあるのだが、モーツァルトやハイドンの作品と比べると、全体の構成が弱いがゆえに、冗長に感じられる場面も多い。ケルビーニの音楽は、明るく開放的で、しかも軽さを伴った響きが特徴的だが、台本の内容は重かったり暗かったり不気味だったりするので、そのコントラストが微妙な違和感を生じさせる。この作品が有名になれなかった理由が分かる気がした。

そんな扱いづらい作品ではあったが、演出のクリシュトフ・ワルリコフスキは、明快なビジョンに基づき、「メデア」の世界を浮かび上がらせることに成功していたと思われる。

今回のように、この作品をオペラコミック形式で上演した場合、途中にフランス語の台詞が多数挿入される。それゆえ、フランス語を解する人には内容の理解は容易だろうが、そうでないと、最初の段階で躓くことになる。しかし、ワルリコフスキの演出の下では、各役者の演技や立ち位置を通じて、ストーリーを概ね理解することが可能であり、よく練られた演出だったといえる。

なお、舞台セットは、舞台奥から前へと貫く一列の砂場を中央に配した上で、舞台全体をマジックミラーの壁で四角く仕切るという現代的なもの。場面転換用として舞台中程にマジックミラーの吊り物を活用し、また、第二幕で舞台空間を狭める目的で横一列に並べられた蛍光灯のバトンを複数下ろすなどの工夫も見られた。マジックミラーの壁の上手側の一部は白壁で、メデアの似顔絵やFUCKという文字の落書きが施されており、子供を抱く母をイメージした像も置かれるなど、メリハリも必要にして十分である。小道具に関しても、場面に応じてメデアに黒髪や金髪のカツラを被らせたり、ドクロの模型が登場したりと、象徴性に富んでいた。肌の露出が若干多い気もしたが、許容範囲であろう。

一つ特徴的であったのは、開演前と休憩中に、シャンソンをBGMにしつつ、多種多様な母親や子供の姿を映し出す映画が緞帳に映し出されていたこと。「メデア」という今回の上演作品に鑑みると、ミスマッチとは感じられず、一つの芸術表現として十分あり得るアイデアだと思った。

キャスト陣では、タイトルロールのメデア役を演じたナディア・ミヒャエルが演技・歌唱ともに抜きん出ていて、非常に説得力があった。役柄の性質上、精神に異常をきたしているかのようなアグレッシブな演技が求められるが、非常に迫力のある演技で、観ているだけで惹きこまれる。それでいて、歌唱部分は表情が豊かで、しかし、耳を澄ますと、フレーズの一つひとつは端正に歌い上げられており、実力の高さが窺われた。
クレオンテの娘を演じたヘンデリキエ・ファン・ケルクホーフェンも、出番は少なかったが、伸びのある軽やかな歌唱と、安定した演技で好演。
他方、ジャゾーネ役のカート・ストレイトは、明るい軽い声で、それ自体はよいのだが、「メデア」の作品の持つ陰の部分において、彫りの深さに欠け、今ひとつな感じ。クレオンテ役のヴァンサン・ル・テキシエは、バスらしい響きの膨らみがなく、一本調子の感を否めない。もっとも、この作品の場合、男性陣は薄っぺらなキャラクターとして設定されているともいえるので、これぐらいでバランスが良かったのかもしれない。

なお、この日、オーケストラピットに入っていたのは、モネ劇場管ではなく、レ・タラン・リリクというパリを本拠地とする古楽オーケストラ。あいにく筆者の座席の左斜め上にスピーカーがあり、マイクで拾った1stヴァイオリン周辺の音が強調されて聞こえていたため、このオーケストラのサウンド等についてはコメントできないが、古楽器特有の軽やかな音色がケルビーニの音楽によくマッチしており、技術的にも、多少の綻びはあるが、そこそこの水準を保っていたように思われる。第三幕のクライマックスでは緊迫した空気も醸し出し、オペラの伴奏役として十分な役割を果たしていた。指揮のクリストフ・ルセも、全体を手堅くまとめていた。

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終演は午後11時。どしゃ降りの中、帰路につく。


(公演情報)

Médée

Tu 6 September 2011, 20:00 (La Monnaie)

Music direction / Christophe Rousset
Director / Krzysztof Warlikowski

Médée / Nadja Michael
Jason / Kurt Streit
Néris / Christianne Stotijn
Créon / Vincent Le Texier
Dircé / Hendrickje Van Kerckhove
Première servante / Gaëlle Arquez
Deuxième servante / Anne-Fleur Inizian
Orchestra / Les Talens Lyriques
Chorus / La Monnaie chorus
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[2011/09/08 07:03] | 海外視聴記(ブリュッセル) | トラックバック(0) | コメント(2) |
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コメント
はじめまして、マーストリヒト在住のレイネと申します。日曜マチネの『メデア』を鑑賞しました。拙ブログでも記事にしましたので、よろしかったらご高覧下さい。
このプロダクションは、演出・歌手・オケ全てに対して期待が大きかったのですが、全体的にちょっとこじんまりとまとまりすぎでメリハリと迫力に乏しいのが残念でした。ナジャ・ミヒャエルの歌唱は期待通りの迫力でしたが、マイクを通してしゃべる台詞には違和感が。。。
これから、モネや他の歌劇場でお会いすることがあるかもしれませんね。(来年4月5月公演の『オルランド』はヘンデル作品で、先日コンサート形式で上演されたハイドンのオペラとは別物です。老婆心ながら。。。)
今後ともよろしくお願いします。
[2011/09/15 16:26] URL | レイネ #NWeVXXfQ [ 編集 ]
ご指摘頂き、ありがとうございました。おっしゃるとおり、来年4月5月公演の「オルランド」は別物でした。お恥ずかしい限りです。なお、記事の該当箇所は、修正しておきました。
確かに、マイクを通してしゃべる台詞は、違和感がありましたね。貴ブログも拝見しましたが、非常に的を得たご指摘かと存じます。
今後ともよろしくお願いいたします。
[2011/09/16 06:39] URL | 筆者 #- [ 編集 ]
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